トヨタは昨年5月にカローラの2Lエンジン車を限定500台で発売したのに続き、今年も4月にカローラの特別仕様「アクティブライド」を500台限定で発売。また、ホンダから3月に登場した自動運転レベル3のレジェンドはリース契約ながら100台限定だった。
輸入車の場合は、特別仕様車が限定台数で発売されることが多い。
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また過去には、2015年に先代型のシビックタイプRが750台限定で抽選販売になるほど人気を集めたのは記憶に新しい。
限定車といってもさまざまなケースがあるわけだが、そもそも限定台数で販売するのはなぜなのか? 台数限定にしなければ、もっと売れそうなクルマもありそうだが……。
いろいろワケがありそうな台数限定車の裏事情に、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が迫ります!
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、HONDA、Mercedes-Benz Japan、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】なぜ台数限定!? もっと売れそうなクルマもあるのに……限定車のカラクリに迫る!!
■特別仕様車には売り続けるモデルのほか、限定車もあり!
ヴォクシー 特別仕様車 ZS煌III。特別仕様車とうたってはいるが、大抵はいつでも購入できる
特別仕様車は「特別」な「仕様」だから、普通のグレードとは価値観の違うクルマになるだろう。ところが実際は、低価格のグレードに、上級装備を割安に加えた「お買い得車」が多い。
特別仕様車としながら、常に販売しているタイプもある。例えばヴォクシー「ZS煌」は、特別仕様車ではあるが、たいていいつでも購入できる。
アルファードの高人気に押されて売れゆきを激減させたヴェルファイアでは、2021年4月下旬の改良以降、既存のグレードを廃止して特別仕様車の「Zゴールデンアイズ」のみを扱う。
しかしその一方で、販売台数を限定した特別仕様車もある。まさに「特別」な「仕様」だが、「なぜ限定にするのか」という疑問も生じる。
クルマを開発するには、既存のグレードでも特別仕様車でも、相当な投資が必要だ。そうなると生産台数を増やしたほうが、1台当たりが負担する開発費用が減って効率を高められる。
そのためにヴォクシーのZS煌などは、細かな仕様を時々変えながら、長期間にわたって販売を続ける。セレナの特別仕様車「Vセレクション」のように、同等の仕様がXVやハイウェイスターVとしてグレード化されたケースもある。
■特別仕様車には他グレードの販売促進効果も
2020年5月に500台限定で販売されたカローラ ツーリング 特別仕様車 “2000 リミテッド”
それなのに効率の下がる限定にする理由は何か。
カローラツーリングは、2020年5月に、RAV4やハリアーと同様の直列4気筒2Lエンジン(M20A-FKS型)を搭載する「2000リミテッド」を500台限定で設定した。2021年4月にも、外観のアレンジを変えた2Lエンジンのアクティブライドを500台限定で発売している。
2Lエンジンを搭載するカローラツーリングの特別仕様車を500台限定で設定した理由をトヨタに尋ねると、以下のように返答した。「お客様に特別感を持っていただき、貴重な1台をお届けするため、量産ではなく台数限定とさせていただいた」。
トヨタの販売店に、カローラツーリングの特別仕様車を500台限定で設定したメリットを尋ねると以下のように返答した。
「カローラツーリングのアクティブライドは、4月2日に正式発売されたが、20日の時点でほぼ売り切れた。ここまで人気が高いと、もう少し多く生産してもいいと思うが、限定500台だから急いで購入されたお客様も多い。話題作りの効果もある。
2Lのアクティブライドを目当てに来店され、予算がオーバーするので(アクティブライドの価格は266万円)、1.8LのW×B(236万6000円)を購入されたお客様もいる」。
2021年4月に500台限定で販売されたカローラ ツーリング 特別仕様車 “アクティブライド”
このように2Lのアクティブライドは、ほかのグレードの販売促進効果も生み出した。
ホンダの商品企画担当者は、以下のようにコメントした。
「販売台数を限定して特別仕様車などを設定する背景には、車種によってさまざまな事情がある。特別なエンジンやメカニズムを搭載した高性能車は、もともと大量生産は難しく、台数を限定することが多い。またお客様の数(市場の規模)に基づいて、生産台数を限る場合もある」。
例えばシビックタイプR、WRXのS208などは、価格も高く特別なスポーツカーに位置付けられる。ユーザーの数が限られ、なおかつ搭載されるメカニズムも大量生産できるものではないから、台数を限定して販売された。
■限定生産は安全性向上のための手段!?
ホンダ センシング エリートを搭載したレジェンドは100台限定生産として登場した
特別仕様車ではないが、ホンダセンシングエリートを搭載するレジェンドも100台の限定生産だ。2021年3月4日に発売され、4月下旬時点で約70台が契約されたという。
高速道路上の渋滞(作動速度の上限は時速50km)では、いわゆる自動運転レベル3を可能にした。この時にインパネの高い位置に装着された車載モニター画面で、TVやDVDなどを鑑賞するなら支障はない。
また運転支援機能としても、ドライバーがステアリングホイールを保持しないハンズオフ制御を幅広い領域で実施できる。予めスイッチを入れておくと、先行車に追い付いた時の車線変更も自動で(ドライバーがステアリングホイールを保持しない状態で)行う。
ただし価格は1100万円で、契約は3年リースのみだ。販売店によると「リース料金は1カ月に約29万円」だから、3年間(36カ月)であれば1044万円に達する。これだけの金額を支払って、3年後には車両を返却せねばならない。
100台限定とした背景には、ホンダの「大量に売りたくない」意図があるようだ。ハンズオフを車線変更まで含めて長時間にわたり継続できる制御も含めて、ホンダセンシングエリートは未経験の技術だから、何が発生するかわからない。
例えば先般、北米で起こったテスラの死亡事故では、運転席にドライバーが座っていなかった可能性も指摘されている。動画サイトを見ると、運転席に誰も座らずに、テスラがオートパイロットによって走行している動画も掲載されている。
きわめて危険な誤った使い方だが、世の中には、このように利用するユーザーも存在するのだ。現在の技術では、ドライバーに運転を戻すこともあるから、すべてを車両に任せられる水準の自動運転ではない。前述の誤った使い方で交通事故が発生した場合も、責任はドライバーに生じる。
それでも上記のような使い方で人身事故の加害者になれば、メーカーが道義的な意味において、社会的な責任を問われることは充分に想定される。なぜなら限定された「条件付き」としながらも「自動運転車(限定領域)に適合する」とホンダが説明しているからだ。
従ってレジェンドのホンダセンシングエリートも、複数の安全機能を備える。万一故障が発生した時は、通信機能によってメーカー側が把握できる。
そして100台の限定販売であれば、最悪の場合、全車両の走行を停止させて回収することも可能だ。つまりレジェンドハイブリッドEXホンダセンシングエリートの100台限定は、システムの安全性を高める最終手段として機能する。
■同じ『限定車』でもさまざまな理由が
100台限定で販売されたベンツ特別仕様車 GLC 220 d 4MATIC クーペ マグノナイトエディション
このほか輸入車も特別仕様車を台数限定で用意することが多い。メルセデスベンツの販売店では以下のように述べた。
「GLCクーペには、マットグレー(艶消し塗装)の特別仕様車を限定100台で設定した。100台ならば希少性も感じられ、特別なクルマという印象も強まる。またマットグレーの色彩は、手入れにもコツが必要で、大量に販売できる一般的な色彩ではない。そこで台数を抑えた。
また装備をシンプルにして価格を下げた特別仕様車を設定することもある。販売に弾みを付けるカンフル剤としては有効だが、長く売るとブランドの安売りになってしまう。そこで販売台数を抑える」。
以上のように販売台数を限定する背景には、さまざまな理由がある。あえて希少性を狙う特別仕様車もあるが、最近はもっと切実な「たくさん売るのは難しい」という理由で台数を抑えることが多い。
台数を限定した特別仕様車などを設定する背景には、クルマ業界の現状も色濃く反映されている。
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みんなのコメント
安価なスポーツカーがなくなった文句はメーカーでなく国や偽善者に言え
美談に着色したことしか言えないわな。
実際は他社の関係者がコレを手に入れて
リバースエンジニアリングをされるのがイヤだから
リース扱いで流通する台数を制限して
行方が分かるようにしたんだろ。
つまりまだ量産の段階ではなく試作車。