衝撃的だった初代「フェアレディZ」パトカーの登場
2020年9月16日(水)、日産自動車は新型「フェアレディZ」のプロトタイプモデルを世界に向け発表しました。
「ボンネットに透明板を立てたパトカー」激減なぜ? バグガードと呼ぶその板 役割は
フェアレディZは1969(昭和44)年に初代が発表された日産の伝統的ブランドで、50年以上の歴史があります。駆動方式は一貫してFR(フロントエンジン・リア駆動)で、デザインはいわゆる「ロングノーズ・ショートデッキ」と呼ばれるボディラインを堅持してきました。
受け継がれてきた伝統はそれだけではありません。初代のS30型から、連綿とパトカーとして警察で運用されてきた実績を持っている、数少ないスポーツカーでもあるのです。
フェアレディZのパトカーが最初に配備されたのは、警視庁高速隊(高速道路交通警察隊)です。1970(昭和45)年に高性能モデルの「Z432」が1台、高速隊本部に配備されたのを皮切りに、翌1971(昭和46)年に4台の「Z432」が、開通間もない中央自動車道を取り締まるため府中分駐所(当時)に配備されました。
1972(昭和47)年には日産の寄贈で神奈川県警高速隊に「240ZG」が配備されます。同車は37万km以上を走り、1980(昭和55)年に退役。神奈川県警の交通安全センターで展示されたのち、2004(平成16)年に寄贈元の日産に返還され、同社で大切に保管されています。
なお警視庁や神奈川県警以外に、三重県警などでも初代フェアレディZのパトカーが使用されています。
もうすぐ15年選手 栃木県警のZ33型パトカー
1978(昭和53)年8月、フェアレディZは2代目、S130型系にモデルチェンジします。2代目のパトカー仕様では、屋根上の赤色回転灯が中央のみの1灯式から、左右にまたがるバータイプの大型2灯式になっています。配備先は警視庁や神奈川県警、静岡県警などでした。
その後もフェアレディZは、1983(昭和58)年に3代目のZ31型系、1989(平成元)年には4代目のZ32型系と、順次モデルチェンジを繰り返しますが、これらのタイプも複数の都道府県警で採用され、パトカーとして運用されています。
さすがに4代目のZ32型系のパトカーまでは退役しているものの、2002(平成14)年7月に登場した5代目のZ33型系と、2008(平成20)年12月にデビューした6代目のZ34型系の2種類はパトカーとして2020年9月現在、現役で使われています。
古い方のZ33型系を運用するのは栃木県警です。2007(平成19)年に日産が同県警に寄贈した車両で、グレードは「Version NISMO」です。そのため標準車と異なるエアロバンパーや大型スポイラーなどを着け、ホイールも大径のものを履いています。
配備先は宇都宮市の西隣、鹿沼市に所在する県警高速隊本隊で、「110」の希望ナンバーを付けて東北道を中心に活動しています。
「NISMO」と標準の2種類が存在 警視庁のZ34パトカー
栃木県警への配備から9年後、2016年にフェアレディZパトカーの配備が行われたのが、警視庁です。従来のマツダ「RX-8」パトカーの更新用として都費により導入されたもので、当初はタイプ「NISMO」3台でしたが、翌2017年に標準仕様で1台追加配備され、2020年現在、4台が在籍しています。
先行して配備された3台は、前述のとおり「NISMO」というバージョンアップモデルのため、フロントバンパーの形状が異なるほか、リアスポイラーを装着しています。また前後のバンパーに「NISMO」のエンブレムが付いているのが外観上のポイントです。
対して2017年に1台だけ入った標準仕様は、一見すると「NISMO」仕様の3台とあまり変わらないものの、屋根上の散光式赤色灯がオールLEDの薄型タイプであり、かつ「NISMO」エンブレムがありません。
警視庁のフェアレディZパトカーの配備先は、高速隊と一般道を取り締まる交通機動隊の2隊で、分散して運用されているようです。
このように、フェアレディZは警察車両として屈指の採用実績を持っているのです。
とはいえ現場での使い勝手などを考えると、実際には4ドアセダンベースのパトカーの方がベターのようです。スポーツクーペが持つ加速性や高速性能なども、それが必要とされる場面は限られるでしょう。
しかし交通違反の抑止効果や、リクルートを含めた広報活動などではスポーツクーペのパトカーに優位性があるのも確かです。
2020年9月18日には栃木県警に対して、県民からレクサス「LC500」をベースにしたパトカーが寄贈されています。
そう考えると、新型フェアレディZのパトカーも近い将来、誕生する可能性は捨てきれないのです。
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