もくじ
ー 王座防衛は常に困難 新たなライバルたち
ー コードネームはG20 守るべきダイナミクス性能の伝統
ー こだわりのサスペンション エンジンは従来どおり?
ー スタビリティコントロールは完全オフに
ー 新たなインテリア 落ち着きと俊敏性の見事な融合
ー 時速200km/hでもリラックスした走り
ー エントリーモデルには疑問 大いなる期待
ー 番外編:新型3シリーズのツインレート式パッシブダンパー
試乗 メルセデス・ベンツC220d フェイスリフト後のディーゼル、評価は
王座防衛は常に困難 新たなライバルたち
自動車世界で成功したブランドがトップの座に留まり続けるというのは、そこに上り詰めるよりも常に困難であり、BMW 3シリーズも徐々にその座を譲り渡そうとしているようだ。いまこそ90年代後半から2000年代の栄光を取り戻すに相応しい時なのだろうか?
近年登場したどんなモデルも、3シリーズほどの評価と販売実績を達成できなかったからこそ、われわれは心配しているのかも知れない。
次期3シリーズは、今秋開催されるパリ・モーターショーで発表され、英国には2019年初頭に導入が予定されている。しかし、先代モデルたちがこれまで築いてきたコンパクト・エグゼクティブサルーン市場における地位を、再び確固たるものにするというのはそう簡単な仕事ではない。
新3シリーズが戦うのは、モデル末期となったF30世代を凌ぐ売上げを見せる素晴らしい出来の最新メルセデスCクラスであり、アルファ・ロメオ・ジュリアにジャガーXEという、現行3シリーズが登場した7年前には存在していなかった新たなライバルたちだ。
ジュリアもXEも、BMWから世界最高のハンドリングをもつコンパクトセダンを創り出すメーカーという称号を奪うために送り出されたモデルであり、いまのところ、その称号はジャガーを経て、現在はアルファのもとにあるようだ。そして、BMWがその称号を再び手にすることになるのか、それとも、そのためにはもうしばらく時間が必要なのかは、直ぐに明らかになる。
もちろん、われわれと違って、BMWのトップや、デザイナー、そしてエンジニアたちは、次期3シリーズの未来をそんな風に考えていないだろうし、心配すらしていないだろう。このクルマが40年以上にわたって築き上げてきた確固たる地位に対する自負とともに、もはや3シリーズがその代名詞ともいえるコンパクト・エグゼクティブサルーン市場へと、7代目モデルを送り出す仕事を進めているに違いない。
そして、その仕事はほとんど完了しているようだ。ソフトウェアの細かな変更と、若干のセッティング作業が残ってはいるものの、BMWはわれわれにプロトタイプの新型3シリーズで、ドイツのアイフェル地方でのショートテストと、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェでの「ショート」とは言えない周回テストをする機会を与えてくれた。
コードネームはG20 守るべきダイナミクス性能の伝統
新たにG20のコードネームが与えられた新型3シリーズのスペックをBMWが明らかにするには、まだ数週間が必要なようだが、このクルマは先代F30をベースに開発されている。
しかし、このプロトタイプでの試乗に際して、BMWからは新型のホイールベースは延長され、そのボディはやや長く、そしてワイドになっているとの情報がもたらされている。さらに、現行モデルよりもアルミニウム、マグネシウムと高張力鋼の使用量を増やしたBMWのクラスター・アーキテクチャを採用しており、F30に比べ、やや軽量(最大55kg)で、ねじり剛性も15%から20%強化されているとのことだ。
新型では前後トレッドとも拡大されており、フロントにはマクファーソンストラット、リアにはマルチリンクのサスペンションが搭載される。サスペンションとステアリングには大幅な見直しが行われ、F30からは大きく変更されている。新たな可変レシオをもつ「バリアブル・スポーツ」ステアリングが搭載されるが、E90以降の伝統に従って、速度感応型「アクティブステアリング」ではない。
さらに、オプションとしてTenneco製アダプティブダンパーが設定され、Mスポーツ・サスペンションには、現行モデルよりも固められたスプリングとブッシュが組み合わされる。しかし、少なくとも4ドアモデルにはエアサスペンションの設定はなく、四輪操舵システムも採用されない。
異なる見解をどこかで耳にしているかも知れないが、明らかにBMWでは、こうした技術はより高級なエグゼクティブサルーンにこそ相応しいと考えているのだ。
実際、BMWではこの新型3シリーズの新サスペンションシステムと、その開発コストの合理化に努めている。つまり、本当に顧客が求めるものだけに注力しつつ、このクルマにF30よりもシンプルで、よりダイレクト、かつ明確なスポーティさを併せ持つキャラクターを与えようとしているのだ。その優れたダイナミクス性能は初期の3シリーズから続く特徴であり、少なくともこれまでの先代モデルたちはそれを上手く活かしてきた。そして、いまBMWは、この長きに渡って築き上げてきたその地位を、アルファとジャガーが送り出した刺客から死守しようとしている。
3シリーズのドライバーのほとんどはアダプティブダンパーなど選ばないのだから、かつてのように多くの時間を使って、細かなダンパーセッティングをするようなやり方は合理的とは言えない。全体としてみれば、3シリーズを選ぶ顧客が好むのはパッシブサスペンションであり、アルミホイールのアップグレードなのだ。
こだわりのサスペンション エンジンは従来どおり?
さらに、この新型ではメインと補助のふたつのスプリングをもつストラット式サスペンションが採用されるとともに、動きのいいショックアブソーバーが大きな衝撃を巧みに吸収してみせ、フロントのリバウンドコントロールとリアのコンプレッションサポートを向上させている。
「サスペンションに関しては、Mスポーツ仕様の有効スプリングレートを著しく増やすことができました。これによって、ハンドリングレスポンスとボディコントロールにおけるスタンダードとMスポーツ仕様のサスペンションの差は、これまでと比べて2倍にも達しています」と新型3シリーズのドライビングダイナミクス開発チームを率いたヨス・ヴァン・アスは説明している。
「さらに、スプリングをより固めた場合でも、初期の低い周波数におけるダンピングの干渉を防ぐことにも成功していますが、これはサスペンションストロークの後半でより累進的なコントロールを行っているからです。これによって、サスペンションの動きの自由度が増し、新型3シリーズの乗り心地をよりフラットでしなやかなものにすることができました。」
「同じような目的を達成するため、セレクティブダンパーを採用しているメーカーもありますが、こうしたサスペンションは、本当に効果が発揮されるべき予期せぬ入力に対しては、上手く対応することができないのです」
内部情報筋によれば、ディーゼルエンジンや、非ハイブリッド型パワートレインの未来がハッキリしないなかでも、BMWは現行エンジンをまだ使い続けることができるとして、新型3シリーズのエンジンラインナップにそれほど大きな変更はなさそうだという。
これについては、今回試乗した330iが積む2.0ℓ4気筒ガソリンターボエンジンの改良点としてわれわれに伝えられた内容が、さらなるヒントとなるだろう。この新型4気筒エンジンはパワーが7ps向上するとともに、トルクも5.1kg-m増えており、排ガスとラボテストにおける燃費もこれまでより改善しているとのことだ。
トランスミッションに関して、より出力の低いモデルではマニュアルギアボックスが標準となる一方、330i/330d以上のモデルでは8速オートマティックが搭載される。複数のエンジンタイプでxドライブ四輪駆動システムが選択可能であり、現段階ではBMWは何も明らかにしていないが、xドライブを搭載したモデルでしか選択できないエンジンもあるようだ。
スタビリティコントロールは完全オフに
それでもFRとMスポーツトリムに拘るのであれば、これまでのところディーラーオプションでしか設定されていないリミテッドスリップディファレンシャルが気になるだろう。さらに、新型G20には、現行M3が採用しているeデフの簡易版が搭載されることになる。これはクラッチにより左右リアタイヤ間でのトルク配分を可能にするもので、パッケージオプションでしか選択できないばかりか、組み合わせることができるのもよりパワフルなエンジンを積んだモデルだけだ。
これこそ、BMWが迷える運転好きなドライバーたちを再び魅了しようとしている明白な証拠ではないだろうか?
新型3シリーズでどんなスポーツドライビングをするつもりにせよ、オーナーは自らが求めるものをこのクルマに見つけることだろう。
試乗は極めて短時間で、試せたのは、エンジンと、ホイール、タイヤ、サスペンション、ステアリング、トランスミッションとディファレンシャルの組み合わせのなかから、ひとつだけだった。
今回試乗した330i プロトタイプは、BMWが丹精込めて開発したMスポーツ・パッシブスポーツサスペンションと、前後輪で幅の異なる19インチMスポーツ・アルミホイールに非ランフラットのミシュラン・パイロットスポーツ4 Sを履き、オートマティックギアボックス、可変レシオのスポーツステアリングと、新型トルクベクタリングeデフを組み合わせていた。
ファーストインプレッションだが、この組み合わせであれば、アルファ・ジュリアの方が、より軽量コンパクトで、わずかながらも鋭さと生来の機敏さを備えたセダンだと言えるだろう。しかし、多くのライバルたちに比べ、現代のBMWは複雑で仕様毎の差が大きく、正しい組み合わせを選択しさえすれば、このイタリアからの挑戦者と同じくらいの鋭さを新型3シリーズが見せたとしても、まったく驚くには値しない。
さらに、ジュリアでは6万ポンド(872万円)のクアドリフォリオ以下のグレードでは、スタビリティコントロールを完全にオフにすることができないことを考えると、最終的には新型3シリーズの方がより楽しめるモデルだと、われわれとともにプロトタイプに乗りこんだBMWのシャシー担当、ヴァン・アスは話す。
「ジュリアのサスペンションに費やされているコストは目を見張るほどです」と彼はいう。「わたしなら違ったセッティングを選ぶと思いますが、素晴らしいハンドリングのモデルです。ですが、あれほどお金を掛けたにもかかわらず、スタビリティコントロールを完全にオフにすることができないとはどういうことでしょう。これでは単なる無駄遣いだとさえ言えます」
新たなインテリア 落ち着きと俊敏性の見事な融合
われわれが試乗した新型3シリーズ・プロトタイプのインテリアには、そのエクステリア同様の偽装とともに、カバーがかけられていたが、新しいキャビンにおけるいくつかのテーマを発見することはできた。そのひとつは、驚くほど華やかで豪華な素材の感触であり、これは間違いなく、ひとによっては高級とも安っぽいとも感じるCクラスに対する市場からの高い評価への対応だろう。現行3シリーズよりも多くのクローム処理された樹脂パーツが、新型のエアベント廻りには見て取れた。
センターコンソール下部には、現行の古臭いオンオフスイッチに替えて、まるでBMWがドライブモード選択ボタンのデザインを考え直したかのように、コンフォート、スポーツ、エコと「DSCオフ」のキーが控えめに並んでいる。さらにその上部には、われわれのプロトタイプではこのクルマに相応しいデジタルインストゥルメント・スクリーンが設置されていたが、大型モデルとは異なりクロームの縁取りはない。
すべてのモードを試すことはできなかったが、そのこと自体が、システムがもつ柔軟性の高さと、多彩なディスプレイ設定方法とを表している。
試すことができたドライブモードは限られており、19インチ・ホイールを履いたパッシブサスペンションの330i Mスポーツ、特にわれわれが仕様を細かく記した今回のプロトタイプの試乗からは、このクルマのコンフォートモードでの乗り心地は予測するしかなかったが、それでも、新型3シリーズは、驚くほどの落ち着きと、その明白なスポーツ性がもたらす俊敏さとを見事に融合していると言えるだろう
低速ではやや硬く、小さな轍や突起に出会うと慌ただしい様子を見せるが、サスペンションの動きは滑らかで、限界までタイヤの動きをコントロールしつつボディをフラットに保っている。
ロードノイズが荒れた路面の存在を伝えるが、ドライバーズシートに座っている限りほとんど感じることはなく、スプリングとダンパー双方がストローク後半でより硬くなる設定にもかかわらず、大きな不整に出会っても、新型3シリーズの乗り心地は平静を保ったままで期待を裏切らない。
さらに、サスペンションはそのストロークの範囲内で路面不整を上手く吸収し、まるで素晴らしくよくできたホットハッチを彷彿とさせる。
時速200km/hでもリラックスした走り
コンフォート以外では唯一今回試すことを許されたスポーツプラスに切り替えると、330iのステアリングには重みが加わるとともに、ジュリアのオーバーアシスト気味な点や、XEの初期の過剰なダイレクトさといったものは上手く回避したまま、オフセンターでの正確性を向上させている。
「アウトバーンのようなペースで走ると、こういったモデルには安定性が十分ではないようにわたしには感じられます」とヴァン・アスはいう。時速200km/hで、例え必要に迫られて一瞬ステアリングから片手を放しても、リラックスしたまま走りたいと望む顧客の要望に、BMWは常に応えようと努力しているのだと彼は話す。
スポーツプラスを選択すると、当然のごとくドライバーの耳に届く330iのエンジンサウンドは低音に変わり、サウンド自体はありふれたものだが、十分な活気を感じさせてくれる。
実際の路上であれば、330iがもつこのくらいのパワーと速度で十分であり、レスポンスも含め、これ以上は使い切ることができないだろう。
それでも、このクルマのeデフの存在を考えると、クラス随一ともいえるアクセルによる高いコントロール性をもつシャシーを活かすには、もう少し活発さがあってもいいと思うかも知れないが、その点については、もう少し様子を見る必要があるだろう。
なぜなら、3シリーズの絶妙なハンドリングバランスは、今回プロトタイプが履いていたオプションの19インチではなく、より小径なホイールの方が明らかに向上するだろうし、アクティブディファレンシャルがもっとも過激な設定になる「DSCオフ」のドライビングモードは、実際の生産車両とは異なる設定だったからだ。
エントリーモデルには疑問 大いなる期待
では、今回の結論はどのようなものだろう?
英国では多くが選択し7年以上を共に過ごすことになる、ガソリンとディーゼルのエントリーモデルに関しては、お勧めモデルだというのは難しいだろう。
一方で、多くの期待もある。3シリーズというのは、クラス最高のドライバーズカーを作ろうと考え、実際にそれを実行してきた、負けず嫌いなひとびとが創り出してきたモデルであり、今回明らかとなったのは、2019年登場予定のこの新型3シリーズは、低速における俊敏さと、高速での安定性、ボディコントロール、トラクション、さらにはドライバビリティとを注意深く磨き上げることで、例えハードに走らせても、安心して、疲労を感じることなくその能力を発揮できるモデルだということだ。
公道でもサーキットでも、明らかなグリップレベルの高さ、ハンドリングの正確性とその落ち着きは、まさに「パフォーマンスカー」の名に相応しく、他の中庸なモデルから乗り換える多くのひとびとを驚かせることだろう。そして、例えドライバーとの繋がりに関して新型3シリーズを凌ぐモデルが存在したとしても、これほどのエグゼクティブサルーンは他にない。
安心するには早いかも知れないが、その片鱗はすでに見えている。必要に迫られさえすれば、新型3シリーズは再びその素晴らしい能力を発揮することだろう。
番外編:新型3シリーズのツインレート式パッシブダンパー
ある種のツインレート式パッシブダンパーというのは一般的なサスペンション技術であり、その多くが内部にもうひとつのオイルチャンバーを備えている。そして、そのほとんどが「周波数選択式」であり、路面不整の大きさではなく、不整の形状に応じて、ひとつのチャンバーから他のチャンバーへとオイルを送り出すスピードを変えることで、ダンパーの内部抵抗を変化させている。
しかし、新型3シリーズのパッシブサスペンションの場合、サスペンションストラットの可動領域の限界点(フロントは伸び側エンド、リアは縮み側エンド)まで、徐々にセッティングをより堅い状態へと変化させていく。
フロントでは、別の油圧系統によって制御されているダンパーピストンがセカンダリーリングを押し戻すことによって、リアでは、メインチャンバー最下部に設置されたコーン型リストリクターに抗ってピストンが上昇することで、内部抵抗を変化させるのだ。
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