この記事をまとめると
■新型が出るたびに言われる「前のがよかった」は本当にそうなのかを検証
復活させるならスープラよりもコレ! 蘇ればヒット間違いなしのクルマ5選
■先代の弱点をブラッシュアップしている以上前のほうがいいという例は少ない
■好きなものに乗るのが結局は1番なので、あまり押し付けるのは良くない
「初代の方がよかった!」は信者の妄言なのか
クルマ好きにはさまざまなタイプがある。とにかくタイヤがついていて動くものならなんでも好きという間口の広いタイプもいれば、エンジンが楽しくなきゃダメだとか、決まったメーカー・ブランドだけを推しているとか、はたまた特定のモデル以外は認めないといったディープなクルマ好きも存在する。
そんなディープなクルマ好きからよく聞くのが「やっぱり初代モデルがいいね」といった発言だ。そうしたクルマ好きからは「モデルチェンジごとに最初の良さがなくなっていった」といった批判的な評価が出てくることも珍しくない。
そんな『初代が良かったシンドローム』ともいえるファンが目立っている1台が、マツダ・ロードスターだろう。
国産ビンテージイヤーと呼ばれる、伝説の1989年に生まれたマツダ・ロードスター(当時はユーノス・ロードスター)は、世界中にライトウェイトスポーツカーのムーブメントを起こした立役者であり、たしかに初代モデルは売れに売れた。数字だけをみると「最初は売れたけど、その後はイマイチ」といえるほど初代の販売台数は多い。
実際、累計生産台数を並べてみると、初代は約43万台、正常進化した2代目は約29万台、3ナンバーボディに成長した3代目は約23万台となっている。たしかに初代がずぬけて売れたのだが、4代目も含めた累計生産台数はとうに120万台を超えている。つまり、ロードスター全体でいえば初代以外のほうが多くなっているのも事実だ。
そして4代目については初代ロードスターが持っていた独特のヒラヒラ感を現代に復活させようとした節もある。最近登場した車重990kgの特別仕様車「990S」などは、まさに初代のスピリットを感じさせる。メーカー自身も初代をリスペクトしているのは確実だ。
その意味ではロードスターについては「初代が最高だった」というのは間違ってはいないかもしれない。しかし、前述したようにロードスター全体でいえば初代はけっして多数派ではなく、初代以外はまがい物といったように否定するのもまた間違っている。
「R33GT-Rは失敗作」なんて言われている理由とは
同様に、初代が売れたといえるのは第二世代のスカイラインGT-Rだ。スカイラインGT-Rとしては3代目であり、第二世代では初代的な位置づけとなるBNR32型スカイラインGT-Rが誕生したのは、ロードスターと同じく1989年。280馬力の2.6リッター直列6気筒ツインターボエンジン、トルクスプリット型4WD「アテーサE-TS」を積んだパワートレインはインパクトが大きかった。
さらに日本経済もバブル崩壊前で若者も高額ローンを組みやすかったこともあって、BNR32は売れに売れた。累計生産台数は約4.3万台。日本専用モデルとは思えないほどだ。実際、その後のスカイラインGT-RはBCNR33が約1.6万台、BNR34が約1.1万台と日本経済の状況に合わせるかのように減っている。
そうした販売減について「実質的な2代目がダメだったからだ」という声もあるわけだが、メカニズムを見比べてみるとBCNR33ではアテーサE-TSも進化しているし、トラブルの芽を摘むように後輪の操舵機構も変わっているのは、ファンの方ならご存じのとおりだ。
メカニズムとしてBCNR33が劣っていたわけではないといえる。ただし、正常進化であるゆえの課題として、BNR32が登場したときほどのインパクトがなかったのも事実だ。280馬力自主規制によってエンジンが進化していることを数字で表現できなかったという時代背景は無視できないが……。
売れた売れないのは話もあるが、結論としては「初代は良かったシンドローム」の原因は、初代が登場したときのインパクトの大きさにあると考える。その意味では、初代が素晴らしいモデルだったと評価するのは「昔は良かった」的な懐古主義ではなく、新しいコンセプトやテクノロジーに初めて触れたときの「刷り込み」のような現象に近いといえる。
そうだとすれば、当時を知らない世代が、先輩世代の言い分を真に受ける必要はない。どんなモデルであっても、最初のインパクトが強いのは当然だが、自動車という工業製品はモデルを重ねるごとに進化するものでもあるからだ。
いずれにしても、好きなクルマに乗るのがクルマ好きとしては最高の幸せになるはずだ。そのときに周囲の声を気にする必要はない。自分が好きと思ったモデルを、好みのスタイルで乗ることで、カーライフを楽しんでほしい。
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みんなのコメント
良かった車は年代が進むと神格化されやすいですからね。
そうなると後がどれだけ頑張っても「アノ頃ハー」となりやすいんです。
ノーマルなら比べるまでもなく後発なのは明らかなのに、思い入れ優先で客観的に評価出来ない評論家が多かったのは彼らを信用しなくなるには十分過ぎるきっかけでした。