もくじ
どんなクルマ?
ー エンジンとホイールベース以外は一新
どんな感じ?
ー 一般道でも満足できるポルシェらしさ
ー 回したくなるターボエンジン
ー ハンドリングは4Sよりも2S
「買い」か?
ー 突出したオールラウンドなスポーツカー
スペック
ー ポルシェ911カレラ4Sのスペック
コンパニオン大特集(13) 東京オートサロン2019 画像72枚
どんなクルマ?
エンジンとホイールベース以外は一新
満を持して登場した、8代目となる992型のポルシェ911だが、はじめに触れておきたいことは、991と同じホイールベースを持ち、3.0ℓのツインターボ・水平対向6気筒エンジンもキャリーオーバーとなる点。しかし、それ以外は大きく生まれ変わっている。モノコックボディに使用されるスチール素材は極めて限定的で、今回からはアルミニウム製モノコックと、正式に呼ばれるようになった。衝突安全性の向上や搭載される新技術での重量増加分を、アルミニウムで相殺させようというわけだ。
エンジンには大型のターボに高効率なインタークーラー、ピエゾ式インジェクター、インテークバルブのバリアブル開閉機構などが盛り込まれ、新しい911の最高出力は450psからとなる。後輪駆動か四輪駆動かを選択でき、どちらも全幅は同値。従来までは後輪駆動のカレラのリアトレッドの方が、四輪駆動モデルより狭かった。フロントトレッドは46mm広げられているが、リアトレッドは先代の四輪駆動モデルと変わらない。つまり後輪駆動モデルの場合は、先代から39mm広がったことになる。
タイヤ幅はフロントが245、リアが305で、直径はフロントが20インチでリアが21インチ。標準のポルシェとしては初めて、前後でのタイヤ径が異なる仕様となっている。そして今回われわれは、後輪駆動の2Sと四輪駆動の4Sの2台を、一般道で充分な距離を走らせることが叶った。早速レポートと行こう。
どんな感じ?
一般道でも満足できるポルシェらしさ
まずは、以前のテストで充分な仕上がりを確認できた時と同じサーキットで、カレラ4Sに乗る。四輪駆動の992は極めて速く安定している。その完璧な仕上がりは、サーキットで何時間でも走っていられそうにすら感じるほど。ピットに戻るのは、燃料切れの時くらいかもしれない。
その完成度の高さや優れたスペックは、一般道ではやや過剰なのではないかと不安になるものでもある。現代の多くのスポーツカーがそうであるように。しかしポルシェの真骨頂は、非常に速く柔軟でありながら、スピードをそれほど出さなくても、満足感の高いドライビングを楽しめること。現代の911が備えている最大の魅力だと思う。
もし初期型のポルシェ911を可能な限り速くドライブしたら、今でも通行人を驚かせるようなスピードで走ることは可能だと思う。ポルシェは992の発表会のときに、そんな初期型の1963年製ポルシェ911を一緒に並べた。わずか131psで、タイヤの幅は165。ホイールは15インチだ。わたしの目には素敵に映った。しかし最新の992とスタートダッシュを比べたら、シフトチェンジする前に視界から消えるだろう。
992を一般道で走らせるとどうか。恐らく、エンジンのポテンシャルをしっかり確かめることは不可能だ。レブリミットは7500rpmで、7速PDKにかわり8速PDK(ポルシェ・ドッペルクップルング:デュアルクラッチAT)が組み合わされている。シフトアップもシフトダンも、驚くほどシャープで速い。
回したくなるターボエンジン
エンジンの発するサウンドは、とりわけ特別な印象はない。メルセデス-AMGやアストン マーティンが搭載するV8エンジンの荒々しいものとは異なるが、車内にいるとフラット6特有の愛すべきビートが響いてくる。アクセルペダルを踏み込んで少し戻すと、ウェストゲートバルブが開いたさえずりとともに、ぐずったようなエグゾーストノートが聞こえる。
パワーデリバリーは力強いうえ、ターボラグもほとんど感取されず、回転レスポンスも鋭い。2300rpmから53.9kg-mという太いトルクを発生させるエンジンだが、高回転域まで引っ張りたくなる味わいは、今回も変わらない。
確かに、かつての自然吸気エンジンのような、柔軟なレスポンスは備わっていないものの、もはやそのような不満を並べる時代ではなくなったのかもしれない。電動パワーステアリングや成長し続けるホイールベース、増え続ける車重に水冷エンジン。911は連綿と着実に進化していることに、違いないのだから。
電子制御されるダンパーも標準装備。振動を最小限に抑えるダイナミック・エンジンマウントもしかり。アクティブ・リアステアリングはオプションだが、今回のテスト車両には搭載されていた。ボディコントロールはもちろん良好。タイヤのサイドウォールの厚みと、オプションとなるスポーツシャシーのおかげで10mm車高が低いことを考えると、乗り心地も良い。ちなみにオプションの設定は非常に多岐に渡り、992は簡単に10万ポンド(1380万円)を超える価格になるだろう。
ハンドリングは4Sよりも2S
ドライブモードやダンパーの硬さに関係なく、走行性能は秀逸。ステアリング操作も心地良い。フロントの荷重が比較的軽いから、パワーステアリングのアシスト量も少なくて済み、ライバルモデルと比較してステアリングホイールに伝わってくる情報のフィルタリングも容易なはず。価格帯が異なるマクラーレン570を除いて、白眉のできだといえるだろう。
ここで触れておきたいのが、四輪駆動の4Sよりも、後輪駆動の2Sの方が、ハンドリングで勝っているという点。トルクステアのようなものはまったくないのだが、鮮明性や純粋さ、スムーズさや一貫性という点で、2Sの方が上手だ。
4S、2Sともに回頭性は高く、フロントのトレッド幅が広げられたことで、フロントタイヤの信頼感も一層高められている。しかし、一般道で許されるような速度域でも、2Sの方が俊敏性で優れていることは明確にわかる。理由のひとつに、2Sの方が50kgも軽量なことも大きな要因だ。またカレラ2Sでも、450psの力を持て余す問ことはない。むしろ、調整しろが大きく運転する楽しみも豊かだと思うから、気候的な理由など必要条件で四輪駆動を選ばなければならない以外、2Sの方をオススメする。
最後に、ドライブモードにはウェットモードが備わっている。フロントタイヤのホイールアーチ内に取り付けられた超音波センサーによって、路面の水の量を賢く判断することが可能だ。しかし、基本的に高性能なトラクションコントロール・システムによる制御が入っており、四輪駆動モデルの場合はフロントタイヤのトラクションがクルマを支えてくれるから、気に留めるほどのモードでもないと思う。
「買い」か?
突出したオールラウンドなスポーツカー
とにかく、最新のポルシェ911「992」は非常に魅力的なクルマだ。反面、エキサイティングさに関しては、それほどでもない。アストン マーティン・ヴァンテージやメルセデス-AMG GT、アウディR8や、ロータス・エヴォーラなどの方が、刺激という面では強い。
しかし、ポルシェ911の最大の魅力は、日常の暮らしに難なくフィットし、何の我慢もなく日常的に乗れる本物のスポーツカーだという点にある。もし、全幅のより狭いグレードがあったなら、わたしはそちらの方を選ぶだろう。道幅を選ばずポルシェ911を気軽に走らせられるということも、ポルシェのストロングポイントだと思うから。
だとしてもこの最新のポルシェは素晴らしい。われわれが認めるライバルたちと一般道で真っ向勝負させても、上位に食い込むことは間違いないだろう。突出したオールラウンドなスポーツカーだ。近年の記憶では珍しいほどに、肯定で溢れたインプレッションとなった。
ポルシェ911カレラ4Sのスペック
■価格 9万8418ポンド(1358万円)
■全長×全幅×全高 4519×1852×1300mm
■最高速度 305km/h
■0-100km/h加速 3.4秒(スポーツクロノパッケージ)
■燃費 11.1km/ℓ
■CO2排出量 206g/km
■乾燥重量 1565kg
■パワートレイン 水平対向6気筒2981ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 450ps/6500rpm
■最大トルク 53.9kg-m/2300-5000rpm
■ギアボックス 8速ツインクラッチ・オートマティック
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