本誌『ベストカー』にて、クルマにまつわる変わったもの、見慣れないものを取材する連載企画『これは珍なり(略して『これ珍』)』。数ある企画の中から、2013年4月のブガッティヴェイロンのギネス記録剥奪騒動をプレイバック。(本稿は「ベストカー」2013年5月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:ベストカー編集部
なんで!!?? ブガッティヴェイロンが最高速ギネス記録剥奪!! クルマの華の最高速記録あれこれ[復刻・2013年の話題]
■ブガッティヴェイロンが記録した市販車最高速ギネス記録が剥奪される
ブガッティヴェイロン
「最高速」といえばクルマの華。
ところが、その市販車最高速のギネス世界新記録を保持していたタイトルホルダー、フランスのブガッティヴェイロン16.4スーパースポーツ(8L W16ターボ、1200ps/153.0kgm)が2010年6月に叩き出した「431.07km/h」という記録を剥奪されたというニュースが飛び込んできた。
なんでも今年4月5日、記録元のギネス・ワールド・レコーズは「ヴェイロンの市販車最高速記録を取り消す」と公式に発表し、速度リミッターが取り付けられているヴェイロンが2010年に記録を出した計測時にこのリミッターを解除していたことを問題視。
ギネスに定められている「計測する市販車に手を加える禁止事項」に抵触すると判断したらしい。
■ヘネシーがギネスにいちゃもんつけたのが発端!?
では、なぜ今頃になって記録が剥奪されることになったのだろうか?
実はチューニングメーカーである米国「ヘネシーパフォーマンス」のヴェノムGTが今年1月、ギネス非公認で市販車の最速記録を打ち立てたのだが(427.6km/h)、そのヘネシーがヴェイロンの記録について「リミッターとリストリクターをはずした状態で走行した」とギネスにクレームをつけたことがきっかけとなった。
ヘネシーヴェノムGT。ロータスエリーゼをベースにコルベットZR-1のV8、6.2L SCエンジンを1244psまでチューン!
ちなみに、ギネスの世界新記録として認定してもらうためには市販車と完全に一致する状態のクルマで計測することが前提。
さらに2回のタイムアタックの平均速度に加え、市販車としての認定には50台の生産が必要とされる。この点でヴェノムGTのタイムはギネス非公認となる。
■記録剥奪に燃えたブガッティが再び世界記録更新!?
で、これで終わらないのが今回の騒動の面白いところ。
ギネスから記録を剥奪されたわずか6日後の4月11日、ブガッティが今度は量産オープンカーの世界最高速記録の408.84km/hを打ち立てたのだ。
記録を出したのはやはりヴェイロンで、昨年春のジュネーブショーで発表された「16.4グランスポーツ ヴィテッセ」。剥奪された最高速記録を持つ16.4スーパースポーツと同じパワーユニットを持つオープンモデルだ。
ただ、この時の計測に立ち会ったのはドイツに本拠を置く第三者試験認証検査機関のテュフだったそうな。なので今回のオープンカー最高速記録はあくまでテュフの認定記録であり、ギネス記録ではない。
さらに事態は二転三転。その翌日の4月12日、ギネス・ワールド・レコーズは「複数の専門家による徹底的な調査を行なった結果、速度リミッターの変更がヴェイロンの改造にはあたらないと確認した」との声明を発表。
ヴェイロンの最高速記録剥奪を白紙に戻したのだ。これで再び王座はヴェイロンの手に。
* * *
■最高速記録エトセトラ
2008年4月、ドイツのパペンブルクのテストコースでワールドレコードとなる409km/hを計測した9ffGT9は、先代997型ポルシェ911GT3ベースのチューニングカーだ
今回のブガッティの剥奪騒動をみてもわかるように、ことほどさように最高速はクルマ好きを魅了する要素なのだ。そこで、ここからはさまざまな最高速記録を紹介しよう。
●市販車高速道路(クローズド)最速記録……ドイツのチューナー、9ffがポルシェ911GT3(996型)をベースにしたチューンドカー「9f-V400」が、2004年にイタリアのナルドサーキットで388km/hを記録。それまでにマクラーレンF1の持っていた386km/hを更新した。2008年には9ffGT9で409km/hを記録している。
●市販車高速道路(未クローズド)最速記録……国産チューナー、BLITZがR34スカイラインGT-Rをベースに作ったフルカスタムチューンドカー、「R348」がアウトバーンの速度無制限区間で343.35km/hを記録。K5-850Rターボを使って推定850psを絞り出していた。
●氷上での市販車最速記録……6L、W12エンジン(630ps/80kgm)を積むベントレーコンチネンタルスーパースポーツコンバーチブルが2011年、フィンランド沿岸での凍結したバルト海で330.69km/hを記録。ドライバーはWRCで4度のドライバーズタイトルを獲得したJ・カンクネン。それまでの記録は、2007年にベントレーコンチネンタルGTコンバーチブルでやはりカンクネンがドライブした時の321.6km/h。
●チューニングカー最速記録……1991年のボンネビルスピードウェイE/BMSクラスで、JUNオートメカニックがチューンしたZ32フェアレディZ(VG30DETTエンジン)が世界最速記録の419.84km/hを叩き出している。この時のドライバーはあの稲田大二郎氏。また、このクルマの製作者である小山進氏が同一車両で別のクラスで421km/hの速度を計測した。
●FIA公認の有人自動車最速記録……FIAのレギュレーションによると、車輪が4つ以上で路面の勾配が1%未満、走路中間の1マイルの平均速度を測定し、1時間以内に往復して往路と復路の速度を平均したものというのが最高速の公式な測定法とのこと。最速記録は、1997年にジェットエンジンを搭載したスラストSSCの1227.985km/hという記録が残っている。この記録はFIA初の音速(マッハ1)を超える速度記録であり、当時のイギリス空軍中佐、アンディ・グリーン氏がドライブした。このSSC、全長16.5m×全幅3.7m、重量は10.5トンでジェット戦闘機のマクドネルダグラスF-4(ファントムII)のエンジンを2基搭載している。
FIA公認の有人自動車最高速記録ホルダー、スラストSSC。その記録はなんと1227.985km/h!
●最速EV……米国のオハイオ州立大学が開発した「Buckeye Bullet」が2004年にボンネビルで記録した517.94km/h。700psのモーター出力を持ち、水素燃料電池で発電して駆動するタイプで、全長11mのカーボンファイバー製ボディをグイグイ加速していくのだ。日本では缶コーヒーのCMで流れた映像で知られる。
●公道走行可能な最速EV……こちらは日本の慶応大学と38の企業体が共同で開発した8輪のEV、「エリーカ」が2004年に370km/hを記録している。ナンバーを国内で取得し、公道走行が可能だ。GSユアサ製のリチウムイオンバッテリーを採用し、動力源はホイールに組み込まれたインホイールモーターによって640psを発揮する。モーターの一つひとつすべてがインバータ制御され、1モーターあたり80psを発生。
※Richard Dredge「市販車の世界最速記録を振り返る」より
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みんなのコメント
マサと走る順番が入れ替わってたら
ダイちゃんが死んでたかもね
つうか、アルミのロールケージはないでしょ