マツダ最小SUV「CX-3」に安価な新モデル登場で復調の兆し!?
当サイトで筆者が執筆した「マツダSUVに熾烈な生存競争 違い出せるか CX-30、3、5の個性と苦悩」という記事に対して、マツダ上層部から、少なからず反響をいただいた。
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そこで、本稿ではテーマをCX-3に絞って、追加された1.5Lガソリン車に試乗した印象も交えながら、同車の歩んだ軌跡と現状、そして次期モデルが取るべき方向性などを考えていきたい。
CX-3は、2019年の年間販売台数が9889台となるなど、注目が薄れていることは否めないが、その打開策として2020年5月に、従来のモデルに対して価格を大幅に下げた1.5Lガソリンエンジン車の追加をメインとした商品改良を行い、復調の兆しも見えている。
文:永田恵一、写真:マツダ、平野学、永田恵一
【画像ギャラリー】2018年に大幅改良したマツダ CX-3をみる
先見の明あったCX-3 登場時の評価は?
CX-3 XD Touring L Package(2015年初登場時/色:メテオグレーマイカ)
CX-3は、マツダ2(旧車名:デミオ)をベースとしたクロスオーバーとして2015年2月に登場。
リアシートやラゲッジスペースといった広さはそれほど重視せず、スタイルや雰囲気に注力したモデルで、最近注目が高まっているクーペSUVのジャンルに早くから注目した1台だった。
登場時のエンジンは、当時のデミオでデビューした1.5Lディーゼルターボのみという思い切った設定で、登場時の月間販売目標台数は3000台と公表された。
登場時のCX-3は、スタイルやクオリティの高いインテリアといった見た目はコンセプト通り魅力的だった。
黒革仕様の内装もあり、上品かつスタイリッシュな車内になっている(XD Touring L Packageの車内)
しかし、乗り心地がいまひとつな点や常用域では力強いものの、登り坂が長く続く高速道路などではパワー不足を感じる1.5Lディーゼルエンジンなど、全体的に未成熟なところも目に付いた。
価格に関しても、グレードによっては車格が上のCX-5と意外に変わらない(最上級のCX-3とベーシックなCX-5といったケース)もあり、「長期的な販売はどうなのだろう」と感じた。
その後、CX-3は2017年の2Lガソリンエンジン追加や2018年におこなったディーゼル車の1.8Lへの排気量アップが目玉となったビッグマイナーチェンジなど、毎年のように改良を行い、現在に至る。
CX-3の販売が衰退した理由
登場時からのCX-3の販売台数は以下の通りだ。
■マツダ CX-3 年間販売台数
2015年/3万20台(※2-12月)
2016年/1万9872台
2017年/1万3108台
2018年/1万7036台
2019年/9889台
2020年/3292台(※1-7月)
このように2018年はビッグマイナーチェンジで回復したが、低迷が続いている。その背景としては以下のような理由が考えられる。
【1】割り切ったコンセプトで売りやすいクルマではなかった
前述したようにCX-3は広さに注力していない、スタイルや雰囲気重視のクロスオーバーである。そのため「売りやすさ」や「万人向けか」といった観点では初めから難しいところがあったように思う。
【2】ライバル車の台頭
2016年までCX-3と比較されそうな車格の近いSUV/クロスオーバーは、ホンダ ヴェゼルとスバル XVくらいであり、CX-3にも居場所があった。
しかし、SUVブームもあり、2016年12月にCX-3より半車格くらい上でキャラクターの近いC-HRが登場。CX-3より小型なSUVでは2019年11月に、クルマのデキはともかく、CX-3より安くて広いトヨタ ライズ/ダイハツ ロッキーが登場。
ライズは2019年11月発売から人気を博し、販売台数で首位になった
発売から時間が経ったことに加え、個性の強いCX-3の販売が伸び悩むのもやむを得ないだろう。
1.5ガソリン車こそ「ベストなCX-3」
本稿執筆のために借用したCX-3の1.5ガソリン車は、上級の「15Sツーリング(FF)」で価格は199万1000円だ。
CX-3 15Sツーリング(FF)価格:199万1000円
久々にCX-3に乗ると、旧デミオオーナーだった筆者にとっては、クオリティの高いインテリアが懐かしくもあり、好印象。
運転すると「価格も含め今まででベストなCX-3」という印象が残った。具体的に見ていくと、まず動力性能は1210kgの車重に111馬力ということもあり、ごく普通である。
フル乗車の際などはパワー不足を感じるケースもあるかもしれないが、アクセルを深く踏むと耳障りではないエンジン音を伴いながら活発に回転を上げるので、ストレスを感じることはなさそうだ。
また、CX-3は改良により少しずつ乗り心地も改善されているものの、今まで18インチタイヤ装着車以外のCX-3に乗った記憶がなく、筆者は良い印象がなかった。
それが1.5ガソリン車は、タイヤを16インチにしたことがプラス要素となっているようで、乗り心地に大きな不満はないというレベルに改善された。
タイヤのサイズが、18インチから16インチになったことで、乗り心地が改善された
不満を挙げるなら、2Lガソリン車や1.8Lディーゼルターボ車との差別化や価格のためという要因もありそうだが、先行者追従型のアダプティブクルーズコントロールや操舵支援といった運転支援システムの設定がないこと。
これに関しては、先行者追従機能のない通常のクルーズコントロールだけでも装備されれば、なお良かったと思う。
また、燃費はWLTCモードの17.0km/Lに対し、流れのいい幹線道路と首都高を中心に300kmほど走って14km/L台半ばだった。総合するとCX-3の1.5Lガソリンは全体的に普通という印象だ。
CX-3の1.5Lガソリン車は価格が約200万円と、競合SUVよりリーズナブル。購入の決め手にもなるだろう
しかし、1.5L級ガソリンエンジン搭載の競合SUVよりも安い約200万円の価格なら、2人乗車までを中心としたシティユースに使われることが多いであろうCX-3のキャラクターも考えれば、CX-3が気になる人には大きな後押しとなる存在なのは間違いないだろう。
それだけにCX-3の販売台数は今年6月/1142台、7月/650台と新型コロナウイルス禍の影響も考えれば復調傾向で、販売比率でも1.5Lガソリンは現在全体の約80%を占めているという(ちなみに2Lガソリンは約9%、1.8Lディーゼルターボは約11%だ)。
1.5Lガソリンの登場が「あと1年早ければ」と感じることである。
次期CX-3が進むべき道は?
現行モデルでの絶版も噂されたCX-3だが、どうやら次期モデルもあるようだ。今後の進むべき道としては現行モデルが古くなっていることもあり、「次期モデルをどうするか?」だろう。
この点に関して筆者の勝手な意見を述べるなら、コンパクトSUVにおいて、車内が広いモデルは、ホンダ ヴェゼルや日産 キックス、登場の間近のトヨタ ヤリスクロスがある。
2020年9月発売予定のヤリスクロス
マツダは決して大きなメーカーではなく、際立った個性も欲しいだけに前述した3台に追従する必要はなく、直接的なライバルが少ない現行モデルのコンセプトを継続するのもいいと思う。その場合には、華のあるコンパクトSUVになってほしい。
具体的にはレンジローバーイヴォーグを小さくしたようなクルマで、標準モデルに加えターボエンジン搭載のスポーツモデル(ガソリンでも2.2Lディーゼルでも良い)や、先代イヴォーグのような3ドアやオープンモデルがあったら嬉しい。
価格も、標準モデルはリーズナブルなところとし、その替わりスペシャルなモデルは魅力相応の高い価格でもいい。勝手な意見ながら、こんなクルマがあったらマツダに対する注目も増すように思うのだが、いかがだろうか。
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