日産ジュークが、日本国内ではフルチェンジすることもなく生産終了――。
ジュークが誕生したのは今から10年前の2010年。6月に日本で販売が開始されたのを皮切りに、欧州や北米、中国などでも販売。
「技術の日産」結実の傑作セダン!! プリメーラの軌跡を辿る 【偉大な生産終了車】
全世界で100万台以上売り上げた、日産のコンパクトSUVだ。そんなジュークに今年9月、2代目モデルが誕生した。
しかし、欧州のみでの販売で日本国内には導入されず、どうやら国内のジュークは、たった1代でその歴史に幕を閉じることになりそうだ。
実は、今回のジューク以外にも、日産には一代で日本市場から消えたSUVが何台かある。
なぜ日産は、たった一代でそれらのSUVを消してしまったのだろうか。日産で新車開発のエンジニアをしていた筆者が考察する。
文:吉川賢一 、写真:日産、スバル
【画像ギャラリー】一代で生産終了した日産のSUV
ジューク(2010~2020年予定)
ジュークはそのデザインの特殊さが、当初の見込みに反して受け入れられ、デビュー当初大きく話題になった。
日産ジューク(2019年時点)
コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトボディ、そしてリーズナブルな価格で提供されたことに惹かれ、購入した方が多いようだ。
マイナーチェンジは何度かされ、延命されてきたのだが、ここにきて流石に設計が古くなった。
運転席周りのインテリアの造形や素材感、そして動性能(特に乗り心地やNVH)など、昨今の他メーカーの新型車とは比較するまでもなく、お話にならないレベルである。
しかし、11月に発売され大ヒットしているコンパクトSUV、ダイハツロッキー/トヨタライズを見ればわかるように、国内にコンパクトSUVの需要はある。
欧州で販売されている新型ジューク
欧州で販売されている2代目ジュークは、欧州を見据えたモデルチェンジをしてしまったために、国内で販売しないことを決めたのだろうが、日産の足元である日本国内を捨てた判断は、失敗だったと筆者は考えている。
ジュークの代わりに海外で販売されている日産のコンパクトSUVキックスが国内に導入されるが、それならそれで、ジュークの生産中止を発表する前にそれを用意して、10月末に開催された東京モーターショーで発表することもできた。
日産キックス(2020年モデル版)
せめてそうやって、日産は将来のユーザーの心を掴んでおくべきだった。
スカイラインクロスオーバー(2009~2016年)
スカイラインクロスオーバーはもともと、日産の高級車ブランドであるINFINITI(インフィニティ)のクロスオーバーSUVEX35として、2007年に誕生したクルマである。
スカイラインクロスオーバー(2009年日本販売時)
シャシーなどのコンポーネントはG35(日本名:スカイライン)と共用、3.5Lエンジンと7速ATで、FRと4WDを用意、G35のハンドリングと乗り心地の良さを持つ小型のプレミアムSUVと位置づけられたクルマだ。日本市場には2009年に登場した。
しかし、クロスオーバーSUVと銘打ってはいたが、荷室はとても狭く、また値段が高かった(420万円~)。
スカイラインクロスオーバー 荷室
さらにはモデル末期まで燃費の悪い3.5Lエンジン仕様しか存在しなかった。そのため、日本の顧客には受け入れられず、当然販売も伸びなかった。一代で終わらせたのは正解だったであろう。
せめて中国で出していた2.5リットルVQ25HR型エンジン仕様でもあればよかったのにと残念でならない。
デュアリス(2007~2014年、一世代で消滅)
2007年に誕生したデュアリス(海外名:キャシュカイ)は、ヨーロピアンテイストのある質実剛健としたデザイン、比較的小柄なボディ、優れたNVH、そしてしっとりした走りを実現していたクロスオーバーSUVであった。
デュアリス
デュアリス廃止は、日産の戦略的撤退だったと筆者は考えている。
兄弟車のエクストレイルとの顧客の食い合いになり台数を分割されるよりも、国内は前型から評価の高かったエクストレイルへ一本に絞ったほうが、メーカーとして販売台数増に貢献できる。
エクストレイル
2018年4WD SUV国内販売台数No.1
エクストレイルに販売の基軸をおいたおかげか、エクストレイルの国内販売はその後も順調で、2018年には4WD SUVの国内販売台数NO.1を達成している。
下のクラスにはジュークがあったことも、日産としては安心感があったのだろう。筆者は、この判断は正解だったと考える。
ラシーン(1994~2000年、一世代で消滅)
日本車としては珍しく、時間がたつほどに味の出るクロスオーバーSUVラシーン。
ラシーン
ボディに傷がついて錆が出たとしても、返ってその緩さがカッコよく見え、ラシーンは絶版から20年も経つが、絶版後に価値が落ちるどころか、上がるようなブランドとなった。
このようなブランドは、自動車メーカーとしては財産である。
このラシーンを含め、日産は過去にBe-1などパイクカーと呼ばれるクルマを何台か出しているが、現在は、そのどれもが販売終了となってしまっている。
Be-1
1990年前後にヒットしたパイクカーシリーズは、そのデザインやレトロな雰囲気によって、若者達を虜にしていた。総生産台数を限定するといった売り方も話題になった。
つい先日、スバルが555台限定で、WRX STI EJ20 Final Editionを発売し、応募が殺到していたが、
WRX STI EJ20 Final Edition
抽選で購入権利が取得できる。
当選結果の発表されており、当選倍率は驚愕の23.4倍だった。
このように、期間限定特別モデルとして売り切り販売するニッサンのパイクカーシリ―ズとして継続していたら、今でも通用していたのでは? と考える。
ボディステッカーのような小手先の変更では通用しないであろうが、このパイクカーシリーズの終了は失敗だったと筆者は考える。
ちなみに、2019年の現在でもラシーンを専門とした中古車店がある。
購入されるお客様は、このラシーンの持つシンプルなキャンバス感を、現代風のオシャレと解釈し、ライフスタイルに落とし込んでいるようで、シンプルにスチールホイールで乗るのが流行りだという。
日産はSUVを売るのがそれほど上手くないのでは?
日産はSUVに限らず、売るのが下手だと筆者は思っている。(※販売店は一切悪くない)。
ジュークのような突然変異のコンパクトSUVや、デュアリスの様に走りの質の高いSUV開発は得意でも、小まめなマイナーチェンジで商品力を磨きなおして、最期まで売るという姿勢が弱かったのは、非常に残念なところだ。
そのため他社車メーカーに付け込まれ、せっかく発掘した枠を取られていく事の繰り返しだ。
日産が手をかけて育てる行為をもっとしていたら、今とは違った状況が起きていたかもしれない。
【画像ギャラリー】一代で生産終了した日産のSUV
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