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愛車の履歴書──Vol40. 木村多江さん(後編)

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愛車の履歴書──Vol40. 木村多江さん(後編)

愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第40回。後編は、俳優の木村多江さんが憧れのイギリス車と共演!

サーブの次に選んだフランス車

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前編で記したように、木村多江さんにとっての初代サーブ「9-3」は、20代後半から30代前半にかけての苦楽をともにした相棒のような存在だった。

【前編はこちら】

「サーブに乗るようになって5年目くらいだったと記憶していますが、エンジンを掛けるときに“ブーン”というすごい音がして、『もう動かさないでくれ』と、悲鳴をあげているように聞こえたんです。修理をお願いしたところ、『これは本当にお金がかかるし、お金をかけても完璧に直すことは難しいから手放したほうがいいでしょう』と、言われてしまい……本当に最後なんだなぁ、と、思いました。それで、泣く泣くサーブを手放すことに決めました」

次のクルマを選ぶにあたっての条件は、小まわりが利いて駐車がしやすいことと、コンパクトでも個性があることのふたつだった。こうした条件をインプットしてリサーチをおこなうと、プジョー「307」が候補に上がった。

「前のサーブ9-3は硬い感じが格好よかったんですが、プジョー307はエレガントさがあって、こういうクルマが似合う女性になりたいと思わされました。本当にきれいなブルーのクルマで、気に入って3年ぐらい乗ったんです。結婚することになって、駐車場の関係で私のプジョーをマネージャーさんに譲ることになったんですが、マネージャーさんが乗るようになったらすぐに壊れちゃって、やっぱり私のことが好きだったのね、って勝手に思いました(笑)」

プジョー307は、2001年から2008年まで生産されたモデルで、フォルクスワーゲン「ゴルフ」と同じサイズ感のハッチバックだ。ステーションワゴンやCC(クーペ・カブリオレ)といったバリエーションも用意されていたけれど、木村さんが乗っていたのはベーシックな5ドアハッバックだ。

サーブ9-3とおなじように、木村さん以外が運転すると動かなかったり壊れたりするあたりが不思議だ。木村さんに特別な力が宿っているのか、それとも、クルマに並々ならぬ愛情を注いでいるのか……。

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「映画に出てきそうなちょっと古い、大きなキャデラックでした。キューバとかで走っていそうなスタイリングでした」

ここで過去のキャデラックの写真をいくつか検索すると、1967年に発表された6代目のキャデラック「フリートウッド・エルドラード」に雰囲気が近かったという。

「最初はちょっと音が大きくて恥ずかしいと感じていましたが、段々とその音が愛おしく感じるようになりました。少しクセがあるクルマのほうが好きになるのかもしれません」

華奢な木村さんが、1960年代の巨大なキャデラックを運転している姿は、想像するだけで格好いい。そしてお子さんが生まれてからは、ファミリーカーとしてアウディなどを乗り継いできたという。

では、いま乗ってみたいのはどんなクルマですか? と、訊くと、「ちょっと古いジャガーですね」という答が返ってきた。なかでも「XJシリーズ」が気になっているそうだ。

「サーブ9-3に乗っていた頃、ジャガーの運転席から60代から70代の女性が降りてこられたんです。その光景を見て、なんて素敵なんだろう! と、感動しました。私もいつかジャガーが似合う女性になりたいと思ったことを覚えています」

ジャガーXJシリーズの歴史は、1968年にデビューしたXJ6、いわゆるシリーズIに遡る。1986年に発表されたXJ40型、1994年に登場したX300型、2003年のX350型と、メカニズム的にはフルモデルチェンジのたびに大きく進化したものの、基本的なプロポーションは踏襲している。

そして2009年に発表されたX351型で、これまでのXJから大変身を遂げた。

撮影のために用意された1993年型のジャガーXJ(XJ40型)をしげしげと見つめながら、木村さんは「グレーのインテリアがものすごくセンスがいいですね」と、つぶやいた。

「私もいずれはハイブリッド車とか、電気自動車に乗るようになるんだと思います。先日、フランスに行ったときにも、たくさんの電気自動車が充電をしている光景を目にしまして、『こういう時代になりつつあるんだなぁ……』と、実感しました。でももう少しだけ、エンジンを吹かす音を楽しませてもらいたいというわがままな気持ちもあって、だから最後のエンジン車にジャガーのようなクルマに乗れたら嬉しいです」

ここから木村さんは、ジャガーXJに乗るとしたらメインテナンスはどうなるのか? 部品はあるのか? と、質問を重ねた。ジャガーXJの部品はイギリスから手に入るし、熟練のガレージがいくつもあって面倒を見てくれるはずと伝えると、安堵したようにうなずいた。いつの日か乗ってみたいと、心からジャガーXJに憧れていることが伝わってくる。

ジャガーが数年後には電気自動車しか作らなくなることや、自社のヴィンテージモデルを扱う部署が、過去の名車を電気自動車にコンバートするサービスを提供していることを伝える。すると、「それもいいですね」と、目を輝かせた。ジャガーXJと木村多江さんの組み合わせは本当に絵になっていて、もし電気自動車のジャガーXJが実現したら、真っ先に取材を申し込みたい。

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【愛車の履歴書 バックナンバー】
Vol1.市毛良枝さん 前編/後編
Vol2.野村周平さん 前編/後編
Vol3.宇徳敬子さん 前編/後編
Vol4.坂本九さん&柏木由紀子さん 前編/後編
Vol5.チョコレートプラネット・長田庄平さん 前編/後編
Vol6.工藤静香さん 前編/後編
Vol7.西内まりやさん 前編/後編
Vol8.岩橋玄樹さん 前編/後編
Vol9.吉田沙保里さん 前編/後編
Vol10.板野友美さん 前編/後編
Vol11.常盤貴子さん 前編/後編
Vol12.永山瑛太さん 前編/後編
Vol13.菊地英昭さん THE YELLOW MONKEY / brainchild’s 前編/後編
Vol14.岸谷五朗さん 前編/後編
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Vol40.木村多江さん 前編

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・冨沢ノボル スタイリング・間山雄紀(M0) 編集・稲垣邦康(GQ)

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