■モデルチェンジが必ずしも成功するとは限らない
新型車が発売されると、かつては4年から5年、近年では6年から10年の周期でフルモデルチェンジが行なわれるのが通例です。
トヨタ クラウン史上最大の失敗作? 4代目クラウンは本当に駄作だったのか
フルモデルチェンジには開発費や生産設備の刷新、宣伝など100億円単位の莫大な投資が必要といわれていますので、新型車が売れなかったらメーカーにとって大きな打撃となります。
そうならないためにも、メーカーは市場動向やニーズを徹底的にリサーチして新型車を発売するのですが、それでもすべてのクルマがヒット作になるわけではありません。
フルモデルチェンジしたら販売台数が先代よりも低迷してしまったクルマもあるくらいです。そんな残念な結果になってしまったクルマを5車種ピックアップして紹介します。
●4代目トヨタ「クラウン」
1971年発売の4代目「クラウン」は、3代目とは対照的な「スピンドル・シェイプ」と呼ばれた滑らかで美しいボディラインを持ってデビューしました。
通称「クジラ」と呼ばれ、それまでの日本の高級セダンとは一線を画するデザインや、いまでは普通になったボディ同色バンパーなど、先進的なルックスは賛否が分かれ、販売台数は低迷してしまいました。
有名なフレーズで「クラウン史上最大の失敗」といわれましたが、その理由はライバルの日産「セドリック/グロリア」に販売台数で下回ってしまったことにあります。
しかし、後のモデルまで続く「スーパーサルーン」というグレード名を最初に冠し、電子制御燃料噴射装置、横滑り防止装置、電動リクライニングシート、アイドリングストップ機能など当時最先端の装備を採用していました。
また、高級サルーンの大排気量化に対応した2.6リッターエンジン車の追加や、高速道路網の整備が進むことを見据え静粛性と燃費向上を狙った5速MT車の追加など、実際は「一歩先を行く」クルマでした。
1974年に、直線基調で重厚感のある5代目「クラウン」にモデルチェンジして商業的には成功を収めますが、4代目のデザインに魅せられて愛好するファンも多く、現在も旧車イベントなどでは良好な状態の4代目「クラウン」を目にすることができます。
●ホンダ「CR-X デルソル」
1992年に発売の「CR-X」シリーズ3代目となった「デルソル(delSol)」は、「トランストップ」と呼ばれた電動オープンルーフ(手動の脱着式もあり)を備えた2ドアクーペで、それまでの4人乗りから2人乗りになりました。
上級グレードのエンジンは同時期の「シビック SiR」と同じ1.6リッター直列4気筒DOHC VTECで、最高出力は170馬力と当時のクラストップレベルです。
しかし、電動オープンルーフによる車両重量増によって、ピュアスポーツだった先代までの「CR-X」のイメージが薄れてしまいました。
2代目まではジムカーナなどのモータースポーツで大活躍しましたが、3代目は後継車とは思えないほどの変わりようだったため、スポーツドライブを指向するドライバーから敬遠されてしまいます。
「デルソル」はスペイン語で「太陽」を意味します。スポーティさを持ちながら、スイッチ操作で手軽に陽光を浴びてオープンエアドライブを楽しめるクルマでしたが、「CR-X」には求められてはいなかったのかもしれません。
■キープコンセプトもイメージチェンジも、どっちもダメ?
●4代目日産「マーチ」
初代日産「マーチ」のデビューは1982年です。当時、人気絶頂だった近藤真彦さんをイメージキャラクターに起用し「マッチのマーチ」のキャッチコピーで売り出しました。
話題となったパイクカー「Be-1」「パオ」「フィガロ」も初代マーチをベースに生まれていいます。
1992年に登場した2代目は欧州市場を意識した合理的なパッケージングのクルマとなり、2002年登場の3代目はルノーとの共同開発によるプラットフォームを用いながらも、特徴的な丸型ヘッドランプや丸みを強調したボディデザインとカラー、内装色などで女性から支持され好調な販売台数を記録していました。
しかし、2010年に現行の4代目へとモデルチェンジすると、3代目からキープコンセプトとしたパッケージングは、ライバルと比べても決して広い室内ではなく、強くアピールできるポイントもあまりありません。
また、新興国をメインターゲットとして開発された経緯もあり、生産初期では内外装の質感もいまひとつという評価が下ってしまいました。
日産も、2005年から国内では「ノート」がコンパクトカーの主力となっていることもあり、2018年の実績で販売台数は1万2000台ほどと、先代の末期と比べても低迷が続いています。
●6代目スバル「レガシィ」
スバル「レオーネ」の後継モデルとして1989年にデビューした「レガシィ」は4WDに200馬力を誇る2リッター水平対向ターボエンジン搭載車が爆発的人気となり、なかでも高性能ワゴン車の先駆者となりました。
代を重ねるごとに進化し、先進的な運転支援システム「EyeSight(アイサイト)」の装備だけでなく、高性能なワゴンから「高級なワゴン」へと変化。ボディサイズも拡大していきました。
2014年発売の現行モデル(6代目)は、さらに大きくなり、ツーリングワゴンが廃止され、4ドアセダンの「レガシィB4」とクロスオーバーSUV「レガシィアウトバック」の2本立てとなります。
1.5トンを超える車重に対して、2.5リッターで175馬力のエンジンでは非力さが否めず、かつての高性能ワゴンの面影なく販売数も過去の栄光にはおよびません。
一方、7代目となる新型「レガシィ」が2019年2月の「シカゴオートショー」にて世界初公開されました。
2.4リッター水平対向4気筒ターボエンジンも期待されていますが、何よりもスマートで「存在感のあるセダン」となったボディデザインに魅力を感じている人も多いのではないでしょうか。
●6代目日産「シルビア」
日産のスペシャルティカー「シルビア」は1965年に初代がデビューし、美しいデザインは当時の若者たちの憧れの的となります。
その後何度かのモデルチェンジを経て、1988年に発売された5代目「シルビア」はスポーツ走行に適した手頃な価格の後輪駆動車だったことだけでなく、ホンダ「プレリュード」とともに「デートカー」の代表的なクルマとして大ヒットしました。
日産は次なる一手として1993年に6代目「シルビア」を発売。流行に乗ってボディサイズを拡大し3ナンバーサイズとなり、フロントマスクも先代の精悍なイメージよりおとなしくなりました。
しかし、220馬力までパワーアップしたエンジンも、国産スポーティカーがメーカー自主規制の280馬力に近づいていくなかでは魅力に乏しく、丸みを帯びたボディデザインも相まって「走らなさそう」なイメージが付いてしまい「シルビア」人気は一気に減速します。
「軽快感が失われた」と言われる6代目ですが実際には正常進化しており、パワフルかつ、先代よりも熟成されたサスペンションセッティングでスポーツドライブにもマッチしています。
とくにマイナーチェンジ後の「吊り目」と呼ばれる後期モデルは、生産台数が少ないこともあって中古人気が出て、今後はさらに人気絶版車となる可能性があります。
なお、7代目にモデルチェンジした際に5ナンバーサイズに戻され、デザインもシャープさを取り戻して人気復活の兆しはありましたが、2ドアクーペ市場そのものの低迷と、排ガス規制強化もあり、この代をもって「シルビア」の歴史は幕を閉じることになりました。
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