激しいブレーキングや衝撃に耐えうる設計
text:Jesse Crosse(ジェシ・クロス)
【画像】高級感だけではない【世界の高速スーパーカー5選】 全134枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
20インチのホイールを履いたクルマが480km/hで走行している場合、タイヤの形状にもよるが、ホイールは約3800rpmで回転している。ホイールとタイヤに作用する遠心力は非常に大きく、その重量に比例して増大する。
公園の回転遊具を想像すると簡単だ。のんびり回転しているときは外側にぶらさがっていてもいいが、思い切り回転させると持ちこたえられなくなる。体重が増えるほど体にかかる荷重も強くなる。
市販車の世界新記録となる455km/hを記録したSSCトゥアタラのような超高速車用のホイールは、できるだけ軽量かつ頑丈である必要がある。レーシングホイールの素材にはマグネシウム合金が使われているが、これは従来のアルミ合金よりもはるかに軽い。軽いホイールは慣性が少なく、方向転換がしやすいだけでなく、バネ下重量を減らすことができる。
トゥアタラの20インチホイールを供給した英国のダイマグ社は1975年に設立され、ラリー(グループBのMGメトロ6R4が初期の例)、F1、パリ・ダカール、ル・マン、インディ500などにマグネシウムホイールを供給することで知られるようになった。
同社最新ホイールの「BX-E」と「BX-F」は、米国のパートナー企業であるForgeline社が開発したマグネシウムまたは合金製のハブおよびスポークと、ダイマグのリムとのハイブリッドホイールで、ボルトにより結合されている。
オールカーボンファイバー(モノブロック)ホイールとは対照的に、ハイブリッドホイールの利点は、激しいブレーキングで発生する熱を合金製のセンターが伝導することだ。
リムは、684kgの打撃やワープスピードで発生する力にも耐えられる頑丈さを持ちながら、ホイール全体の重さはわずか9kgと非常に軽量にできている。
タイヤウェル(リムの中心線付近)は、リムの中でも応力が非常に強くかかる部分であり、最も応力破壊が発生しやすい場所だ。1000万ポンド(14億円)をかけた4年間の開発プログラムで、ダイマグはナショナル・コンポジット・センターと協力して、荷重がかかるポイントを正確に分析した。
最終的には、荷重を分散させ、従来の合金を粉砕するような衝撃も受け止めることができるようになった。タイヤのビードを支えるリムの外縁は中空になっており、そこを発泡体で埋めることでタイヤを保護するための緩衝エリアを作り、リムに剛性を加えている。
リムは、カーボンファイバーを型の中で圧縮し、高圧で樹脂を注入する転写成形法で作られている。カーボンファイバー自体は3軸(多方向性)繊維で、鋳型の中できれいにドレープする。ダイマグはパートナー企業と協力して、紫外線に安定した樹脂システムと高品質な仕上げを開発した。
スーパーカー向けの高価なものではあるが、ダイマグは規模の経済性によってコストを下げ、最終的には4~5万ポンド(約590~740万円)程度のスポーツカーへの装着が可能になると期待している。
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