マイナーチェンジを受けたアウディのコンパクトSUV「Q2」に小川フミオが試乗した。
個性は健在
Q2はアウディのラインナップ中のベストセラー・モデル。デザインコンシャスなコンパクトSUVで、2021年4月にマイナーチェンジした。そして、やっと9月に試乗のチャンスがめぐってきた。
あたらしい1.5リッターエンジンを得て、意外なほどパワフルに走る。見た目だけじゃない魅力のつまった1台だ。
Q2は2016年春に本国でデビューし、日本には2017年に導入された。新型はあらたに、フルモデルチェンジしたアウディ「A3」などとおなじ1497cc直列4気筒ガソリンターボを搭載し、内外装に変更がくわえられた。
2020年に追加設定されていた2.0リッターTDI(ディーゼル)エンジンをはじめ、1.0リッター、1.4リッターのガソリンエンジンは、カタログから落とされた。1.5リッターへの一本化である。
エクステリアは、8角形のシングルフレームの位置が従来よりもわずかに下げられるとともに、フロントセクションの幅の広さが強調された。
上からみるとヘッドランプまわりに面とりがされ、V字が強調されている。おそらく歩行者との衝突要件をクリアするための形状変更と思われる。アウディのデザイナーはこれをうまくやってのけ、従来とくらべて躍動感が高まった印象だ。
これまでのQ2の特徴だったリアクオーターパネルの扱いも、少し変更されている。試乗車は、ウィンドウとの連続性を感じさせるグロスブラックに塗装されていた。これによって、6ライト(リアクオーターウィンドウを持つスタイル)のSUV的な印象が強くなった。
もちろん、従来のようにボディカラーとはあえて異なる塗装で、リアクオーターパネルを飾るカラースキームも残されている。選択肢がより多様になった。
個人的には、エッジの効いたラインをもつボディ側面のデザインを活かすのが、Q2の真骨頂と思ってきた。そのため、できれば車体色はブラック。そして手に入るならフロントグリルもフレームまでブラックにしたい。そうすることで、バカラのブラック・クリスタルのような、デザインになるかもしれないからだ。
そんなふうに、自分のイメージをふくらませるのが大きな魅力である。ただし、内装が実務的で、外観イメージと合わないのが残念な点。これは旧型からあまり変わっていない。
インテリアでは、エアベントやシフトレバーのデザインを変更。メーターに12.3インチ液晶ディスプレイを使った「アウディバーチャルコックピット」もオプションで選べる。
コーナリングは得意種目
従来ちょっと歯がゆかったのがガソリン・エンジンだ。せっかく魅力的な外観のクルマでありながら、ややパワー不足感があった。
あたらしいQ2は、さきに登場したA3などおなじ110kW(150ps)の1.5リッターエンジンでもって、その“弱点”を克服したといえる。
試乗したグレードは、アドヴァンス。スポーティなS-lineも設定されるが、両モデルの違いは、バンパーやホイール(ともに17インチ径)の意匠が異なるのにくわえ、後者には専用スポーツ・サスペンションが組み込まれる。
やや軽すぎるのがタマにキズというかんじのアクセルペダルであるが、エンジンの反応は速い。軽く踏んだだけで、ぽんっと弾かれたように、車体が前に飛び出していく。
足まわりも少々硬めの設定で、スポーティな印象だ。かつ、最新のA3に近い、フリクションの少ないドライブトレインのファインチューニングのおかげで、高速道路では速度がスムーズに上がっていく。これも爽快だ。
ステアリング・ホイールはやや重めの設定。しっかりと踏ん張るサスペンション・システムによる高い操縦性と相性がよい。正確なステアリングのおかげで、コーナリングは得意種目である。カーブが連続するような道が身近にあるひとなら、そこを走れば、Q2の実力にあらためて感心するはず。
いっぽう、エンジンには気筒休止システムの「シリンダーオンデマンド」が組み込まれている。高速走行時など低負荷での運転では、2気筒で走って燃費をかせぐ。燃費はリッターあたり15.8km(WLTC)と発表されている。
価値ある394万円
4200mmの全長のボディに、2595mmのホイールベースの組み合わせなので、室内空間、とくに後席スペースは身長175cm級の乗員にとって、ぎりぎりのサイズ感。いつも後席を使うというひとには、ややきゅうくつかもしれない。
アウディでは「A1」と「A3」のあいだのサイズだ。先代A3とプラットフォームを共用し、ほぼ同寸だったため、A3がモデルチェンジして大きくなったので、Q2のほうがコンパクトになってしまった。いっぽう、フォルクスワーゲンのSUV「T-Cross」(全長×全幅×全高4115×1760×1580mm、ホイールベース2550mm)より、ボディも少し大きいし、ホイールベースもわずかに長い。
このデザインが好きで、普段はひとりあるいはふたりでの移動が中心というなら、パワフルになって扱いやすくなったあたらしいQ2は、試してみる価値がある。価格は394万円。
運転支援システムやシートヒーター、さらにオートマチックテールゲートなどが組み合わされた「コンビニエンス&アシスタンスパッケージ」(21万円)をはじめ、バーチャルコクピットや8スピーカーなども含まれる「ナビゲーションパッケージ」(29万円)も選べる。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹
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