もくじ
どんなクルマ?
ー 何をもって「世界最速」なのか
ー 「世界最速」のために、何をした?
どんな感じ?
ー SUVにできないことができる
ー 乗り心地は要検証 内装も敵に及ばず
「買い」か?
ー ステルヴィオQV「もっとも価値ある」
スペック
ー アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのスペック
どんなクルマ?
何をもって「世界最速」なのか
アルファ・ロメオによれば、ステルヴィオ・クアドリフォリオは市販車で最速のSUVだそうだ。
しかしこれは怪しい言い回しだ。最速の解釈にはいろいろあるからだ。そもそも、510psのステルヴィオの0-100km/h加速は3.8秒だが、これを上回るSUVはいくつかあるし、283km/hの最高速度にケチをつけるSUVだって複数存在する。
アルファ・ロメオが大胆にも最速だと主張するのは、ステルヴィオQVがニュルブルクリングを7分51秒7という驚くべきタイムで走り切ったからだろう。SUV最速記録である。
走りに振ったスポーツカーでも北コースで7分50秒台のラップタイムを出すようになったのはそんなに昔のことではない。たとえ、そんなラップタイムなんて耳にタコができているとしても、背の高い4×4がニュルを8分以下で走り切るというのはすごいことに違いない。
「世界最速」のために、何をした?
あの素晴らしいジュリア・クアドリフォリオと同じチームにより設計/開発されたこの高性能ステルヴィオは、正真正銘スポーツカーのハードウエアをふんだんに使っている。
2.9ℓのツインターボV6と8速オートマティック・ギアボックスはジュリアQVと同じものを再チューンして使っており、パワーの伝達は「Q4」四輪駆動システムである。
通常の走行ではトルクは100%リアに伝達され、スリップが発生した時だけフロントにトルクが伝わるが、その場合でもフロントへのトルク配分は50%を超えない。
リア・デフにはクラッチパックが1対組み込まれており、リア両輪のトルク配分を司る。このアクティブ・トルク・ベクタリングによって走りはさらに俊敏になるとアルファは言っている。フロント・サスペンションはダブル・ウイッシュボーン、リアはマルチリンクだ。ともにアダプティブ・ダンパーを備える。
重量配分を改善するため、エンジンはほとんどの部分がフロント・アクスルより後方に搭載されており、軽量化のためにカーボンファイバーとアルミニウム製のパネルが使われている。それでもステルヴィオ・クアドリフォリオの重量は1830kgあり、羽のように軽いわけではない。
ドライブ・モードは多彩で、エコ・モードでは6気筒のうち3気筒を殺して燃料消費を減らしている(ノーマル・モードでも3気筒を止めることはある)。ダイナミック・モードではスロットル・レスポンスは鋭くなり、ギアシフトの頻度は減り、ダンパーは硬くなってステアリングは重くなる。
レース・モードではすべてがもう1段ハードになり、スタビリティ・コントロールの利きは弱まる。レース・モードの途中でもダンパーを中間のセッティングに戻すこともできる。
どんな感じ?
SUVにできないことができる
ストレートではものすごく速く、コーナーでもしっかりと地面をグリップし続ける非常にパワフルなSUVはいくつかある。しかし純粋にドライビングを楽しめるSUVは多くない。ステルヴィオQVは間違いなく後者だ。
背が高く、重量も軽くはなく、重心高も高いため、必然的にジュリアQVとは程遠いものになりそうだが、実際にはボディ・コントロールの精密さは驚くべきレベルであり、コーナリング・バランスも理想的なニュートラルだ。
ステアリングはダイレクトかつクイックで情報量も豊富、ターン・インでのフロントの入りも適当だ。攻めていくとプッシュ・アンダーが顔を出すが、フロントのグリップは十分なので、ワインディング・ロードでもスポーツカー同様のペースで走りることができる。
四輪駆動システムはすべてのパワーと61.2kg-mのトルクを効率よく地面に伝える。コーナーで不用意にアクセルを踏み込めばテールは少し流れるし、カーブの立ち上がりでスロットルを開けるのが早すぎればアンダーステアーとなるが、ほんの少しの操作で四輪は完全にコントロールを回復し、全く無駄なくエイペックスを脱出することができる。
ジュリアQVのようにオン・スロットルでクルマをコントロールする楽しみはないが、トルク・ベクタリングのおかげで高い着座位置に似合わない積極的な運転が可能であり、アジリティ・レベルも高い。
安定性の高いシャシーはコーナリングの途中でちょっとラインを変更することも許容する。たいていのSUVでは曲がり始めたら最後、途中でラインを変更するなんてことはできないのだが。
乗り心地は要検証 内装も敵に及ばず
ステルヴィオQVの乗り心地は、われわれが試乗を行ったアラブ首長国連邦の鏡のような道路ではとても落ち着いていたが、シャシー・エンジニアは乗り心地を犠牲にする硬いアンチロール・バーや強いリバウンド・ダンパーに頼りがちであることを考えると、英国の厳しいB級道路での試乗を待って評価する必要があるだろう。ステルヴィオの乗り心地は姉妹車ジュリアと同様、でこぼこ道でも驚くほど滑らかだとアルファのエンジニアは保証するのだが。
ジュリアQVの場合と同様、アルファの2.9ℓV6ターボはシャープでレスポンスに富み、吹け上がりも鋭い高性能ユニットで、ターボ・エンジンらしからぬ挑発的なサウンドを発する。
一方、オートマティック・ギアの変速も十分に速い。レース・モードではツインクラッチ・ユニットのようにきびきびしているし、低速ではスムースで洗練されている。
ジュリアQVで少しライバルに劣るところはインテリアであるが、残念ながらステルヴィオQVでも同様だ。プラスティック類はさわると硬い感じで、スイッチ類は見た目も触れた感じもプレミアム感がなくごく普通だ。それで全く問題はないのだが。
しかしシート・ポジションは理想的で、オプションのカーボンファイバー・シェルのスポーツ・シートはサイド・サポートも十分である。
「買い」か?
ステルヴィオQV「もっとも価値ある」
ステルヴィオQVはドライブ・コースでの運転が純粋に楽しいクルマである。おそらく市販車中もっとも所有する価値のある高性能SUVだろう。
ただし、ドライビングが楽しいクルマをお探しなら、スポーツ・セダンのほうがずっといい。
ジュリアQVはもっと魅力的だし、ルックスもいいし、サーキット走行にも使える。
けれど、もしあなたがハッチバックのトランクと高いドライビング・ポジションを必要とするなら、ステルヴィオQVはとても素晴らしい選択肢だ。
アルファ・ロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオのスペック
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