Aクラスとどのくらいサイズが違う?
車名からすれば“Aクラスの上級設定車”のようにも取れるが、Aクラス、Bクラスは方向性が異なる同車格モデルと考えていい。もっと簡単に言えば、セダンとワゴンの違いのようなものだ。
【画像】マイチェン版Bクラス・Aクラス デザイン/内装【細部まで比べる】 全84枚
全長は、AクラスHB(ハッチバック)よりも10mm短い4430mm。全幅は5mm狭まるが、平面寸法はほとんど同じである。
両車の車両寸法の主な差異は全高であり、Bクラスは130mm高い。カタログ値では最低地上高が10mm異なるが、ボンネット高やベルトライン高もほぼ同じで、“屋根を13cmほど高めたAクラスHB”が「Bクラス」と考えていい。
何のためか? 言うまでもなく「キャビンスペースの拡大」である。
4.4m強の全長、2.7m強のホイールベースと5.0mの最小回転半径にこだわらなければ、同等以上のキャビンスペースを持つクルマもある。しかし、タウンユースに使いやすいサイズを維持して、ファーストカー用途に十分なキャビン実用性を求めたところがBクラスの存在意義と言える。
現在の日本向けBクラスは、1.3Lターボ搭載の「B 180」、2Lディーゼルの「B 200 d」の2モデルで、いずれも駆動方式はFWDのみ。
試乗したのは、パワートレイン設定では上位に位置する「B 200 d」だ。
頭上だけじゃない、匠なパッケージ
ホイールベースも、キャビン長も、AクラスHBと同じ。当然、室内有効長も計測誤差の範囲。
Bクラスの室内のゆとりは室内高がもたらすヘッドルームだけかというと、そうではない。
前席は座面高を高く、アップライトな着座姿勢が取りやすく、その分だけシートスライド位置は前方になり、それは後席のレッグスペースの拡大に繋がる。
もちろん、シートリフターを用いたりすればAクラスでも同様な着座姿勢を採れるが、ヘッドルームが減少し、寸法的にも視角的にも圧迫感が強く、アンバランスな印象を受けてしまう。
アップライトなポジションに上下開口の広いウインドウグラフィック。高いアイポイントと広々ウインドウは開放感や見晴らしを高める。
さらには前席バックレスト上の空間も多少ながら拡がるので前・後席の空間の共有感も高まり、コミュニケーションも取りやすい。
4名乗車で和気藹々としたドライブが「狙い」なのがよく分かるキャビン設計だ。
荷室もチェック 車重1.6tの味
荷室の平面寸法は、見た目ではAクラスHBと大差ない。後席バックレスト高で制限した荷室高も同等。
とは言え、荷室奥行きも荷室高もコンパクトカーではトップレベル。
さらに後席収納で高い天井を活かせば大物積みにも対応できる。掃き出し段差なしの積み降ろししやすい床面ボード設定や、凹凸の少ない荷室形状など積載性でも優等生だ。
「B 200 d」の車重はフル装備ならほぼ1.6t。全長4.5m弱のカローラ・ツーリング(ワゴン)のガソリンFWD車で最も車重の重いモデルで1.3tである。
コンパクトカーでは最重量級なのだが、動力性能で車重のハンデを感じることはなかった。むしろ、重みで微小な負荷変動を潰していくような感覚が動力性能面での車格感を高めていた。
それを可能としているのが、ディーゼルならではの大トルク。
ポイントは「ゆとり」と「余裕」
ガソリンエンジンの3L級に相当する32.6kg-mの最大トルクを1400~3200rpmで発生。この大トルクを細かく繋いで回転数を抑えながら悠々としたドライバビリティを発揮する。
8速DCTを利して、1500~2500rpmで登坂・高速追い越しも含めた一般走行で必要とする加速力を賄う。変速制御もエンジンの特性を引き出すべく設定されているので、多少活発に運転しても3000rpm以上を使うことも少ない。
エンジンフィールもエンジン騒音も穏やかであり、最高出力から想像する以上にゆとりが感じられる動力性能だ。
俊敏な反応、回す程に力強くなる伸びやかさなどのスポーティな味わいを求めると魅力的とは言い難いが、長駆レジャー用途に適したパワートレインである。
良質な実用性能と信頼を生み出す余裕が“Bクラスのキャラ”にとてもよく似合っていた。
マイチェン型の乗り心地を分析
Bクラスがファミリー&レジャー用途に向けたモデルなのを実感する第1のポイントがキャビン。そして第2のポイントがフットワークだ。
Aクラスにも言えることだが、登場時の現行型に比べるとストロークのしなやかさが増しているが、Bクラスではとくにその印象が強い。重量・ドラポジも影響しているのだろうが、穏やかな乗り心地と確かな操安性が和みのドライブをもたらす。
ロール量は、実際にも体感的に大きめである。それが不安感に繋がらないのはサス設計の妙味。ロール開始時には抵抗感少なく、深くなれば粘り、揺れ返しも抑えられている。
旋回力の立ち上がりが穏やかで、ロールによる往なしが巧み。コーナーに合わせて舵を入れていけば自然にラインに乗っていく。御しやすく安心感が高い。
また、旋回力の急激な立ち上がり、つまり唐突な横Gの変化は山岳路においては同乗者にとって不快だが、Bクラスは“コーナリング時の車体挙動とハンドリングの面からの快適性”を高めたとも言える。
この辺りがうまくコントロールできていないと、補正運転で同乗者のストレスを減らさなければならず、クルマ側で上手にこなしてくれるのは大変有り難い。
Bクラスの美点とは
「プレミアムを求めて!」というとちょっと違っているような気もする。
インパネ周りのデザイン機能は他のメルセデス車との共通点が多く、シートや内装の設えもクラス最上の出来。
車載ITには最新MBUXを採用しているし、安全&運転支援機能もアップデートされている。走りの質感も一層高まっている。
コンパクトカーで、最もプレミアム性の高いモデルの一車なのは間違いない。
ただ、「B 200 d」の最大の美点は“同乗者と一緒に心地よいドライブ”を最終目的としていること。すべてのベクトルがそこに向いていると言っても過言ではない。
しかも外連味がない。逆に外に向かって発信するプレミアム性が稀釈されているくらいで、その潔さも好感が持てる。
「B 200 d」の価格は573万円から。売れセンのAMGラインパッケージを装着すれば600万円を簡単に超えてしまう。
ファミリー&レジャー用途の実用性にのみ注目すれば割高にも思えるが、実用性の中にメルセデス車らしい質感・信頼感を織り込んでいるのが巧み。メルセデス車では地味なタイプだが、使って操って納得の価格設定だ。
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