■共同開発車の日産「デイズ」との違いはいかに?
いま、軽自動車市場で注目されているのが、2019年3月28日に発売された三菱の新型軽自動車「eKクロス」です。日産と共同開発したモデルで、ボディの基本部分は日産「デイズ」と同じですが、「eKクロス」のフロントマスクは三菱車の統一されたデザインに仕上げ、マイナーチェンジを受けた「デリカD:5」に良く似ています。
「これは格好いい?」 三菱の新型軽自動車「eKワゴン」「eKクロス」の予約開始
軽自動車のボディサイズは、全車がほぼ共通です。全長3395mmと全幅1475mmは、各車ともに規格枠いっぱいの寸法で差が付きません。全高は車種によって異なりますが、今は1600mm以上の背の高いクルマが、新車として販売される軽乗用車の75%を占めています。
このように軽自動車は、全高まで含めてサイズが共通化され、なおかつライバル同士が車内の広さを競っているため、どの車種でも外観が同じように見えてしまい、個性を発揮させにくいのが現状です。
同じでeKシリーズでも、ベーシックな「eKワゴン」は、「デイズ」とフロントグリルの内側が違う程度ですが、「eKクロス」は独自のデザインです。
三菱の販売店では、「デザインが同じだと、多くのお客様が日産デイズを選びます。しかし新型はデイズと明らかに形状が異なるので、eKクロスを積極的に選んでいただけます。これはとても良いことです」とコメントしています。
メーカーの開発者は、「eKクロスでは、日産の開発したボディに、三菱がデザインしたフロントマスクを組み合わせました。この開発は大変でしたが、三菱の個性を演出することができました」と述べています。
新型「eKクロス」のボディ形状は、運転席に座ると、ボンネットがわずかに見えて車幅が分かりやすいです。一方で、サイドウインドーの下端を後方で持ち上げたため、斜め後ろは少し見にくくなりました。
インパネは、設計の新しい軽自動車らしく上質です。とくにオプションのプレミアムインテリアパッケージを装着すると、シート生地が合成皮革&ファブリックに上級化され、インパネを含めて本物のステッチ(縫い目)が施されます。
このオプション価格は、5万4000円となり「デイズ」のプレミアムコンビネーションインテリアの3万2400円よりも高いですが、シート色はタンで生地も柔らかく、デイズ以上の質感が得られます。車内の雰囲気は、コンパクトカーを飛び超えてミドルサイズ並みといえます。
シートの座り心地は、前席は快適で、サイズに余裕があり、背中から腰、さらに大腿部をしっかりと支えるので、長距離ドライブでも疲れにくいです。
後席の座り心地は良くなく、床と座面の間隔が不足して、足を前方に投げ出す座り方になります。背もたれと座面の柔軟性も乏しく、座り心地のボリューム感も不足しています。
ただし、プレミアムインテリアパッケージは少し快適です。前述のようにシート生地が柔らかく、伸縮性も優れているため、体の受け止め方が優しく感じます。大人4名で乗車する機会の多いユーザーは、シート生地の違いを確認して選ぶと良いでしょう。
後席のスペースは十分に広いです。身長170cmの大人4名が乗車して、後席に座る同乗者の膝先には握りコブシ3つ少々、頭上には握りコブシ1つ少々が収まります。Lサイズセダンは同じ測り方をして後席の膝先空間が握りコブシ2つ半程度なので、eKクロスの前後方向の足元空間はとても広いです。
後席と荷室のアレンジは、ライバル車に比べて単純です。後席の前後スライドは左右分割式ではなく一体式なので、3名乗車で荷物をたくさん積んだり、後席の右側に大人、左側に子供が座る時などの使い勝手は不利になります。
また、後席の背もたれを前側に倒すと、座面も連動して下がる機能も備わらないので、広げた荷室の床に段差ができます。スズキの「ワゴンR」は後席のスライドと座面の昇降機能が備わり、両方ともに左右分割式ですから、これに比べると「eKクロス」は荷室の使い勝手が劣ります。
収納設備は豊富です。助手席の前側にはボックスティッシュが収まる引き出しがあり、インパネの中央にも同じく引き出し式のトレイとカップホルダーが備わります。助手席には車検証を収めるケースがあり、グローブボックスをフルに使えるようにしました。
■走行性能はいかに?
エンジンはノーマルタイプとターボがあり、「eKクロス」はマイルドハイブリッドの機能を備えます。小さなモーターとリチウムイオン電池が搭載され、減速時の発電、アイドリングストップ後の再始動、エンジン駆動の支援を行います。
モーターの駆動力を感じる機会はほとんどありませんが、アイドリングストップの再始動音は静かです。耳障りな金属音を発生させません。
ノーマルエンジンの動力性能は、「eKワゴン」、マイルドハイブリッドの「eKクロス」ともに軽自動車の平均水準ですが、通常の走行に大きく影響する最大トルクの6.1kg-mは、実用域の3600回転で発生します。
そのためにアクセル操作に対する反応が素早く、ノーマルエンジンとしては動力性能が高く感じます。4500回転付近からの速度上昇も滑らかです。
ノイズと振動は小さく、回転感覚が上質なことも特徴です。巡航中にエンジン回転が1500回転付近まで下がり、そこから緩くアクセルペダルを踏み増すと、「eKワゴン」のノーマルエンジンでは少しゴロゴロした振動を感じます。
これがマイルドハイブリッドの「eKクロス」では、モーター駆動によって巧みに抑えています。大きな差はありませんが、「eKクロス」は走りが上質で実用燃費も向上させました。
ターボエンジンはパワフルで、最大トルクは10.2kg-mに達します。ノーマルエンジンの1.7倍で、峠道や高速道路の登り坂も力強く走ります。最大トルクの発生は2400回転から4000回転ですから、軽自動車の低いギヤ比では、走行中は常にターボが作動しています。
ただしターボエンジン搭載車で、アクセルペダルを少しずつ踏み増すと、動力性能が踏み込み量以上に高まる印象があります。ややターボのクセが強いです。
またノーマルエンジンに比べるとノイズが少しザワザワしており、2000回転から2500回転では音質が粗く感じます。性能は高いですが、走りの質はいま一歩です。
したがって一般的には、ノーマルエンジンを推奨します。自宅付近に長い登り坂が多く、ノーマルエンジンではパワー不足を感じる時に、ターボも検討しましょう。
走行安定性は背の高い軽自動車では優れた部類に入ります。カーブに進入したり、車線変更を開始した時には、反応の鈍さを感じません。車両が自然な感覚で進行方向を変えます。
そして後輪の接地感が高いので、不安定な挙動に陥りにくいです。ボディの左右方向の傾きが大きく感じることはありますが、不安定な挙動にはなりません。
■乗り心地と推奨グレード
乗り心地は少し硬めですが、バタバタした粗さは抑えているようです。14インチタイヤ装着車は、路上のデコボコを上手に吸収しますが、15インチタイヤは、細かな上下方向の振動を伝えやすくなっています。
段差を乗り越えた時の突き上げ感は、14/15インチともに小さいですが、細かな振動の吸収性は14インチが勝ります。その代わりに15インチタイヤは、操舵感が少し機敏で、一長一短といえるでしょう。
最小回転半径は14インチが4.5m、15インチは4.8mと大回りです。乗り心地の違いも考えると、タイヤサイズは14インチで十分だと思いますが、「eKクロス」の14インチを履くMグレードにはアルミホイールが用意されません。スチールホイールのみとなり、車間距離を自動制御できるアダプティブクルーズコントロールなどのオプション設定も、Mグレードは対象外でGグレードとTグレードに限られます。
今後は、Mグレードに14インチのアルミホイールやアダプティブクルーズコントロールをオプション設定するか、あるいは中級のGグレードに標準装着される15インチアルミホイールを14インチに下げて、オプションで15インチに変更できると良いでしょう。
なお、日産「デイズハイウェイスター」のXグレードには、14インチアルミホイールが標準装着され、15インチはオプションとなっています。
それでも現状で買い得なのは、15インチアルミホイールを備えた「eKクロス Gグレード(155万5200円)」です。このグレードに、アダプティブクルーズコントロールなどを含んだ先進快適パッケージ(7万0200円)、前述のプレミアムインテリアパッケージ(5万4000円)をオプション装着するのが良いでしょう。
新型「eKクロス」は、後席の座り心地とシートアレンジがいま一歩ですが、前席の居住性、内装の質、動力性能、安定性、安全装備、運転支援機能などは、ライバル車と比べても優れた部類に入ります。選ぶ価値の高い軽自動車となりました。
【了】
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