気になるメッセージ M3にワゴン?
text:Takahiro Kudo(工藤貴宏)
【画像】「M3ツーリング」どんな姿に?【M3とM340iツーリングの写真から想像】 全86枚
editor:Taro Ueno(上野太朗)
2020年8月、BMWはメッセージとともに1枚の写真を公開した。
その写真はリアスタイルで、明らかにワゴンとわかるのに加え、張り出したリアフェンダーと4本出しのエグゾーストパイプで力強さが強調されている。見るからにスポーツタイプのクルマだ。
そして以下のメッセージが添えられている。
「高性能スポーツカーのラゲッジコンパートメントを大きくして、可変性を持たせてはどうか?」
「BMW M社の歴史の中で初めて、『M3ツーリング』を設定することになった」
「この車両(の試作モデル)は間もなく定期的に目撃されるようになるだろう。すべてのBMW Mモデルと同様に、BMW M3ツーリングの集中的なテストとチューニングのプロセスは、ミュンヘン近郊のガルヒングにある開発センター周辺を走行するほかニュルブルクリンクの北コースでおこなわれる」
「プロトタイプによる公道テスト走行にゴーサインが出されたことは、市販に向けた1歩を踏み出したことを意味する」
「ツーリング」とは、BMWが本国などでステーションワゴンボディを示す名称。
すなわちこのメッセージは新型M3に史上初のワゴンボディが加わることを予告しているのだ。
そのメッセージに記されているように、「M3」にワゴンボディが用意されるのははじめてのこと(過去には「E46」型をベースとした試作車が作られて本国で公開されたが市販はされなかった)。
果たして、新しいM3にワゴンボディが加わる背景にどんな理由があるだろうか。非常に興味深い。
ツーリングの「M」を送り出せるようになったワケ
BMWジャパンの広報室によると2つの理由があるという。
1つは、クルマ作りの技術的なアプローチだ。
「各種の電子デバイスの進化により、ツーリングモデルでも、しっかりとサーキットを走れるクルマの開発が可能になったからです」(BMWジャパン)
その前提となるのが、「Mハイパフォーマンスモデル」の位置付けだ。
「M3」や「M5」をはじめとするMハイパフォーマンスモデルはあくまでもサーキット走行を前提に開発されている。
クルマ作りは隅々までそのポリシーが貫かれ、少し前までは「冷却性能を最優先に考えてバンパー開口部を塞ぐフォグランプやレーダーを装着しない」としていたほどだ。
Mハイパフォーマンスモデルは当初はクーペにしか存在しなかったが、その後セダン、オープンモデル、そして背の高いSUVへとラインナップを展開。
その背景にあるのが、技術の進化だという。
中でも電子デバイスの進化により、走行性能において物理的に不利である重心の高い車両などでも十分にサーキット走行を楽しめるクルマづくりが可能になったことがバリエーションの拡大に影響しているというのである。
そしてもう1つが、ニーズの多様化である。
時代の変化 クーペやセダン以外でも楽しむ「走り」
「荷物を多く詰めるツーリングモデルでのMハイパフォーマンスモデルの誕生を、多くのお客さまから要望いただいております」とBMWジャパンは説明する。
「3シリーズ」においては初となるワゴンボディのMハイパフォーマンスモデルだが、実は「5シリーズ」においてはかつて「M5ツーリング」が設定されたことがある。
それは1992年から95年にかけて5シリーズとして3代目のE34型と、2007年から2010年にかけての5代目のE60型。
後者にはなんとV10エンジンを積んでいたのだから驚くべきステーションワゴンだ。
ただし、いずれも日本にも正規導入されなかった。
また、M5ツーリングの生産台数はいずれも1000台程度で、E34はセダンの1/10未満、E60ではセダンの1/15程度にとどまる。
「希少な存在」という表現もできるが、たくさん売れたという状況ではなかったのもまた事実といっていいだろう。
当時はまだBMWのハイパフォーマンスワゴンがニッチな存在だったのだ。
しかしながら、時代は大きく変化。ドイツ勢を見まわすと、メルセデス・ベンツの超高性能仕様である「AMG」やアウディの「RS」シリーズにはステーションワゴンが設定されて人気を博している。
それに今、それらのブランドやBMWではSUVの超高性能モデルも勢ぞろいしている。
「速くて走りを楽しめるクルマはクーペやセダンに限らない」という風潮が高まり、「M3ツーリング」も多くの人に受け入れられる可能性が増してきたというわけだ。
ところで、同じドイツのプレミアムブランドでも、最高峰のスポーツモデルをセダンに設定するのを拒んでいるブランドがある。アウディだ。
アウディRSの価値観「セダンよりハッチバック」
アウディの頂点に立つ「RS」シリーズは、もっともコンパクトな「RS3」を除きセダンに設定されておらず、BMWとの違いが興味深い。
高性能車に詳しい人の多くが頭に浮かべ、RSのイメージの中心となっているのは、「RS4アバント」と「RS6アバント」でどちらもステーションワゴンだ。
なぜセダンがないのだろうか。
「『RS4』と『RS6』にはかつてはセダンも用意された。しかし今では『RS5スポーツバック』や『RS7スポーツバック』があるから、セダンがなくてもそれらで十分カスタマーニーズに応えられる」
アウディ・ジャパンを通して質問したところ、本国からはそんな回答が寄せられた。
「セダンよりもハッチバックのほうがクールだから、『スポーツバック』があればセダンは必要ないだろ?」ということである。
アウディジャパンの広報担当者は「欧州では高性能セダンよりもスポーツバックのほうが強いニーズがあるようです」とフォローする。
またアウディのRSシリーズにおいて「RS3」にだけ例外的にセダンが存在するのは「RS3に関しては商品ラインナップとしてセダンを補完できるモデルが存在しないから」だという。
さて、メルセデス・ベンツはどうだろう?
「M3」ワゴン 発売はいつになる?
一方、メルセデス・ベンツの「AMG」に関しては、ハッチバックからセダンからクーペからステーションワゴンまで「総当たり状態」展開している。
すべての顧客ニーズに対応しようという姿勢とそれに対応する能力は、それはそれで見事というしかない。
また、M、RS、そしてAMGのすべてに共通するのは、SUVのラインナップが増殖していることだ。
これはSUVの販売規模が大幅に拡大しているという昨今のトレンドを受けたものというほかないだろう。
そしてスポーツモデルとしてそれらのSUVを考えた場合、多くの車種で優れた走りを実現しているのもまた事実だ。
それはBMWが説明する「技術の進化で物理特性的な不利なモデルでもしっかり走らせられるようになった」ということのなによりの証拠と言っていいだろう。
つまるところ、どんなボディを設定するかは、自動車メーカーが各車のキャラクターや「M」など最高峰のスポーツブランドの存在をどう考えるかを前提としつつも、マーケットニーズに関わる部分が大きいと言っていいだろう。
そしてBMWは「今ならステーションワゴンのM3も受け入れられるはず」と判断したということである。
「M3ツーリング」の開発進捗状況は昨年8月の時点で「約2年の開発期間の初期段階」とのこと。
日本に導入されるかは未定だが、もし導入されたとしてもまだ1年半近くは待つことになりそうだ。
2018年10月だった現行型「3シリーズ」のデビュー時期を考えると、モデルサイクル中盤のマイナーチェンジを受けるタイミングでM3ツーリングが登場することも考えられる。
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