2024年3月15日、日産自動車株式会社(以下、日産)と本田技研工業(以下、ホンダ)は、自動車の電動化と知能化に関する分野にける協業を検討していくことを発表しました。バリエーションでも販売比率でも、世界の主要市場で急加速する「EVシフト」への早急な対応が求められていることは確か。果たしてこの異例のコラボがもたらす「相乗効果」は、どこまで素早く、着実な実効性が期待できるのでしょうか。
戦略的パートナーシップで世界を追従
今回の発表の背景には、グローバルで急速に進む電動化や自動運転、コネクテッドといったCASE領域における新興メーカーの相次ぐ登場と、主要市場における台頭に対する危機感があるようです。
●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか
わかりやすいところでは、主要な自動車マーケットにおける中国BYDの躍進ぶりに注目が集まっていますが、それに限りません。BEVだけでなくPHEVも含めて世界の市場では、日本では聞いたことのない車種が多彩なブランドから販売され、人気を博している様子です。
欧米市場だけでなく日本メーカー的にはかなり重要なエリアであるタイ市場などにおいても、電動化シフトの濃度が急速に高まっています。政府による戦略的な支援を受けるその勢いは、日本の電動化政策・戦略自体がすでに「ガラパゴス化」し始めているんじゃないだろうか、と心配になってしまうほどです。
実際、今回の覚書締結に当たって、ホンダと日産は「2030年に(自動車メーカーとして)いいポジションにいられるか?」「業界のスピード感」を強く意識していることを明言しています。
だからこそ両社が手を取り合うことによって、カーボンニュートラルや交通事故ゼロに向けた新技術など、次世代の自動車につながる技術開発への取り組みをさらに戦略的に進めたい、ということになるのでしょう。
「Honda 0」の開発には、何か影響がある?
現段階ではあくまで「戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結」ということで、具体的にどのような部分において協業するかはこれからの検討課題。おおむね、開発プロセスにおける速度感とコスト観、ふたつの側面におけるさらなる高効率化を目指すのではないでしょうか。
ちなみに要素的な取り組みとしては、自動車の車載ソフトウェアプラットフォーム、バッテリーEV(BEV)のコアコンポーネント、商品の相互補完などの検討を進めていくことになっています。
モノづくりの哲学に関して言えばそれぞれに一家言あるメーカーだけに、単なるスケールメリットといった部分に限らずトヨタ連合とは違う意味での魅力が生まれることに、期待したいところです。
一方で、すでに明らかにされている各々の未来戦略とのすり合わせをどう進めていくのか、がやはり気になるところ。
たとえばホンダは年初に、米国ネバダ州ラスベガス市で開催された「CES 2024」において、次世代EV戦略の核となる新グローバルEV「Honda 0シリーズ」を発表したばかり。その開発にあたり、「これからの時代にHondaが創りたいEVとは何か」を原点から見つめ直している、と強調しています。
日産も2021年に発表した2030年までの長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」の中で、高いエネルギー密度を実現した全固体電池の実用化を目指すと宣言。コンポーネント化によって小型・軽量化されたパワートレーンを組み合わせた、新たな電動化モデルのパッケージングの研究・開発を進めています。
それぞれの独自性をキープしながら、どんな「果実」が育まれるのか・・・発表会見の中では、「現場レベルで妥協点を探っていく」という説明があったようですが、これからの展開に対する興味は尽きません。
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