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新型アウディA7スポーツバック 50 TDIを試乗評価 CLSとの差異を明確化

掲載 更新
新型アウディA7スポーツバック 50 TDIを試乗評価 CLSとの差異を明確化

もくじ

どんなクルマ?
ー CSLに対抗するアウディ流の方向性
ー シャープなスタイリングが包む、先進性の高さ

メルセデス・ベンツAクラス新型 価格 内装 発売時期 実車画像

どんな感じ?
ー ボディサイズは若干小さく、車内は若干広く
ー A7はドライバー・オリエンテッド
ー 余裕を生む、A8と共通のパワートレイン
ー テクノロジーが提供するリラックスした乗り味

「買い」か?
ー クール・ビューティなクルマ

スペック
ー アウディA7 スポーツバック 50 TDI Sportのスペック

どんなクルマ?

CSLに対抗するアウディ流の方向性

アウディA7 について語るとき、プレミアムな5ドアクーペであるメルセデス・ベンツCLSについて触れない訳にはいかないだろう。

グランドツーリング・ラグジュアリークーペという新たなモデルカテゴリーを創造したクルマこそ、2004年に登場したCLSだからだ。初代A7は2010年にリリースされたが、CLSに対してのアウディ流の回答であり、ライバルの存在を決して無視できる内容ではなかった。

今回の2代目となるA7スポーツバックは、3代目CLSが発表される直前に登場することになった。

一見すると、両モデル共に微妙なニッチマーケットに対して似たようなアプローチをとっているように思える。マーケットのニーズに応えるべく、スタイリングの良さとスポーティさ、動力性能の高さを備えつつも、広い室内と快適性を重視している。

A7はA6と、CLSはEクラスとプラットフォームを共有し、どちらも新しいエンジンに48Vのマイルドハイブリッド・システムを搭載している事も特長だ。加えて両車は、フラグシップサルーンのA8やSクラスから技術的な面の流用を受けている事も共通。

一方で、大幅にスタイリングの見直しを受けた新型だが、メーカーとして現在のモデルの方向性をどう捉え、何を優先にしたのかで、両車の仕上がりは随分と異なっているようだ。

シャープなスタイリングが包む、先進性の高さ

新しいCLSは、メルセデス・ベンツとしては、やり過ぎとまでは至らないギリギリの線で、ダイナミックなデザインを与えられている。それに対しA7はと言えば、クリーンでシャープなデザインでまとめられている。さらに、大量の最新技術が盛り込まれた。

A7のデザインは、アウディとしての新しいデザイン言語を受け継いでおり、A8が持つプレステージさとは異なる「先進性の高さ」に焦点が当てられている。アウディらしいクールなスタイリングであることに変わりはない。

フロント周りは、シングルフレームグリルの存在感が大きい。シャープなエッジと、ボディライン、面構成も含めて、スポーツバックとは名ばかりのクーペボディがグリルから広がっているようだ。この流線型のデザインをアウディは「ヨット風」のデザインと表現している。

リアエンドは従来モデルから3cm高くなり、高速域で展開するリアスポイラーを内蔵する。スポイラー上端から両サイドに落ちるエッジラインは、斜め後ろ、スリークオーター・アングルから見た時の印象を高めている。真後ろから見るよりも個性を感じられる。

リア両サイドを貫くバーを備えるテールライトも、エクステリアでの特長。最上級のSラインには、HDマトリックスLEDヘッドライトも備わり、「X」のデザインがレンズ内に施されている。

続いて車内から詳しく見てみよう。

どんな感じ?

ボディサイズは若干小さく、車内は若干広く

新モデルは、ホイールベースが12mm延ばされ2926mmとなった一方で、全長は5mm短い4969mmとなった。全幅も1911mmから1908mmへと若干狭められており、全高は1422mmと2mm高くなっている。

ラゲッジスペースは初代と変わらず535ℓで、リアシートを畳めば1880ℓにまで拡大できる。アウディはゴルフバックふたつを積むのに充分な大きさと言っているが、クルマのターゲット層がここから読み取れるだろう。

若干拡大したホイールベースは、後部座席の空間にも余裕をもたらし、レッグルームは21mm、ヘッドルームは5mm広くなっている。大人ふたりには充分なスペースがあるが、長距離ドライブの時などは、クーペボディだという事は意識しておいた方が良いだろう。

そもそもA8の様に運転手に乗せてもらうのではなく、自らが運転するクルマとしてデザインされているから、リアシートの居住性はこのクルマの重要項目ではない。

それはA7のダッシュボードにも現れている。

A7はドライバー・オリエンテッド

A8譲りのミニマムなデザインの流れを受けつつ、ドライバー重視のデザインになっているダッシュボード。中央上部に備わる10.1インチユニットと、センタートンネルから伸びる面に位置する8.6インチユニットの2台のモニターが、ドライバーの方へ向いて取付けられているのだ。

クルマに内包されるほぼすべてのシステムは、タッチスクリーンか、ガラスに覆われたボタン類で操作が可能。ステアリングホイールには唯一、従来式のアナログなボタンとダイヤルが備わっているが、それらはデジタル式のアウディ・バーチャルコックピット・ディスプレイの操作を行うもの。

指先でのコントロールに反応する操作音は非常に効果的だが、望む操作をどの画面から行うのか、わからなくなる時がある。

クリーンなスタイリングのレザーシートはとても快適。インテリアのアンビエントライト、デュアルゾーン・エアコンのほか、このクラスに望むような殆ど機能は盛り込まれており、その仕上がりはアウディらしい秀逸な質感を得ている。

リビングのお気に入りの椅子で過ごす、温もりのある時間というより、お洒落なデザイナーズ・バーで過ごしている様な、そんなインテリアに感じた。

余裕を生む、A8と共通のパワートレイン

新型のA7スポーツバックが積むガソリンエンジンは当初1種類のみ。

339psと50.9kg-mを生み出すV6スーパーチャージャーが55 TFSIには搭載される。組み合わされるミッションは、7速Sトロニック・デュアルクラッチ。そして数週間後には、今回テストした、286psと63kg-mを発生する3ℓのV6ディーゼルを搭載した50 TDIが登場する。こちらには8速ティプトロニックATが組み合わされている。

どちらのエンジンにも48V仕様のマイルドハイブリッドを搭載し、54~159km/hでのコースティング時にエンジンを停止させることを許容する。また英国での販売の大多数を占めると予想される50 TDIは4輪駆動のクワトロとなり、セルフロック式のセンターディファレンシャルを備える事で、最大85%の駆動力をリアタイヤに伝達することが可能。

ちなみにこのエンジンのラインナップは、A8と共通するから、見覚えのある読者もいるかもしれない。このTDIに限って言えば、低速域に時折ザラつきも看取されるが、A8の様に巡航走行時は静かで、極めて上質。0-100km/h加速は5.3秒で、最高速度は249km/hにリミッター制限される。

豊かなトルクが溢れ出し、クルージング時の満ち足りた走り味は最高のものだ。

今回のテスト車両は「スポーツ」仕様で、標準の19インチに代わって20インチのホイールが装着されており、通常のスプリングではなく、オプションとなるアダプティブ・エア・サスペンションに置き換わっていた。

テクノロジーが提供するリラックスした乗り味

試乗は南アフリカのケープタウンだったが、殆どの場面でスムーズな乗り心地を披露してくれた。ただし、ドライブセレクトから最もソフトな設定を選んでも、予想していたより荒れた路面での処理は良くなかった。

アウディによると、多くのユーザーの声を反映し、高効率な「エフィシェンシー」から本気の「ダイナミック」まで、ドライブモードに大きな変化を持たせたとしている。とは言え必然的に、自分にとって最適な設定は「インディビジュアル」に記録させることになるだろう。ハンドリングのレスポンスを最も良くし、サスペンションの乗り心地をコンフォートに設定した状態が、われわれは気に入った。

もうひとつテスト車両に備わっていたオプションが、ダイナミック・オールホイール・ステアリングと呼ばれる4輪操舵システム。低速域ではフロントタイヤと逆位相にリアタイアが制御され旋回性能を高め、高速域では同位相に動き、安定性を高める。

システムの介入は非常に自然で、大きなボディにも関わらず、低速域では特に運転を楽にしてくれる。

加えてA8と同様に、豊富な運転支援機能を備えるA7。前方のクルマの動きに併せて発車から走行、停車までをコントロールしてくれるし、車線に合わせてステアリングの制御もしてくれる。また、今年の終わりには自動駐車システムも追加される予定になっている。

これらの運転支援機能に4輪操舵が加わると、ステアリングのフィーリングは若干希薄になるものの、A7の運転をより快適に、リラックスしたものにしてくれる。

「買い」か?

クール・ビューティなクルマ

A7の快適で落ち着いた振る舞いは、おそらく多くのオーナーの共感を得られるものだろう。デザイン性とダイナミクス性能に加え、安楽さと落ち着いた内面性も兼ね備えたクルマ。その冷静さが格好いいと分かっている。

つまり、サーキットを飛ばすような性格を持ち合わせているクルマではない。自らが快適に長距離移動をこなすためのクルマ。今まで以上の長距離でも、毎日の高速道路での通勤でも、心地良くしてくれる。

もちろん、新しいメルセデス・ベンツCLSとドライビング性能に関しての比較は未だ未確認のまま。その結果によってA7スポーツバックの見方にも影響はあると思うが、この知的な技術の塊は、対等に渡り合う素質を充分に備えているように感じる。

でもA7は、その結果なんて心配していないだろう。

比較される事を気にも留めない様な、クール・ビューティなクルマだから。

アウディA7 スポーツバック50 TDI Sportのスペック

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