この記事をまとめると
■BYDは2024年の北京モーターショーで新型のPHEVモデルを発表した
キャンプの代名詞「火」が見えない! EVだらけのオール電化アウトドア「EV Summer Camp 2024」に潜入した
■中国ではPHEVなどの電動車も普及させる「マルチパスウェイ」を国家レベルで進めている
■中国系ブランドはしばらくはBEVに注力していくほうが賢明といえそうだ
中国メーカーはPHEVもラインアップ中
BEV(バッテリー電気自動車)のトップブランドともいわれている中国BYDオート(比亜迪汽車)だが、最近は同社のPHEV(プラグインハイブリッド車)の話題をネット上でよく見かけることがある。
2024年春に開催された「北京モーターショー」では、セダンの「泰」の追加モデルとして、PHEVとなる「泰L DM-i(Lはロングホイールベース版を意味する)」を追加発表した。報道によると、カローラセダン(グローバル仕様)クラスにカテゴライズされるとしている。
1.5リッターエンジンベースとなるプラグインハイブリッドユニットで注目されているポイントは、最大航続距離が2100kmということ。ちなみにこの泰L DM-iと同じユニットを搭載したモデルが中国には存在する。それが、日本でも販売されているシールのPHEVモデル、「シール06 DM-i」だ。これは日本で販売されているシールの姉妹車的ポジションにある。ちなみに、日本導入が噂されている、BYDのラグジュアリーミニバンとなる「デンザD9」も中国国内ではBEVだけではなく、PHEVも存在する。
BYDに限らず、中国メーカーではBEVだけではなくPHEVがラインアップされていることは、それほど珍しくない。
広大な国土をもつ中国は、内陸部と沿岸部では生活環境が大きく異なることがある(電力インフラなど)。内陸部もここ最近は都市部を中心に沿岸部との格差は縮小傾向にあるものの、まったく格差がないとはいい切れない。また、中国政府も、拙速に国内すべての自動車をBEV中心とした電動車のみにしようというわけでもないことがわかる。
たとえば、沿岸部はBEVを普及させ、内陸部ではPHEVやHEV(ハイブリッド車)といった、環境性能の高いICE(内燃機関)搭載車を普及させ、まずは大気汚染などの改善を進めながら、その上で本格的電動化を進めようとしていると聞いたことがある。日本でよく聞かれる「マルチパスウェイ」を、国家レベルで進めようとしているようにも見える。国営放送でも「ユーザーの事情に合わせてBEVやPHEV、そして純ICE車などを選ぶように」との報道もあった。
海外市場ではすっかり「BEV=BYD」のようなイメージが固着しつつあるが、日本以外であっても、BEV一辺倒ではなかなか思った市場拡大はできない。さらに、ここのところはBEVの販売が世界的に停滞している。HEVが世界的に注目されるなか、日本も含めて中国国内以外でも、PHEVのラインアップを充実させようとしているとの報道もよく目にする。
BEV専門ブランドとして運営していくほうが賢明か
東南アジアで目立ってBEVの普及が進んでいるのがタイ。首都バンコクでは間違いなく東京よりもBEVを見かける。そしてその中心は中国メーカー車となっている。
BYD以外では、GWM(長城汽車)やMG(上海汽車系ブランド)などが中心となるが、これらメーカーはICE車もラインアップしている。バンコク市内で見ていると、タイの自動車ショーではこれら以外の中国系ブランドも目にするが、頻繁に街なかで目にするのはBYD、GWM、MGそしてNETA(ネタ)くらいである。
仮にこの4ブランドを中国系主力ブランドとすると、BYDもPHEVでもいいのでICE車がほしいところだなぁ……という雰囲気もあるのだが、そこにはある壁があるとは事情通。「すでにタイ国内ではディーラーネットワークをかなり構築しているBYDですが、取り扱いをBEVのみとしていたようで、各ディーラーのサービス工場にはエンジンオイルの交換で発生した廃油処理施設など、ICEに対応した設備がなく、施設整備に金銭的コストや時間がかかることが問題になっているとも聞きます」と話してくれた。
中国国内では、そもそもBYDオートはICE車からはじめているので、すべての4S(日本のような整備工場も持つ店舗)店がとまではいえないだろうが、ある程度歴史のある店舗ならば、過去のICE車のお客もいるだろうから、ICE車対応施設も残っているものと考えられる。
日本国内のBYDでは、ディーラーネットワークの構築を始めたばかり。まだいまならそれほど手間なくPHEVの取り扱いも手を出しやすいといえるだろう。ただ、HEVではトヨタを中心とした日本車が、国内では圧倒的強みをもっている。また、三菱アウトランダーなどの成功事例はあるものの、日本ではPHEVをHEVと比較してしまう傾向も高いので、割高感が目立ってしまう、結果的にPHEVとHEVの両方をラインアップしているケースでは、PHEVの売れ行きはいまひとつ元気がないように見える。
上海汽車系ブランドやGWMでは、タイやインドネシアでHEVをラインアップしているが、このカテゴリーは日本車の十八番なので、日本車優位な状況を大きく変えるような状況にはなっていない。
筆者としては、中国系ブランドはBEVのみとしてイメージを定着させたほうがいいと思うが、それにはやはり時間がかかってしまう。かといってPHEVなどでラインアップを広げると、ブランドイメージは薄まってしまうだろう。仮に性能で日本車に勝っていたとしても、世の中ではHEV=日本車優位のムードが出来上がってしまっているので、PHEVを投入しても中国車がいまのBEVほどの存在感を示すことは難しいだろう。
すでに中国メーカー同士でBEVの乱売傾向が目立っているタイで、今後、どのような動きになっていくのかを注意深く見ていったほうがいいだろう。
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みんなのコメント
EVしか造る技術が無い会社は淘汰される
フロントバンパーに付けられる「BYD」エンブレム、何とかならないのかな?
その考えが中華だろうな
先を見る目が無い