■「センチュリー 左ハンドル仕様」 なぜ存在?
1967年に誕生した「センチュリー」は、トヨタブランドの1車種というよりは、トヨタ・コーポレートを背負う役割を担っています。
多くの人は「後席に座る人を優先するクルマ」と言うイメージがあると思いますが、実際は「後席6:前席4」の割合だと言います。
【画像】超カッコイイ! これが「左ハンドルのセンチュリー」です!(26枚)
このセンチュリーに強い想いを持っていたのがトヨタ名誉会長・豊田章一郎氏でした。実際に初代の開発に携わっており、関東自動車での生産立ち上げの時には泊まり込みで行なっていたそうです。
2代目の開発の際には「ドアの開閉音もっとしっかりならないか、欧州車のほうがいいぞ」、「ふわふわで乗り心地はいいが、もっとカチッとならないか」、「伊勢湾岸で横風に煽られるとふらつく、なんとかならないか」など、実際に後席に乗って気が付いた事を開発陣に直接フィードバックしたことも。
3代目は直接関わっていないようですが、ご子息である豊田章男氏を通訳にしてその想いがシッカリと伝えられたそうです。
そして、章一郎氏が最も心配していたのは、「環境対応ができずにセンチュリーが無くなってしまう」でしたが、開発陣はハイブリッド搭載を決断。それを誰よりも喜んでいたそうです。
ちなみにセンチュリーは基本的には「日本専用車」ですが、実は「左ハンドル仕様」も存在します。
これは章一郎氏の「世界のショーファーカーにしたい」と言う強い想いを形にしたもので、約100台を生産。
その多くは大使館や総領事館、政府代表部など在外交官や、各国のトヨタパートナーだったと言いますが、ディーラーの要望からベネルクス三国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)でも発売されたそうです。
その中の1台が、ドイツトヨタの敷地内にある博物館「トヨタコレクション」で動態保存されています。
この個体は過去にTME(トヨタモーターヨーロッパ)が所有していた左ハンドル1号車で、当時駐在していた役員の送迎車として活躍していました。
■「左ハンドル」だけじゃない! 日本仕様との違いは
では、左ハンドルのセンチュリーは日本仕様(=右ハンドル)と何が違うのでしょうか。
筆者(山本シンヤ)が現地で実際に実車をチェックしてみました。
まずエクステリアですが、パッと見は日本仕様と同じように見えますが、電動アンテナの追加(左リア)や横長のナンバープレートに合わせて切り欠きが変更されたリアバンパーなど細部が若干異なります。
インテリアは左ハンドル化以外にも、エアコンやパワーウィンドウなど操作系に記載されている標記やコーションなどは全て日本語から英語に変更されています。
ちなみにインパネセンターのアナログ時計は日本仕様と同じですが、木目パネルはセンターに金属加飾が無い専用品のようです。
パワートレインは日本仕様と同じ5リッターV型12気筒DOHCの「1GZ-FE」型に4速AT(初期モデルなので)が搭載されています。
しかし、エンジンルームを見ると左ハンドル化に合わせ、ブレーキマスターとバッテリーの位置は左右反転されているのが解ります(エンジン左右の樹脂カバーは展示車には未装着)。
また、最高出力280ps/最大トルク481Nmのスペックは不変ですが、欧州の法規に合わせた最適化が行なわれています。フットワークはエアサスを含めて変更はないようですが、タイヤは日本仕様よりもブロックの大きめな物が装着されていました(銘柄は不明)。
ちなみにトヨタコレクションの関係者によると「恐らく、アウトバーンを走った唯一のセンチュリーかもしれない」と話します。
このクルマの当時を知るのが、当時TMEで商品企画/市場調査を行なっていた木村隆之氏(現:マセラティジャパン代表取締役)です。
木村氏によると「当時商品担当だった私が1998年頃輸入しました。当時TME社長と相談をして、センチュリーの定番のブラック(神威・かむい)ではなくオシャレなグレー(鸞鳳・らんぽう)を選択しました」と語ってくれました。
2023年、3代目となる現行センチュリーに新たなモデルが追加されました。
セダンの枠を超えた新たなパッケージの採用のみならず、当初からグローバルモデルとして開発。
つまり、章一郎氏の「世界のショーファーカーにしたい」と言う想いは、四半世紀の時を経て具体化されたと言えるでしょう。そう考えると、この左ハンドルの2代目センチュリーは単なるレア車ではなく、とても大きな意味を持ったクルマと言えるでしょう。
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みんなのコメント
センチュリーのエンジンをチューンして
スープラに積むとかスモーキーはイカれてる