時代とともに消えていった「ボンネット型」アメリカで健在
世界最強のアメリカ軍を「象徴するクルマ」と言えばなんでしょうか。その答えを挙げるなら、意外にも地味ながら「ボンネット型トラック」かもしれません。
【画像】デカっ…!これが現役の米軍「ボンネット型トラック」です
武骨、パワフル、頑丈さがウリのまさに“トラック界のアメ車”で、アメリカ国内の商用車、さらに世界中に展開するアメリカ軍のかたわらには必ずこの車両の姿があります。
しかし日本のイメージでボンネット型は「昭和30年代を彷彿させるクラシックカー」という認識です。実際国内の大型トラックは半世紀前ごろからすでに、エンジンを収めた長い鼻などなく、車両正面にいきなり運転席を配しその真下に前輪とエンジンを置く、現在のスタイルの「キャブオーバー型」へと急速に置き替わりました。
自衛隊でも「73式大型トラック」の調達が始まった1973(昭和48)年度から早くも“脱ボンネット化”が進み、欧州諸国の軍隊でもほぼ同時期に変更が行われています。
車体の長さが同じならば、キャブオーバー型の方が荷台を広く取れ物資も多く運べて効率的で、燃費向上にも直結します。またボンネットがないので細い道や狭い交差点も走りやすく、国土が狭く石油資源に乏しい日本や欧州に合っていると言えるでしょう。
いっぽうでアメリカでは、半世紀たった今もボンネット型にこだわっています。その理由は何でしょうか。
アメリカ軍が「ボンネット型トラック」を使い続ける理由
まず第1の理由が「合理的だから」です。長年使い慣れた規格・システムで問題がなければ「そのまま使い続ける」のがベストというのが、当然の理論です。さまざまなトラブルも解決済みで、むしろ信頼性の高い機械に仕上がっています。
1941年に第二次世界大戦に参戦したアメリカは、持てる工業力をフル稼働させて軍用トラックを量産しました。主力の6輪タイプ(前2輪、後4輪)トラックを例にすると、同国のコービット社やホワイト・モーター・カンパニー社などは1945年の終戦までの足掛け5年間に、計20万台以上も製造しています。
その当時のトラックの主流だったのがボンネット型で、例えば荷台に積むパレットや段ボールの寸法など、兵站(物流)のあらゆる規格・システムが「ボンネット型仕様」で整備されていきます。
中小規模の軍隊ならともかく、世界を股にかける巨大組織・アメリカ軍にとってトラックの形式を変えるというのは、あらゆるものの規格をも変更する必要が出てくるため、大変なのです。
第2の理由は「メーカーの利益追求」です。ほぼ同じスタイルのトラックを何十年も造り続ければ、新たな設備投資もあまりかけずに製造できるというわけで、資本家にとってまさに「理想の経営」です。
戦後、1950年代には後継車として、先述の2社に代わって米AMゼネラル社の「M54 5t」シリーズが選ばれ、ベトナム戦争でも活躍しました。同社はのちに、高機動多用途汎用車両「ハンヴィー」の製造元にもなります。
その後米軍用のボンネット型6輪トラックは同社がほぼ一手に引き受け、1970年代には「M809 5t」シリーズ、1980年代には「M939 5t」シリーズと更新されますが、外見上はあまり変わりません。新型を発表するたびに生産設備を大きく作り直さずに済むため、価格も安くでき、軍や納税者であるアメリカ国民にとってもプラスです。
3番目として「広大で、かつ石油資源に恵まれた国土」という点です。土地に余裕があるため道路や交差点もビッグサイズで、鼻の長いボンネット型でも運転が楽です。さらに石油は基本的に自給できるお国柄なので、日本や欧州のように「燃費に神経質になる」必要もありません。
逆に厄介になってくるのが、急に道に出没した熊や鹿、放牧中の牛との正面衝突です。ボンネット型なら運転手が負傷する可能性が低く、「運転手の生命を守る」という重要な意味があるようです。
実戦でも「ボンネット最強」!?
4番目は「軍事的理由」で、前述の点と重なりますが、戦場においてボンネット型の方が運転手の身を守れるという点も重要です。
前輪は運転席のずっと前にあるので、地雷を踏んでも運転手への被害を低く抑えられます。一方キャブオーバー型は運転台の直下に前輪があるため、被害が直接運転手に及ぶ確率が高くなるのです。
また戦場を走行中、突然眼前に機関銃を持った敵兵が現れ乱射した時でも、ボンネット型ならば運転手は咄嗟に身を屈め一気に走り去れば、ボンネットに収められたエンジン・ブロックが銃弾を弾き、運転手が無傷で難を逃れられる可能性も高くなります。しかしキャブオーバー型ではこの芸当が望めません。
突然道路上にバリケードが姿を現しても、ボンネット型ならそのまま突進してバリケードを破壊し突破することも可能です。キャブオーバー型なら運転手が負傷するリスクはぐっと高まります。
エンジンの故障の際にもボンネット型の方が優位でしょう。ボンネットを開ければ簡単にいじくることができ、その場で修理不能な場合も、工作車が備えるクレーンでエンジンを引っ張り出して簡単に交換できます。いっぽうキャブオーバー型の場合、運転台全体を前方にジャック・ナイフのように傾けてエンジン・ルームにアクセスするという仕組みですが、万が一この箇所が壊れると、運転手1人ではどうにもなりません。
さて、このように長らくボンネット型全盛のアメリカ軍ですが、実は最近はFMTV(中型戦術車両ファミリー)というキャブオーバー型が普及しつつあります。
もともとオーストリアのシュタイア・ダイムラー・プフ社が開発した車両で、最終的に米オシュコシュ社がライセンスを獲得し大型軍用トラックの更新用として現在着々と置き換わっているようです。近い将来、アメリカ軍でも古き良きボンネットの雄姿を拝むことができなくなるかもしれません。
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みんなのコメント
一度も読み直す事なく校正作業ゼロで記事を
送り出しているのだろうか?
金を稼ぐモノ書きとは思えない、、、