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FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ/スパイダー/コンペティツィオーネ 中編

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FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 ベルリネッタ/スパイダー/コンペティツィオーネ 中編

流行へ左右されない純粋な美しさ

フェラーリ・デイトナのトレードマークといえる、シャークノーズのフロントエンドが完成したのは、4番目のプロトタイプからだといわれている。かくして、1968年10月のパリ・モーターショーで365 GTB/4は華々しくデビュー。大きな反響を呼んだ。

【画像】FRの通称デイトナ フェラーリ365 GTB/4 先代の275 GTB 現行の812シリーズも 全109枚

このモデル名は、1気筒あたりの容量が365ccであったことと、カムシャフトが4本組まれていたことが由来。同時に、1967年のデイトナ24時間レースでフェラーリ330 P4が1-2フィニッシュを飾ったことをきっかけに、デイトナとも呼ばれるようになった。

フェラーリの歴史へ詳しい、パット・ブレーデン氏とジェラルド・ルーシュ氏によると、通称「デイトナ」と呼び始めたのは社内の開発部門。デビュー前にそれがリークされていたものの、フェラーリは365 GTB/4として発表したそうだ。

2023年に見るデイトナは、半世紀以上を経ても純粋な美しさで見る者を惹き込む。最高級のテイラード・スーツのように流行へ左右されず、クラシックながらも誰もが認めるであろう端麗さだと思う。

サイドラインはエレガントに後方へ流れ、表面へ与えられた装飾的な要素は最小限。フロントフェンダーとリアフェンダーの間を、折り目の強いキャラクターラインが走る。伝統的な名車と同じく、停まっていても240km/hで走っているように見える。

現在もアウトバーンで240km/h以上のドライブ

今回ご登場願った365 GTB/4 ベルリネッタは、ギルバート・スミス家が代々所有する1台。オリジナルのスタイリングの特徴を、最も鑑賞しやすい。

珍しいヴィオラ・パープルのボディ塗装に至るまで、殆どオリジナル状態が保たれている。1970年8月に初代オーナーが支払った金額は、8830ポンド。当時の英国では、最も高価な2シーターモデルだった。

現在の走行距離は約11万2000km。現オーナー家は17年間所有しているが、これまで4万4000kmほど距離を伸ばしたそうだ。現在も、アウトバーンで240km/h以上のドライブを楽しんでいるとか。

53年前のイタリア車だと考えると、優れた品質にあることへ驚く。初期のモデルらしく、フロントノーズの4灯ヘッドライトは固定式で、プレキシガラス製のカバーが覆っている。

サイドウインドウ後端のモールと一体になったハンドルを引き、素晴らしい風合いに熟成されたドライバーズシートへ腰を下ろす。シートクッションは打ち直されているが、表面のレザーは新車時のままらしい。

インテリアでは、当時のアイテムに新しい部分が融合している。ウッドリムのナルディ・ステアリングホイールが、寝かされたように伸びる。アルカンターラで張り直されたダッシュボードには、巨大なスピードメーターとタコメーターが並んでいる。

難関ルートでも安心感は揺るがない

アクセルペダルを軽く踏み込む。スターターモーターが長くクランキングし、V型12気筒エンジンが目を覚ます。静かなアイドリングへ、すぐに落ち着く。

3枚のペダルは、やや右側へオフセットしている。ステアリングコラムは固定されているが、ドライビングポジションは良好。背もたれの角度は変えられず、腕を伸ばしたスタイルを強いられる。

5速MTのゲートは、1速が横に飛び出たドッグレッグ・パターン。回転数を上げ、英国ミルブルック・テストコースのアルペンルートへ飛び込む。

ここの区間は、どんな新モデルにとっても難関。しかし、デイトナの安心感は揺るがない。前方視界は良好だが、ワイパー手前でボンネットがフレアし、下方を少し遮っている。

アシストの備わらないステアリングホイールは、低速域では重い。フィードバックは濃密で、路面の影響によるキックバックも隠さない。ロックトゥロックは3回転で、比較的クイック。シフトレバーの感触はダイレクトだ。

デイトナは、カーブが連続する区間を揚々と進む。クラッチペダルもステアリングホイールも、正確に扱うには確かな力を必要とする。必死になるほどではないものの、全身を使って運転するタイプだ。

V12エンジンは、3500rpm付近から本領を発揮し始める。ウェーバー・キャブレターの2本めのチョークが開くと、多くのガソリンが送られ抑制が解かれる。4000rpmから6000rpmが最高の領域。崇高な内燃エンジン・サウンドが充満する。

大幅な補強が施されたデイトナ・スパイダー

トルクが太く粘り強く、低回転域から力強い。デイトナへ慣れるほど、高速域での安定性も高いことへ気が付く。不意の隆起部分を通過しても、ボディが翻弄されることはない。コーナーへ突っ込んでも、アンダーステアは抑えられている。

ミドシップ・スーパーカーのような、シャープなターンインや反応の緻密さまでは得ていない。しかし、半世紀以上前のグランドツアラーとしては稀有なほどに抱ける信頼感が、デイトナの体験を豊かにしている。

続いてレッドの365 GTS/4 スパイダーへ乗り換える。初代オーナーへ納車されたのは1971年8月。実は偶然にも、ヴィオラ・パープルの365 GTB/4 ベルリネッタと同じ、ケビン・マクドナルド氏がオーダーしたフェラーリだった。

デイトナのスパイダーは122台が生産されているが、右ハンドル車は7台のみ。現在のオーナーは32年間も大切に維持しており、フェラーリを得意とするガレージ、コッティンガム・ブルーチップ・ロンドン社が面倒を見ている。

スパイダーが発表されたのは1969年のフランクフルト・モーターショー。本来ファストバック・ボディで設計されただけに、ルーフの切除に伴い、大幅な補強がシャシーへ施されている。トランクリッドとフロントガラス・フレームは、スパイダー専用品だ。

ホイールもベルリネッタとは異なる。5スポーク・アルミのカンパニョーロ社製かクロモドラ社製ではなく、殆どがボラーニ社製のワイヤーホイールを履いていた。

この続きは後編にて。

文:AUTOCAR JAPAN AUTOCAR JAPAN
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