ウインカーが「飛び出す棒」だった時代も!
ヘッドライトやブレーキランプなどの灯火類にも進化の歴史はあって、たとえばヘッドライトは馬車に由来し、石油ランプを当初は使用していた。そのような灯火類のなかでも自動車らしい装備のひとつがウインカーだ。こちらは馬車の時代には当然付いていなくて、自動車が登場してから発明されて装着されるようになった。
採用車種はあくまで一部! クルマの「流れるウインカー」が流行しない理由
正確には自動車が登場してもしばらくはウインカーというのはなくて、理由はクルマが少なかったから。その後、クルマが増えてくると、手を出して方向を示すようになる。これは現在も自転車の乗り方などで解説されるし、自動車でも緊急時には手で示す必要も考えられることから、教習所などで習うことも多い。
手で示しているのでは間に合わなかったり、見にくかったりしたことから発明されたのが、ウインカーだ。ちなみにウインカーはイギリス英語で、海外でも通じなくはないが、英語では「ダイレクショナルインジケーター」や「ターンシグナル」のほうがよく使われる。
初期のウインカーは、現在のようなリレーを使用した点滅式ではなく、AピラーやBピラーなどに埋め込まれた棒が飛び出るタイプで、聞いたことがあるかもしれないが、アポロ式と呼ばれるものだった。ただ、戦後直後にはウインカーの装着が義務化されていて、この飛び出すタイプが採用されていた。
アポロというのは商標で、一般名詞としては矢羽式方向指示器と呼ばれるもの。当時あったアポロ工業がアメリカの製品をライランス生産して製造販売していたことから広くこう呼ばれるようになった。つまり正確には純正装着のものは矢羽式で、後付けの方向指示器のことをアポロ式と呼ぶ。矢羽式も進化していて、出るだけでなく、引っ込むのも電気式になったり、矢羽の中に電球を入れて、光るようにして夜間の視認性を上げたりもした。
その後、モータリゼーションの勃興で、いわゆる現在のような点滅式のウインカーが主流になり、1973年には矢羽式の装着は法律的にもできなくなってしまう。アポロ工業も消滅してしまい、過去のものとなっていく。
日産ブルーバードが流れるウインカーの先駆け!?
点滅式のウインカーはそのまま現在に至るのだが、仕組みとしては大きく進化していて、金属の板が電気式に動いて点滅させるバイメタル式から、現在はLEDにも対応して、作動が安定しているデジタル式へと移行している。ウインカーといえば、カチカチという音だが、バイメタル式は実際に金属の板が動くので自然に発せられていたが、デジタル式では出ないため、わざわざ別で付けている。
ウインカーのスタイルという点では、1968年に登場した日産ブルーバードクーペSSSに日本車では初めて採用(オプション)された流れるウインカーは、それまでにない新しいものとして話題になった。日産ではハミングテールと呼んでいたが、その後すぐに廃止されてしまう。
これは法規が改正され、ウインカーについてはすべてのランプが同時に点滅しなければダメなどが引っかかってしまったためだ。仕組み的にも超アナログで、伝達式にスイッチを切り替えていくことから複雑になってしまい、日産としても積極的ではなかったように思う。
ご存じのように、現在、流れるウインカーは復活していて、正式には「連鎖式点灯方向指示器」と呼ばれている。復活のきっかけは2014年の法改正で、これは装備については世界で統一しようという流れを受けたもの。統一すれば認証の手間などが省けて、輸出入が簡単になるというのが背景にある。
これをきっかけにアウディは早々に採用したA8を販売し始めたし、国産でも高級車を中心にして装着しているモデルが増えた。これはもちろん現在はデジタル化しているので作動も問題ない。
仕組み的には進化していても点滅して、周囲のクルマに動きをアピールするというのは昔も今も変わらないこと。自動運転技術が進んでもウインカーを出すタイミングの判断はかなり難しいだけに、当分、現在のスタイルは続きそうだ。
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みんなのコメント
当時を知っているから今の流れるウィンカー車を喜んで乗っているのを見るとこっちがこっ恥ずかしくなる