理由は後述するが、筆者は割と早い段階からドライブレコーダーを装着していた。ここ最近、いわゆる「あおり運転」の対策としてテレビなどで取り上げられてるため、普及率が増えているかと思っていた。参考までに、2017年11月20日に公開されたソニー損保の統計によると、実際は15%程度のようだ。
参考:ソニー損保、「2017年 全国カーライフ実態調査」
https://from.sonysonpo.co.jp/topics/pr/2017/11/20171120_1.html
今回は、筆者自身の経験を中心にドライブレコーダーの必要性に関して書いてみようと思う。
すり抜けようとしたバイクが転倒。警察に容疑者扱いされる
筆者には過去に苦い思い出がある。幹線道路(片側二車線)の右側にあるガソリンスタンドへ入ろうとした時のことだ。当然「バイクがすり抜けてくるかも」と予測した上でクルマの切れ目で右折しようとしたところ、案の定、バイクがすっ飛んできた。そこで、当方は停車。しかし、すっ飛んできたバイクは当方と接触がなかったにも関わらず転倒、負傷した(まず先に119番へ、その後110番へ電話し、応急処置を手伝ったのは言うまでもない)。
すっ飛んできたバイクはいわゆる珍走団風に改造され、しかも、ライダーは半キャップでグローブを身につけていない若者だった。その時の現場検証において、筆者は容疑者扱いだった。ちなみに、当時、筆者が乗っていたクルマは左ハンドルだった。
警察の担当者は、後日の取り調べで「左ハンドルだから発見が遅れ、バイクを運転する青年に対して脅威を与えた」という主旨の調書に対する署名を求めてきた。筆者はこれを否定し、適切な修正を担当者に依頼し「あくまでもバイクの青年の単独事故」という認識を貫き通し、調書にもそれに基づいた内容が記述されるまで粘り強く交渉した。「調書」とは、警察のシナリオを確認するドキュメントではなく、当方の主張を各ドキュメントであるはずだからだ。それから半年後、この一件に関して不起訴の連絡があった。
この一件から「自分の身を守るために、ドライブレコーダーが絶対に必要だと」確信した。そこで、6年ほど前からその時々でコストパフォーマンスがいいと思われるドライブレコーダーを愛車に装着してきた。
ドライブレコーダーが役立った事例(その1)
また、3年ほど前にはこんなこともあった。当方が左折する交差点で、自転車に乗る女性が前方の横断歩道を横断しきったと思った直後のことだ。当方がクルマを発進させたところ、強風によってこの女性が転倒し、当方のクルマのすぐ横で倒れるという事故が起こった。この時も女性と当方のクルマの接触はなかったものの、運転者の義務として、消防と警察へ連絡し、救急車の手配をした。このときは、当方の停止した事実と徐行発進をドライブレコーダーが記録していたため、「善意の通報者」として扱ってもらえた。
ドライブレコーダーが役立った事例(その2)
そしてまた、ドライブレコーダーの価値を再認識する事件があった。
昨年末、クリスマスが近い季節だった。筆者の目的地はキラキラの都会ではなく、市場へ買い出しへ行く途中でのできごと(というか事故だ)。一般道(駐停車禁止)の道を走行中、路側に停車していたクルマが急にウインカーを出し、直後に発進、当方の左フロントドアに接触したのだ。そのまま左リアドアおよびトランクの左サイドまで接触するほどの事故となってしまった。当方は前車に続き、停車車両の横を通過しようとしただけで、先方が急に発進し、一方的に当方に接触した、と感じられる事故だった。
ドライブレコーダーの映像を確認してみると、先方がどのタイミングでウインカーを出し、どのタイミングで動き始めたか、ということが鮮明に映っていた。このタイミングで当方に過失がないことは確信していた。
相手のドライバーとは、連絡先、免許証のデータ、車検証などの情報を交換をした。先方には小さなお子さんも同乗されていたこともあり「まずはクリスマスを楽しんでください」とだけお伝えし、「事故の処理は改めてにしましょう」と伝え、警察の見聞のあと、すぐに別れた。
動いているクルマの過失割合を100:0にすることはできるのか?
保険の処理に詳しい方(失礼)であれば、ご存知のとおり、動いているクルマの過失割合をゼロにすることは、これまで自動車事故での保険会社同士の交渉ではありえなかったことのようだ。「ハンドルを握る人には注意義務があり、今回の事故は予見できたはず」という、動いていたクルマの過失をゼロにしない呪文のような言葉が保険会社の事故対応担当者の対応マニュアルに載っている可能性が高い。これまでも、多くの人がこの根拠によって過失をゼロとできなかったのではないかと想像している。
今回の事故は以下の3つの事実から、当方の過失はゼロだと考え、その主張を先方の保険会社へ伝えた。
1.当方に道路交通法違反はまったくないこと
2.ウインカーを出してから発進までの時間が短く、予見不可能だったこと
3.当方のクルマの左フロントドアからリアにかけて損傷している点から、回避不可能だったこと
(左ライトやウインカーに破損があれば、回避可能とも言える)
まず、ドライブレコーダーの映像は、当方・先方両方の保険会社に対して、ファイル共有サービスを利用して情報を共有し、これを観てもらった上で、交渉をする考えだった。当方の保険会社は「これは100:0が主張できるので、ryoshrさん自ら交渉をしていただくことになります」とのことだった。なるほど、あなたもお金払いたくないのね。「では交渉決裂して、100:0にならなかったら連絡します」と伝え、自分で先方の保険会社と交渉することにした。
その後、動画を見た先方の保険会社の担当者から電話が掛かってきた。
事前に当方からは、前述の3点の主張をメールで伝えておいた。当初の電話口では、マニュアル通り「ハンドルを握る人には注意義務があり、予見できたはず」を繰り返すが、動画を確認すればあきらかに予見は困難であり、回避不可能なことは客観的事実であることを主張したところ、先方から「100:0で結構です」との回答を得た。「ただし、修理中の代車費用は出しません」という小さな条件は了承し、過失割合に関する協定をした。
ドライブレコーダーを装着していなかった場合の結末を予想してみた
先方がウインカーを出したり、発進したタイミングを自分の印象で語り、当方の主張と食い違った場合、やはり、当方の過失はゼロでは協定できなかった可能性がある。しかし、ドライブレコーダーの客観的事実の前に、先方の保険会社も当方の過失については立証できなかったということなのだろう。「動画」という、動かぬ事実はこれほどまでに意味があるのもになるのかと再認識をした次第だ。
これまでの「なんだか根拠のない過失割合の常識」に風穴を開けられたいい事例と自負している。
ドライブレコーダーは自らの無実を証明するためにも、もはや必須装備なのか?
ドライブレコーダーの性能は日々進化しているように思う。カメラの広角度も上がり、フロントガラスへ装着しても、真横くらいまでは映るようになっているし、記憶メディアであるマイクロSDカードの容量も増加しているので、解像度も録画時間も増加の傾向にあり、結果として画質のいい記録画像を残せるようになっている。
メーカー品でも、今や1万円前後で衝撃センサーも内蔵されており、事故のタイミングのデーターは上書き更新されないエリアへ保存するなど、安心のための機能がついているものもある。また、後方を撮影するためのカメラもついたものも多く登場しており、海外製であれば、数千円で購入することが可能だ。ドライブレコーダーの電源はシガーライターから取ることができるが、ここはひと手間かけて、アクセサリー電源からの配線をオススメする。12Vではなく5Vのものがあるので、注意が必要だ。
というわけで!ドライブレコーダーは自分の自身の身を守るために、是非装着して欲しいと思う。約束だよ!
[ライター/ryoshr・画像/ryoshr、江上透]
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