ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。
冷たさの排除し素材を“素直”に使う
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ
EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。
「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」
インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」導入)。
「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」
リーブス氏は説明してくれる。
「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」
ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。
「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」
シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。
ボルボ最小ボディでも充実の収納スペース
同時に、BEVならではの利点として、スペース効率が追求できたことも特筆すべき点だったそうだ。
「ICE(内燃機関=エンジン車)とちがいドライブシャフトや排気管のためのトンネルが室内に干渉することはありません。そのため、ストレージのスペースを増やすことが出来ました。全長4.2メートルのコンパクトなクルマにとって、収納スペースは大事です」
EX30では、カップホルダーも、サングラスなどを入れておける収納スペースも、センターアームレストのなかに巧妙に組み入れられている。まるで日本車のような巧妙なデザインだ。
オーディオスピーカーシステムも、今回(おそらくオプションで)ハーマンカードン・ブランドのサウンドバーが用意された。ここには 5つのスピーカー。
全体としては、サブウーハーを含む9つのスピーカーを巧妙に各部に仕込み、ほとんど目立たないのが特徴だ。いっぽう、出力は1,040Wに達するので、おそらく(聴いていない が)音質と迫力ともに、かなりのレベルに達するのでは。
「とくにフロントは、サウンドバーがダッシュボード前端、というかウインドシールド下部に埋め込まれるなどしていて、ドア内部に従来のようにスピーカーがスペースを占有することはありません」
荷室も同様で、ガソリンタンクがなくなったため、より深くスペースを活用できるようになった。
ボルボにとってグッドデザインとは、理知的で、乗員になにかガマンを強いるものではない、ということだろう。そんな哲学的なデザインを感じさせるクルマである。
<了>
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