大ヒットを飛ばしたホンダ車を振り返る
キラキラネームならぬ、ホンダ車がキラキラだった時代。コトバの用法に無理があるのはお許しいただくとして、要するにどのメーカーにも振り返ったときに勢いがあり、いかにも脂の乗ったクルマばかりがズラッと揃う“黄金期”が必ずあり、ホンダの市販車にもそういう時代があった……ということである。
まさに「走るラブホ」だった「S-MX」! メーカー自ら「恋愛仕様」と謳う「究極の車中泊カー」だった
時代でいうと1980年代。この時代のホンダ車は、出てくるクルマ出てくるクルマがどれも斬新で、ハッとさせられた。まず、どんな車種があったか時系列で挙げてみると、
・シティ(初代・1981年)・プレリュード(2代目・1982年)・シビック(3代目・1983年)・バラードスポーツCR−X(1983年)・クイントインテグラ(初代1995年)・アコード(3代目・1985年)・レジェンド(初代1985年)
といったところ。もう少し視野を広げれば、
・コンチェルト(1988年)・アコードインスパイア/ビガー(1989年)
なども見逃せない。
RV系の車種の充実を図った90年代
ご存知のとおりホンダは、1990年代に入ると1994年のオデッセイを皮切りに、CR-V、ステップワゴン、S-MXなど一連の“クリエイティブムーバー”を発売。大ヒットを飛ばし、以降ミニバンやRV系の車種の充実を図った。
それもムーブメントを作ったという意味ではキラキラだったことは確かだった。だがその反動と、ユーザーがミニバン、SUVへとドッと流れたこともあり、それまでも本流だった車種の勢いが軒並みトーンダウンしてしまったのだった。 ちなみにRV(SUV)がブームになった時代に、ホンダは他メーカーのクルマをOEMで用意した。クロスロード(=ランドローバー・ディスカバリー)、ホライゾン(=いすゞ・ビッグホーン)、チェロキー(=同)などがそう。SUV系のホンダのオリジナル車はその後に続々と登場したが、今から思えば「そういう時期もあったよなぁ」と感慨深い。
遊び心にも溢れていたホンダ・シティ
1980年代のキラキラなホンダ車に話を戻すと、マーケティング用語でいうと“提案型商品”だったところが特徴のひとつ。典型的だったのは初代シティで、言ってみればコンパクトなベーシックカーだったが、背の高いユニークなスタイルで、マンハッタンルーフ、ターボ、ターボII(ブルドッグ)、カブリオレ(ソフトトップの設計はピニンファリーナ、ボディ色は12色も設定された)といった、思わず乗りたい! と思わせるバリエーションの追加は、その都度ユーザーの気をソソるものだった。 それと初代では乾燥重量42kgの2輪のモトコンポを用意し、トランクにすっぽりと収められるようにするなど、遊び心にも溢れていた。“いかにもホンダらしい”と当時よく言われたクルマの代表といったモデルだった。
実用車からスポーツモデルもあったホンダ・シビック
もう1台、シビックも忘れることはできない。サッチモ(ルイ・アームストロング)の歌と渋い映像のCMが記憶に残っている方も多いと思うが、3代目のこのワンダー・シビックは、エポックメイキングだった初代、2代目とは文脈が違う、実用車だがスマートに乗りこなせるところがポイントだった。 弾丸フォルムの3ドア、クリーンなセダン(バラードもあった)、個性的な5ドアとデザインも素晴らしかった。1984年には1.6LのDOHCを搭載した高性能モデルのSiも登場させている。
また3代目シビックのスポーツクーペ版として同時に登場した初代バラードスポーツCR−Xは、2200mmのショートホイールベースのFFライトウエイトスポーツカー。走りを愉しむファンから注目を浴びたモデルだった。
日本車離れしたスタイリングのホンダ・アコード
それと3代目アコードも印象深い。この原稿で取り上げた車種は、いすれも登場時に筆者は試乗しているが、リトラクタブルライトのセダンとエアロデッキは、感銘を覚えた1台だ。というのも2600mmのホイールベースによる、おっとりとした乗り味が当時としては極上のものだったから。 落ち着いたデザインのインパネをはじめとした内装の心地よさ、日本車離れしたスタイリングなども実車を見て感動した次第。エレガントさでは後継の4代目(とくにUSワゴン)もそうだったが、その後のアコードは、次第に存在感が薄れていったように感じたこともあり、リトラのアコードは歴代最高のアコードだと今でも思える。
搭載するV6エンジンが静かすぎたレジェンド
輝いていた時代のホンダ車としては、ほかにプレリュード、初代クイント・インテグラも外すわけにはいかないが、少し前に記事に取り上げたばかりだから、今回は割愛させていただく。 そのほかにホンダ車初の3ナンバー車が設定されたフラッグシップのレジェンドも、それまでのホンダ車とは一頭地を抜く車種として注目だった。
このモデルは当時ホンダの提携先でもあった、オースチンローバーグループのローバー・スターリングと同時開発されたモデル。さらにハイクラスな2ドアハードトップも用意された。搭載するV6エンジンが静かすぎ、走行中はロードノイズのほうが目立っていた……そんな試乗時の記憶も残っている。
AMWで記事をお引き受けし、昔のカタログを眺めていると、本当に毎回、あのころはよかった、あのころに戻りたい……と思う。ホンダ車がキラキラだった時代。こう書くことで行間をお察しいただきたいが、ホンダ車が再びキラキラと見える日が来ること(新型ヴェゼルあたりにその兆しがある?)を楽しみにしたい。
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みんなのコメント
いまも当時と同じポリシーがあれば凋落してなかったよ