開幕近づくスーパー耐久は例年以上の熱戦に期待大!
吹く風は相変わらず冷たいものの、快晴に恵まれた2月23日。富士スピードウェイではシーズン開幕を前に、スーパー耐久の公式テストが開催されました。先立って発表された2022年シーズンの年間エントリーリストでは、61台もの参加が明らかに。今回のテストにはそのうち39台が顔を見せ、3月19日(土)~20日(日)の開幕戦まで残り3週間余りとなったタイミングもあってか、熱心に走り込みを続けていました。
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注目マシンも多く見て楽しめる要素が大幅アップ
スカイラインGT-Rが圧倒的な強さを見せ、シビックとレビン/トレノがドッグファイトを演じていたグループAによる全日本ツーリングカー選手権(JTC)に対して、アマチュアにも門戸を広げたツーリングカーレースがありました。いわば参加型のツーリングカーレースとして、1990年に始まったN1耐久シリーズを源流とするスーパー耐久シリーズは、近年FIA-GT3やGT4、あるいはTCRといった世界的な新規定による車両を受け入れるようになり、参加型としてだけでなく“観るレース”としての魅力が随分アップしてきました。
3月19日(土)~20日(日)に開催される鈴鹿5時間耐久レースで開幕するスーパー耐久シリーズ 2022 Powered by Hankookでは、さらにその“観るレース”としての魅力がアップすることになりました。これは昨年の最終戦でも公表されていましたが、これまでトヨタが支援するORC ROOKIE RACINGがエントリーしていただけのST-Qクラスに、マツダ(MAZDA SPIRIT RACING)とSUBARU(Team SDA Engineering BRZ CNF Concept)が登場したのです。
富士スピードウェイで行われた公式テストでは3台のニューカマーが走行。ORC ROOKIE GR86 CNF ConceptとMAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio concept、BRZ CNF Conceptが初顔合わせとなりました。GR86 CNF ConceptとBRZ CNF Conceptはバイオマスを由来とした合成燃料を、MAZDA2 Bio conceptはバイオ燃料であるユーグレナ(どちらもカーボンニュートラル燃料のひとつ)を、それぞれ使用してレースを戦うことになります。
3台のなかでも注目すべきはGR86 CNF Conceptでしょう。ベースモデルではBRZと同様に2.4Lのフラット4を搭載していますが、GR86 CNF Conceptでは1.4Lの直列3気筒エンジンをターボチャージャーで過給しています。
ターボ係数を掛けると約2.4Lとなり、BRZ CNF Conceptや、ST-4クラスのGR86/BRZと“同じ土俵”に立つことも可能になってきます。23日の公式テストは、ともに今回が実質的なシェイクダウン。ベストタイムこそGR86 CNF Conceptが1分53秒454まで詰め、対するBRZ CNF Conceptは1分56秒台に留まっていたため、2秒7ほどのアドバンテージを見せつけていました。
それに気温や路面温度が低すぎたことから、実戦を占うにはデータ不足。何よりもメーカー系のチームが本気で手掛けてくれば、タイムは大きく短縮されるはず。
1.5L直4のターボディーゼルであるMAZDA2 Bio conceptはメカニズム的には2台に対してビハインドを背負っているのは間違いありませんが、同じST-Qクラスの車両に対して負けっぱなしになるとも思えず、何よりも大きく技術が磨かれることは間違いありません。
さらに昨年から参戦していたCorolla H2 Conceptも、給水素に大きく時間がかかることで大きなハンディを背負っているのですが、こちらもパフォーマンスが大きくアップすることが期待されています。やはりレースは技術を磨く場なのです。
「レースは走る実験室」をビール片手に観戦するのも悪くない
そう考えていくと、かつて本田宗一郎さんが口にしていた「レースは走る実験室」というフレーズが思い起こされます。ホンダが2輪ロードレースの世界GPやF1GPに挑戦を始めたころは、よりハイパワーを求めての実験が続けられましたが、現在では環境技術のひとつとして水素やバイオマスを由来とした合成燃料などのカーボンニュートラル燃料を研究する場としては最適なものとなります。
世界耐久選手権(WEC)のシリーズ戦としてだけでなく、今もスポーツカーレースの最高峰とされるル・マン24時間レースでは、そんな新技術にトライする場として55台の出走枠に加えてガレージ56という特別枠を設けて未来の技術を探る場としていました。
昨年から創設されたスーパー耐久のST-Qクラスは、「シリーズを統括するスーパー耐久機構(STO)が参加を認めたメーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両により争われるクラス」に定義されています。初年度となった昨年は、ORC ROOKIE RACINGが市販レース車両であるGT4仕様のGRスープラを先行開発するためにエントリーしていて、直接的にはこれがクラス設立のきっかけとなりました。6月に富士で行われたシリーズ第3戦の富士24時間耐久レースでは、ORC ROOKIE RACINGからCorolla H2 Conceptがデビューしています。
レースファンやクルマ好きだけでなく、広く関心を集めることになりました。まさに日本版のガレージ56が誕生した瞬間でした。
新たな目標に向かって技術を磨いていくのは、クルマ好き、レース好きにとってもウェルカムですが、もちろんスーパー耐久の魅力はそれだけではありません。日産GT-RやレクサスRC-F、あるいはポルシェ911やメルセデスAMG、アストン・マーチン・バンテージAMRなど内外のスーパースポーツカーのFIA-GT3仕様から、トヨタ・ヤリスやホンダ・フィットなどのコンパクトハッチまで、さまざまなクラスの車両が、その持てるパフォーマンスを絞り出して熱戦を繰り広げることが大きな魅力となっています。
そして現在日本では、これが唯一となっている24時間耐久レースも、スーパー耐久シリーズの大きな魅力となっています。取材していても充分に楽しめるレースですが、富士の24時間は仕事を放りだし、ビール片手にバーベキューを頬張りながら観戦するというのも手かな。そんな想いを馳せることになったスーパー耐久の公式テストでした。
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