新型車やフルモデルチェンジを受けるクルマは、ユーザーのみならず、販売店スタッフの心も躍らせる。そして販売店の営業マンは、新車の情報を見て、「これは売れそうだ」、「販売台数が伸びるだろうな」という予想をしながらデビューを待つ。
筆者も、販売店の営業マンとして仕事をしながら、たくさんの新型車に出会ってきた。そのなかで、売れるだろうと予想していたのに、フタを開けたら、売れ行きが微妙だったクルマはいくつかある。
クラウンSUVも出てたはず!!? 東京モーターショーに出るはずだったクルマたち トヨタ・レクサス・ダイハツ編
そこで本稿では、営業マンも見当違いを起こしてしまった、人気車になると思ったのに、販売が振るわなかったクルマを紹介していきたい。
文/佐々木亘
写真/TOYOTA、DAIHATSU、MAZDA
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レクサス RC
レクサス RC/2021年6月販売台数:75台
2014年5月にIS Cの販売が終了し、レクサスからクーペ・コンバーチブルが姿を消す。同年10月、RCが登場し、レクサスにクーペが復活した。
そもそもクーペやコンバーチブルは、台数が伸びるカテゴリーではない。しかし、求めるユーザーは一定数いて、コンスタントに販売台数は上がる。レクサスでも当時、SCやIS Cは、一定の人気を維持し続けていた。
RCの投入後、SCやIS Cからの乗り換え需要を含め、販売現場は大きく期待した。メーカーも研修に力を入れ、大きくプロモーションをおこなったが、RCはSC・IS Cオーナーから乗り換えてもらうことが少なく、盛り上がりに欠けるクルマとなってしまう。
伸び悩んだ一つの原因は、コンバーチブルモデルがないという点だろう。SCもIS Cも開閉式ルーフを備え、オープンカーとしても使用できる。レクサスの2ドアクーペは歴代、コンバーチブルだったが、RCだけには開閉式ルーフが与えられなかった。ここには兄弟モデルRC Fの影響もあるのだろう。
現在、レクサスのフラッグシップクーペであるLCは、RCの2倍近くの月販台数を誇る。LCとRCの大きな違いはコンバーチブルの有無だ。レクサスのクーペは、コンバーチブルが用意されているほうが、支持が集めやすい。
トヨタ エスクァイア
トヨタ エスクァイア/2021年6月販売台数:1007台
大人気ミニバンの、ノア・ヴォクシー兄弟の追加モデルとして登場したのがエスクァイアだ。
当時、ドル箱カテゴリーだった5ナンバーサイズのハイトミニバン。エスクァイアは、ノアを高級路線に変更して、トヨタ・トヨペット店で扱うことになる。両チャネルのスタッフは、筆者も含めて「これは売れる」と思ったはずだ。
しかし、内装の質感を高めたものの、「手頃さ」や「ファミリー感」が薄れ、売れ筋5ナンバーミニバンのイメージから外れてしまう。さらに、ノアの「Si」、ヴォクシーの「ZS」のような、人気の中心だった3ナンバーエアロ仕様もなく、販売も手詰まりになった。
クルマのコンセプトは悪くなかったので、マークII・クレスタ・チェイサーのように、しっかりと3兄弟として売り出してほしかったクルマだ。エスクァイアに3ナンバーモデルがあれば、ユーザーの印象は大きく変わったはずである。
ダイハツ ウェイク
ダイハツ ウェイク/2021年6月販売台数:1583台
2014年はライバル社のスズキがハスラーを登場させ、メガヒットを記録していた。同じ年にダイハツはウェイクを登場させた。
軽SUVが人気になり、ハスラーの爆発的ヒットから、タントをSUVテイストにしたウェイクも大ヒットするかと思った。しかし、ウェイクのSUV感は想像よりも薄く、タントとの違いも明確に見えづらくなってしまう。
ウェイクは、登場前の期待とは裏腹に、ハイトワゴンにも軽SUVにもなれず、失速を余儀なくされる。
同社のタントよりも「上を行く」というコンセプトで、ウェイクとなったようだが、販売台数はタントの下を行く存在になってしまった。その後ダイハツでは、タフトが誕生し、ウェイクの行き場は、ややなくなってしまったようにも見える。
マツダ MX-30
マツダ MX-30/2021年6月販売台数:240台(EVモデル8台含む)
2019年の東京モーターショーでお披露目されたMX-30。マツダ初のEV量産モデルと聞き、ショーモデル時点で、これは売れそうなクルマだと感じた。
正式発表時も、エクステリアデザインは、ほとんどショーモデルのままだった。しかしパワートレインはe-SKYACTIV G 2.0のみとなり、EVの登場は2021年1月と大きく遅れてしまう。
話題性が失われ、ショーモデルの勢いは失われてしまった。CX-30と比べると、強すぎる個性が、ユーザーを選ぶ形にもなってしまっている。
CX-3やCX-5が、好調な販売を記録していただけに、MX-30も売れると思ったのだが、他と比べて、少々アクが強すぎたようだ。EVの登場がもう少し早ければ、風向きは変わっていたのではないだろうか。
ホンダ 5代目オデッセイ
ホンダ 5代目オデッセイ/2021年6月販売台数:1863台
多人数乗車=ワンボックスという常識を打ち破り、ミニバンというカテゴリーを代表するクルマとなったオデッセイ。初代から3代目までは、新しいコンセプトが受け、大人気となったが、4代目でライバルのスライドドアミニバンに対して後れを取ってしまう。
そこで、5代目オデッセイは、走りの良さを残しつつも、ルーフを高くし、スライドドアを採用した。低ルーフとヒンジドアという、オデッセイの特徴を2つ捨てる形で、ライバルに再び挑戦状を叩きつけたわけだ。
人気ミニバンと同じ装備となり、5代目オデッセイは「鬼に金棒」と思われていたが、既存のユーザーからは「こんなのオデッセイじゃない」と敬遠されてしまう。結果、販売台数は回復しなかった。
そして、2021年末、狭山工場の閉鎖に伴い、オデッセイの名前も消えてしまう。「らしさ」が消えたオデッセイは、ラインナップからも姿を消す。
◆ ◆ ◆
メーカーは販売店やユーザーの声に、しっかりと耳を傾けて、売れるクルマを作っている。しかし、なかには経験則やニーズがハマらないクルマもある。
この傾向は、先代を超えようとして開発されたクルマに多い。単純なクルマの出来も重要だが、時には脈々と受け継がれた歴史や個性を、引き継ぐ潔さも大切だろう。
売れると思ったのに売れなかったクルマには、歴史の1ページを少々読み違えた、慌て者が多く存在するようだ。
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みんなのコメント
RCはこのクラスのクーペなら輸入車を選ぶ人が多い。
エスクァイアは価格が上なのにノア・ボクに対して決定的な差がない。
ウェイクは軽として、大きすぎ、重すぎ、高価すぎ。
MX-30はスタイル以外に不便な観音開きしか大きな特徴なし。
オデッセイはホンダのポリシーは素晴らしいが、ミニバン人気の流れに逆行していた。
というあたりでしょうね。