日本車の長寿化が著しい。かつては判で捺したように4年でモデルチェンジしていたが、開発費の高騰などによって、10年以上存続するモデルもちらほら出ている。
しかし、10年まったく変わり映えしないと、さすがにまるっきり売れなくなる。それを救うのがビッグマイナーチェンジだ。もはやビグマイチェンは、かつてのフルモデルチェンジくらいの重みを持っている。
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そこで、2020年秋以降にビッグマイチェンを敢行した4モデルについて、そのデザインチェンジぶりをチェックさせていただきましょう。お邪魔しま~す。
文/清水草一
写真/NISSAN、HONDA、LEXUS、MITSUBISHI、平野学、奥隅圭之、中里慎一郎
【画像ギャラリー】ビッグマイチェンを敢行した4台とフルモデルチェンジしたN-ONEの新旧モデルを画像で比較!!
■日産エルグランド
MC前の2020年1月~8月の平均販売台数が298台/月。MC後、10月の販売台数が387台/月。MC前のオーダーストップ影響か9月は68台しか売れていなかったので、計算から省いた
現行型は息が長いが、走りの良さは今でもライバルたちに引けを取らない
ビッグマイチェン:2020年10月12日
総評/改良されたがパンチ不足
デザインチェンジ成功度/70点
国産大型ミニバンの草分けだった日産エルグランドだが、トヨタアルファード軍団に完膚なきまでに叩きのめされ、現行の3代目の登場からすでに10年余。土俵際で繰り出した今回のビッグマイチェンの効果は果たしてどうか?
まず現行エルグランドのデザインだが、大型ミニバンとしては異例の、踏ん張り感の強いスポーティなもので、故・前澤義雄氏(元日産チーフデザイナー)も高く評価していた。いわば玄人受けのデザインだが、全高の低さによる室内の狭さや押し出しの弱さによって、販売ではアル/ヴェルに決定的な敗北を喫してしまった。
そこで、2014年のビッグマイチェンでは、グリルをバンパー下まで伸ばして、当時の最大面積にまで拡大。これで一瞬盛り返したものの、すぐに元の木阿弥に戻った。
今回のビッグマイチェンでは、その巨大なグリルをさらに強調すべく、一枚岩化している。マイチェン前は横桟で微妙に分割されているように見えたのを、「どーん!」と鎧みたいにしたわけです。
前澤さんが生きていれば、「コケオドカシだ」と言ったかもしれないが、ある意味シンプルでもありますし、印象は悪くないです。
ただ、これでインパクトが強まったかと言えば、効果は限定的だ。まとまりはいいんだけど、現行アルファードが登場した時のような「うげぇ!」という強烈さには程遠い。厳しい言い方をすれば、ムダな抵抗でしょうか。
でも、エルグランドの操縦性は、相変わらずアルファードよりいいと思うのです。走りにこだわるミニバン好きなら、アルファードよりエルグランド! そんな人いないか……。
■ホンダオデッセイ
マイチェン前の2020年1月~9月の平均販売台数が754台/月。マイチェン後、11月の販売台数が1725台と、2倍強に増えている。10月はエルグランドと同様の理由で省いた
記事の中では最も評価が低いが、マイチェン後の販売台数は最も多い。なお中国では、オデッセイに加えてより高級な派生車として、エリシオンも販売されている
ビッグマイチェン:2020年11月5日
総評/トドメを刺された
デザインチェンジ成功度/30点
かつて超絶大ヒットと飛ばしたオデッセイも、背低ミニバンの販売低迷という時代の流れに逆らえず、2013年登場の現行モデルは全高を一気に150ミリほどアップし、背高と背低の中間的な存在に変身させたが、その中途半端さもあって、販売はまったく低迷していた。
今回のビッグマイチェンの狙いは、ずばり「オラオラ度のアップ」である。マイチェン前は、これまでのオデッセイの伝統をかろうじて感じさせる、曖昧にスポーティな顔つきだったが、それを完全に捨て、「なにがなんだかよくわからないけど、オラオラしたいんだね」みたいなものになった。
なにがなんだかよくわからないのは、狙いが絞れていないからだ。オラオラっぽくしたいけど、あんまりやるのは気恥ずかしい。でもオラオラしないと売れないし……というような。
ステップワゴンもそんな感じのマイチェンをしたけれど、いかにも個性がなく中途半端で、デザインレベルそのものも低かった。
オデッセイはさらにダメ! もうまったく理解不能! 上から下まで横桟グリルを重ね、最上部はメッキを太くしているが、フォルム全体にまったくマッチしてないし、何の哲学もないチープなリフォームとしか言いようがない。
もともとダメだったのを、トドメを刺した感じです。国内におけるオデッセイの命脈は尽きたかもしれない……。涙が出ます。中国で頑張ってください。
■レクサスIS
ISシリーズについては、2020年1月~9月の平均販売台数が64台/月に対し、マイチェン後の11月は600台だ。記事内の評価が最も高く、マイチェン後の伸び率も最も高い
マイチェン前より車両後半のデザインライン立ち上がりが前に移動。かつ角度も急になり、後輪部のワイド感をより強く演出するようになった。デザインラインに合わせてサイドウインドウ後端の切り落とし角度も変更されている
テールランプとトランクリッド周辺形状を工夫する事で、室内空間やトランク容量を保ちつつ低重心感、ワイド感の印象を強くしている(実際30mmワイドになっている)
ビッグマイチェン:2020年11月5日
総評/デザインの本質を磨き上げている!
デザインチェンジ成功度/100点
現行ISもすでに7年だが、フルモデルチェンジは見送られ、ビッグマイチェンを受けた。
ただ、今回のビッグマイチェンは、ほとんどフルチェンジに近いもので、中身はもちろんのこと、デザインも大きな変更を受けている。なにしろフロントウィンドウ以外はすべて新しいんだから!
で、その出来はというと、マイチェンの枠をはるかに超えて、本質を磨き上げている!
マイチェン前のISは、ライト類などのグラフィックの小手先に走りすぎている面があった。個性を出そうとするあまり、ヘッドライト周りは複雑すぎ、テールランプはツンツンと尖りすぎていた。
いっぽう新型は、ヘッドライトはグラフィックをシンプルにまとめ、スピンドルグリルもメッキを抑えてシンプルなデカ口に。ぐっと本物感が出ている。
テール側は、ランプを左右つなげて印象の強さを保ちつつ、サイドに回り込んだ部分は尖りを抑えて上品に変更。同時にトランクリッドの下を美しく流れるように絞り込み、小手先ではない力感を出すことに成功している。
サイドで効いているのは、サイドウィンドウ後端の切り欠き形状変更だ。角度を大きくすることで、よりスポーティで力強い印象になった。オーバーフェンダーの拡大(30mm)も力感アップに大いに寄与している。
つまり、従来のオーソドックなセダンフォルムの上質感はそのままに、抑えるところは抑えて、よりシンプルにカッコよく仕上げているのです。ビッグマイチェンによるデザイン変更としては、史上最高に近い成功例ではないだろうか! ホントにカッコよくなった。
■三菱エクリプスクロス
マイチェンが12月だった為に販売数量の前後比較は出来ないが、マイチェン前の2020年1月~9月は347台/月平均で売れていた。月毎の販売台数変動が大きかったが、多い時はひと月で723台売っている
マイチェンによって、この角度から見た印象がより高級になった。今後市場の反応はどうなるのか気になるところだ
ビッグマイチェン:2020年12月4日
総評/大きく変えた割には地味
デザインチェンジ成功度/75点
大きな変更はふたつある。ヘッドライトをダイナミックシールド上部から、デリカD:5のようにサイド部へ。テールは、PHEVモデル導入による全長の延長に伴ってテールゲートを一新し、かつてのシトロエンC4的なダブルリアウィンドウから、レクサスRXっぽいごく普通のものになった。
これだけ大きく変わった割に印象が変わらないのは、やっぱり顔がそれほど変わってないように見えるからでしょう。新型のヘッドライトは、もともと補助ランプに見間違えるだまし絵みたいなものなので。後ろはまるで別のクルマになったけど、逆に個性は薄まった。
総合的には、決して悪くないけれど、特にカッコよくもなってないです。
■番外編
最後に番外編として、フルモデルチェンジでメカを最新にアップデートしたにもかかわらず、デザインをほとんど変えなかったホンダN-ONEについてひと言。
旧型と同じ形状の外板部品も多い新型N-ONE。よく見るとボンネットフード中央にバルジ形状が追加されたりしている。販売台数は2020年1月~9月までの平均が127台/月で、モデルチェンジ後の11月は2899台
「英断だ!」
確かにデザインは、どこが変わったかわからない。
しかし、N-ONEのようなシンプルなレトロデザインは、無理に変えようとしてもうまくいかない。もはや量販を目指さず、ホンダのアイコンとして継続して行こうという意思だろう。
これで「デザインの魅力度がじわっと大幅アップ!」だったら大絶賛だったんだけどなぁ。でも、このままこの姿勢を20年くらい継続してほしい! ロードスターみたいに。
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みんなのコメント
良いも悪いも、売れれば今の時代にマッチしているということはアルファードが証明している。
オデッセイについて「記事の中では最も評価が低いが、マイチェン後の販売台数は最も多い」との文面を見て
筆者の個人的主観が時代錯誤していることが露呈されているのではないでしょうか。
私的にはエルグランドよりもオデッセイの方が好感がもてる。これも個人の主観。