2024年7月18日に発売されたホンダの燃料電池車、新型CR-V e:FCEV。はたしてどんなクルマなのか、GOOD CAR LIFEゼミッタこと、徳田悠眞氏が徹底試乗! 自身9台の新車を購入し所有しているが、今回のCR-V e:FCEVを購入するのか? 最後に「買いたい度」も100点満点で採点してもらった。
文:徳田悠眞/写真:ベストカーWeb編集部、ホンダ
実質約445万円で買える ホンダの燃料電池車[新型CR-V e:FCEV]は本気で買いたくなるほどのデキだったのか?
PROFILE:徳田悠眞
チャンネル登録者数10万人を超える「GOOD CARLIFE Channel/ゼミッタ」を運営。現在は雑誌やWebでの執筆も行っている。現在、シビックタイプRやランクル300、ホンダフリードなど最新モデル9台を所有。気になる車種はなるべく購入して評価するのが信条。
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■価格は809万4900円だが、補助金をひくと約445万円!!
ボディサイズは全長4805×全幅1865×全高1690mmとミドルサイズのSUV
燃料電池車ってバカ高いんでしょと思っている人も多いと思うので、まずは価格の話から。車両本体価格は「809万4900円」と非常に高い。だが、このクルマは燃料電池車。東京都在住の場合、国から255万円、都から110万円の補助金が交付され、実質本体価格は約445万円となる。先代モデル(e:HEV EXブラックエディション・4WD)とほぼ変わらず、一気に魅力的なお値段になった。
ただし、気をつけたいのはリース販売であること。筆者が問い合わせた店舗では月々約15万円の支払いだとか。補助金を差し引けば実質の毎月負担額は約9万円。これを5年間支払い続けるカタチになる。なお、補助金の交付方法が気になる方もいるだろう。
参考までに、筆者が所有するekクロスEV(BEV)では、申請してから数ヶ月後に補助金が口座に振り込まれた。国からの補助金はCR-V e:FCEVも同様の形態かと思われるが、本気で購入検討中の方は店舗にお問い合わせを。
全体的にスッキリとした印象で外観からはFCEVとは思われないかもしれない
ミッドサイズSUVらしいボリューミーで精悍なエクステリア。最近のホンダ車はジェンダーレスでプレーンな造形が多い中、CR-V e:FCEVは一線を画す。切れ長のヘッドライトやダイナミックなグリルを中心とした男前ルックス。
かく言う筆者はフィット4や現行型ステップワゴンのシンプル&クリーンなスタイルも好きで所有していた。だが、ハッキリとしたカッコよさを作り出したCR-V e:FCEVもイイじゃない。
よく見ると、北米などで販売するガソリン車やハイブリッド車と仕立てが異なる。フード、フェンダーバンパー形状などが違うほか、フロントグリルはルーバー基調の艶ありブラック。フロント&リアバンパー下部、フェンダーアーチモール、サイドスカート部はボディ同色仕上げだ。
リアコンビネーションランプはクリアレンズ化。全体的に上質感やスマートさを強調した仕上がりだ。外装の装備面で惜しいのはアダプティブドライビングビーム不採用とリアウインカーが豆球であること。
前者に関しては安全装備であり、ヴェゼルやZR-Vの上級グレードには備わる。後者は800万円超えのクルマなのにナゼという疑問が浮かぶ。リアウインカーなんて自分で交換すればいいだけなので大した問題ではないと思うのだが……。
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■インテリアの質感、居住性はどうか?
10.2インチのフル液晶メーター、やや小さい9インチのディスプレイを装備。質感は上質
インテリアは黒で統一された上質テイスト。シート地にプライムスムースを使ったり、ステアリングホイール表皮を合成皮革(シンセティックレザー)にしたりと、FCEVらしい環境への配慮だ。肝心の座り心地や握り心地も悪くない。
メーターパネルは10.2インチサイズのフル液晶タイプ。サイズ・操作性ともに申し分なし。だが、HondaCONNECTディスプレーの9インチはやや小さいか。車格的には現行型アコードと同じ12.3インチが望ましいだろう。
メニュー画面に水素ステーションの検索タブを配置してあるのは親切でありがたい。シートヒーターやステアリングヒーターを備える一方、シートベンチレーションはなし。マルチビューカメラシステムやワイヤレス充電器などは標準装備。パノラマサンルーフはメーカーオプションでも設定がない。
後席は座面下に水素タンクがあるのを感じさせない十分な広さだった
後席は大人がゆったりくつろげる広々空間。身長175cmの筆者に運転席を合わせた状態で膝前空間はこぶし3つ分。頭上周りもこぶし1つ以上の余裕がある。座面下に水素タンクが潜んでいる影響でシートクッション厚を薄くする必要があったそう。だが、それを感じない出来映えには感心した。
ハンズフリーアクセスパワーテールゲートを使ってバックドアを開ける。そうすると、異質なラゲッジ空間が出現。水素タンクを収めるため、奥側がボコッと出っ張っているのだ。悪目立ちすると言えばそうだが、フレキシブルラゲッジボードを上段にセットすれば、水素タンクを収めるエリアとの段差はなくなる。
2段式のラゲッジスペース。上段にフレキシブルラゲッジボードをセットすればよほど大きなものを積まないかぎり、日常使いでは不便さは感じないだろう
さらに、フルフラット時の段差もほぼなかったのが意外な良さだった。荷室に備わるDC給電口にHonda Power Exporterを繋げば、AC200V/100Vの給電が可能。最大で一般家庭の約4日分の電力が取り出せるという。とはいえ、AC100V/1500W電源が車内に欲しい。内側に1つあるだけでも利便性が大きく変わる。
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■CR-V e:FCEV試乗開始! アクセルを踏んだ瞬間から!!!
走り出しから上質さを感じるCR-V e:FCEV
というわけで試乗スタート。アクセルを踏んだ瞬間、このクルマの良さに気付かされた。スムーズかつスッキリした乗り味。これはイイクルマと確信し、公道へ出る。駐車場よりもザラついた路面状況だが、滑らかさは変わらない。
今度は車線変更に合わせてステアリングを素早く切ってみる。車重2010kgはやや重く感じるも、素直な動きでシャシー性能のシッカリ感もある。上質な乗り心地と高い操安性の両立。重心高-11mm(同モデルハイブリッド車比)の恩恵や振幅感応型ダンパーの効果も大きい。
では静粛性はどうか。この手のクルマはいつもと違うノイズが目立つはず…。しかし、フロントドアの遮音ガラスやノイズリデューシングホイールなど、徹底したノイズ対策のおかげで不快感はない。手元の減速セレクターを操ればアクセルオフ時の回生力が変化。最も強い減速度を選択してもワンペダル的に走ることは難しかった。
CR-V e:FCEVのシステム図。後席前と後ろに2本の水素タンクを搭載している
CR-V e:FCEVの肝となるパワーユニットはフロントフード下にはGMと共同開発した新世代燃料電池システムにモーターギアボックスなどを一体化したもの。
17.7kWhのリチウムイオンバッテリーのほか、補機類で構成するインテリジェントパワーユニット(IPU)を床下に配置。車両後方には約4.3kgの水素を充填できる高圧水素タンクを2本積む。
そもそもFCEVとは、水素と酸素の化学反応によって作り出した電気でモーターを動かして走るというもの。排出するのは水のみ。CR-V e:FCEVは左前輪の後ろあたりからシステム側の判断で排水される。
サイドマフラーから水が排出される。クラウンFCEVのように任意のスイッチで水が排出されることはできない
パワースペックは177ps/310Nm。モーターならではの高レスポンスと途切れのない加速感が心地よい。ぶっ飛んだ速さはないが、物足りなければSPORTモードを選べばいい。アクティブサウンドコントロールの演出とともにグッと前に引っ張られる加速を味わえる。
コンソールパネルに備わるeボタン。「AUTO・EV・SAVE・CHARGE」の4モードを用意するが、基本はAUTOモードで問題なし。CR-V e:FCEVのストロングポイントはプラグイン機能を備えること。
左フロントフェンダー部に備える給電機能付き普通充電ポートから充電すれば、それだけで約61kmも走れる。6.4kWの充電器を使えば2時間半で満充電できる。
水素は1kgあたり1650円、満充填するは4kgなので6600円、満充填あたりの走行距離は約621km
この仕組みはMIRAIやクラウンFCEVにはない。普段の生活圏は充電した電力を使って走行、ロングドライブ時は発電した電力もプラスして長距離を走る。水素の充填時間は約3分。ガソリン車の給油と同程度の時間で満充填できるのは嬉しい。トータルの航続可能距離は約621kmを謳う。
■ホンダCR-V e:FCEV(FF)主要諸元
ボディサイズ=全長4805×全幅1865×全高1690mm
ホイールベース=2700mm
車両重量=2010kg
FC(燃料スタック)=125ps
モーター=130kW(177ps/310Nm)
駆動用バッテリー=リチウムイオン電池17.7kWh
水素=一充填走行距離は約621km(水素タンク=荷室下56L、後席下53L)
EV=一充電走行可能距離は約 61km
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■ガソリンやハイブリッドモデルがあればいいのに……
2Lガソリンエンジン+2モーター(システム出力は204ps)を用意する北米仕様のCR-V
ガソリンやハイブリッドの新型CR-Vが国内デビューを迎える日はくるのか、気になっている人も多いのではないだろうか。残念ながら、試乗会で話を伺った限りだと非現実的ではないかと推測する。
だったら、FCEVの新型CR-Vを狙うしかないのだが、水素ステーションの絶対数や運用状況に購入を踏みとどまる要因が潜む。多くの人が身近な存在と思えるにはさらなるインフラ整備が重要ではないだろうか。
気になるクルマは買って評価する筆者なのだが、今回のCR-V e:FCEVの場合、地元の水素ステーションの状況(滋賀県は1ヵ所、営業時間は9時~17時)を考えると、ちょっと厳しい。
水素ステーションが急速充電器並みに増えれば、迷いなくハンコを押します!! したがって「クルマ買いたい度(即購入決定が100点)」は70点を付けさせていただいた。
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