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【10年ひと昔の新車】86 TRDパフォーマンスラインは、街乗りからサーキットまで走りのためにチューンされたクルマだった

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【10年ひと昔の新車】86 TRDパフォーマンスラインは、街乗りからサーキットまで走りのためにチューンされたクルマだった

「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、TRD(現・トヨタカスタマイジング&ディベロップメント)がチューンしたトヨタ 86だ。

86 TRDパフォーマンスライン(2012年:チューンドカー)
トヨタのレーシング部門を担当し、チューニング&カスタムパーツの製作、販売を手がけるTRD(編集部註:現在はトヨタカスタマイジング&ディベロップメント)。そんなTRDが、86をチューンしたパーツの総額は200万円オーバー! 新車に組み込めば、86なのに乗り出し価格は500万円を超す(ベースがGTリミテッドの場合)というパーツ群は、価格も見た目も圧巻だ。これだけの商品をTRDが揃えたのには理由がある。メーカー自らが「チューニングしてクルマを育て、長く楽しんで欲しい」と異例の宣言をした86。だからこそトヨタワークスのTRDが、チューニングの方向性を示す必要があったのだろう。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

現車を間近にして、まず存在感がノーマルとはまるで違うと感じられた。深紅のボディにブラックアウトされた18インチホイール。さらに低く構えたエアロパーツが前後ともに少しずつ延長されていることも、その効果となっているだろう。だが、最も目を引くのは82万円もする前後のビッグキャリパー&ローターのブレーキだろう。純正装着される片持ちのフローティングキャリパーや、16インチホイールも装着可能な小径のブレーキローターとはまるで違う。ここまで必要なのかと疑いたくなるほどのオーバークオリティな感覚だ。

対して室内はスターターボタンやシフトノブが変更されているくらいで、それ以外はノーマル。実はバケットシートなどが検討されているものの、側面衝突試験を行ってからでないと販売できないという事情があり、今回は装着されていなかった。パーツ変更ひとつでもさまざまな検討を行うところは、ワークス系ならではといったところだ。エンジンルームについても同様だ。パッと見で判断できるのは横方向を支えるタワーバーが装着されているのみ。これもまた歩行者保護の試験をクリアした逸品だという。ちなみにリア側のタワーバーは検討したものの性能向上が見られないために装着を断念している。

ならば、どこが特別なのか? それは主にシャシ系だ。全長調整式のサスペンション&スタビライザー、そしてメンバーブレースセットが装着されるボディ下部。さらにマフラーも交換され、そのマフラーに対してディフューザーを装着することでボディ下部の整流を行っている。何から何まで拘りまくったシャシであることが分かる。

操作に対する反応が優れていて気持ちいい!
実際に乗ってみると、まず操作に対するボディの反応がとにかく優れている。スロットル&ブレーキ、そしてステアリングの全入力に対してリニアリティが高い。これはボディが優れているだけでなく、吸排気系の変更によりスロットルレスポンスが向上していたり、ブレーキの変更によってペダルのダイレクト感が向上していることもポイントだ。さらにエアロパーツによって高速域の安定感が増したことも見逃せない。

また、音の演出も見事だ。ノーマルではサウンドジェネレーターによって吸気音を心地良く聴かせることに成功しているが、TRDの手がけた86はこれと同様の甲高い周波数のエキゾーストノートを後ろ側から取り込んでいるように感じる。まるでエンジン音が5.1chサラウンドになったかのような感覚。これもまた官能性が高い。

足まわりは、街乗りでは減衰力を緩めていなかったこともあってハーシュネスが強い部分もあったが、スピードレンジを上げるとうまく路面をいなす。ノーマルよりもリアの安定感はかなり高く、スロットルやブレーキによって狙ったラインに瞬時に乗せられる感覚に優れている。注目のブレーキはストッピングパワーもバランスも文句なし。剛性感あふれるタッチと、短すぎず長すぎないストローク感も絶妙でコントロール性は抜群だ。

このように派手さや速さばかりを追求せず、正確性や官能的な世界を追求したことで、TRDは86をまさに真のスポーツカーにしたと感じさせてくれた。価格だけでは片づけることのできない、深みのあるクルマになったと断言できる。

トヨタ 86 GTリミテッド(ベース車) 主要諸元


●全長×全幅×全高:4240×1775×1300mm
●ホイールベース:2570mm
●車両重量:1230kg
●エンジン:直4 DOHC
●総排気量:1998cc
●最高出力:147kW(200ps)/7000rpm
●最大トルク:205Nm(20.9kgm)/6400-6600rpm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・50L
●JC08モード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:215/45R17
●当時の車両価格(税込):297万円

[ アルバム : 86 TRDパフォーマンスライン はオリジナルサイトでご覧ください ]

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