日産期待のスーパーハイトワゴン軽自動車のルークスが鳴り物入りでデビューしたのは2020年2月25日(発売開始は3月19日)。
販売開始から半年が経過するが、最新のスーパーハイトワゴン軽自動車という割りには販売に突き抜けた感がないのはなぜなのか?
日産最大SUVアルマーダ 「戦艦」の名を持つフルサイズ車が岐路に立っている!!
販売開始とコロナ禍が重なってしまったという不運はあるが、それはライバルたちも状況は同じで、新しいだけ有利に思えるが、販売台数は伸び悩んでいる。
2020年8月までの月販平均台数は列記すると以下のようになっている。
■ホンダN-BOX:1万6489台
■スズキスペーシア:1万1156台
■ダイハツタント:1万563台
■日産ルークス:6335台
最新モデルのルークスがトップ3に食い込むどころか、大きく差をつけらているのだ。
ルークス、それから共同開発車のeKスペース、eKクロススペースともクルマの評価は高く、ファンが待ち望んだクルマだったはずだ。
なぜ突き抜けられていないのか? 新車効果が短くなっている昨今、ルークスに飛躍の目はあるのか? この点について渡辺陽一郎氏が考察する。
文:渡辺陽一郎/写真:NISSAN、HONDA、SUZUKI、平野学
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国内市場はスーパーハイトワゴン軽自動車が席巻中
2020年2月25日に発表されたルークス。旧型はデイズルークスという車名だったが、デイズがとれてルークスとして独立
ルークスは全高が1700mmを超える背の高い軽自動車で、後席のドアはスライド式だ。
今の国内市場では、スーパーハイトワゴンと呼ばれるこのタイプの軽自動車が、一番の売れ筋カテゴリーになる。新車として売られるクルマの40%近くが軽自動車で、軽乗用車に限ると、半数近くをスーパーハイトワゴンが占める。
そのために国内の販売ランキングを見ても、上位には軽自動車のスーパーハイトワゴンが並ぶ。直近の2020年8月のデータでは、1位:ホンダN-BOX、2位:トヨタヤリス、3位:スズキスペーシア、4位:トヨタライズ、5位:ダイハツタントであった。
1/3/5位は、すべて軽自動車のスーパーハイトワゴンが占める。2020年6月はトヨタの小型車が入らず、1~3位を軽自動車のスーパーハイトワゴンが独占した。
コロナ禍により絶対王者のN-BOXも販売台数を落としているが、圧倒的な強さを見せ、コンスタントに1万5000台レベルを販売する化け物
ルークスは早くも売れ行きが下降傾向!?
そこで気になるのが日産ルークスの売れ行きだ。2020年3月19日に発売された新型車なのに、売れ行きが低迷している。
コロナ禍の影響がどうにか収まった2020年6月における軽自動車の販売ランキング順位は、N-BOXとスペーシアに続く3位であった。
7月は、N-BOX、スペーシア、タント、ムーヴ&同キャンバス、ハスラーにも抜かれて6位まで後退した。8月の順位も変わらず6位。
ライバル車が現行型に刷新されたのは、N-BOXが2017年、スペーシアは2018年、タントは2019年だから、ルークスは新しい。それなのに早くも新型車としての豊富な需要が一巡して、売れ行きが下降傾向に入った印象を受ける。
リアデザインはスッキリしてスポーティ。背の高さを感じさせないデザインはユーザーにも好評だ
スーパーハイトワゴン軽自動車では、N-BOXの強さは相変わらずだが、スペーシアがタントを逆転して2位に浮上。ルークスは4位
ルークスの商品力は強力なライバルと比べても高い
ただしルークスの商品力は、三菱が取り扱う姉妹車のeKスペース&eKクロススペースを含めて十分に高い。
エンジンとプラットフォームは、2019年に登場したデイズと同様に新しく、動力性能と走行安定性は軽自動車として十分に満足できる。後席の座り心地は硬いが、チャイルドシートを装着するなら問題ない。畳めば自転車も積める広い荷室に変更できる。
背の高さを生かしたスペースユーティリティに加えてリアシートを倒した時の利便性はライバルにまったく負けていない
そして衝突被害軽減ブレーキは、センサーにミリ波レーダーと単眼カメラを使い、ドライバーの死角に入る2台先の車両も検知できる。前方で危険が生じた時、早い段階でドライバーに警報を発することが可能だ。
ペダルの踏み間違い事故を防ぐ誤発進抑制機能は、前後両方向に対応した。緊急時の救援依頼などを行えるヘルプネットのSOSコールも用意している。運転支援機能のプロパイロット装着車も選択できる。軽自動車でありながら、先進機能を充実させた。
数々の安全装備が充実しているルークスだが、ハイトワゴンのルークス同様に、軽自動車ながら高級車の装備のヘルプネットを設定している
アラウンドビューモニターは車庫入れが苦手という人にとっては重宝するアイテムで、他メーカーに先駆けて日産が商品化
ルークスの伸び悩みは日産の販売規模の限界!?
そこで日産の販売店に、ルークスやほかの日産車の売れ行きについて尋ねた。
「ルークスは、従来型(デイズルークス)からの乗り替えが多いですが、この需要は最近になって落ち着きました。今ではコンパクトカーのキューブ、あるいはセレナからダウンサイジングされるお客様が増えています。またルークス以上に、ノートとセレナの人気が根強いです」(日産販売店談)
N-BOXが好調に売れるホンダの場合、N-WGNの追加もあって、国内で売られるホンダ車の50%以上が軽自動車だ。その点で日産の軽自動車比率は、40%少々に収まる。軽自動車が増えているものの、ホンダほど高い比率ではない。
日産のセールスパワーがセレナに集中し、それがニューモデルのルークスに影響を及ぼしている点は否定できない。日産のセールスパワーの強化は急務
また日産では、国内販売台数が全般的に少ない。ルークスをフルモデルチェンジした今でも、メーカー別の国内販売ランキング順位は、トヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツに次ぐ5位だ。
2020年1~8月の販売累計で、日産車の売れ行きはトヨタの34%、ホンダの75%だから、日産の販売規模もルークスの売れ行きに影響しただろう。
ちなみに近年の日産の軽自動車販売台数は、おおむね1年間に18万~20万台で推移している。ホンダは34万~37万台だ。各メーカーとも、それぞれ年に応じて新型車を投入しているが、年間の販売推移を見ると大きな変動は生じていない。
新プラットフォームの採用により走りはスーパーハイトワゴン軽自動車でトップレベル。特にNAエンジン搭載モデルの走りは劇的に進化
軽自動車はコンスタントに売れることが重要
このような売れ方になるのは軽自動車の特徴でもある。日常生活のツールだから、新型にフルモデルチェンジしても、ユーザーが飛び付くように売れて、届け出台数が急激に伸びることはない。
その代わり優れた商品で価格も割安なら、ユーザーは車検期間の満了などに合わせて、確実に乗り替える。発売から時間を経過しても安定して売れ続け、次期型にフルモデルチェンジされるまで、販売台数をあまり落とさない。
ルークスの魅力は質感の高さにあり、特に走りの質感の高さは折り紙付き。リアシートの乗り心地は少し硬めだが、スタビリティが高い
その代表的な車種は、絶大な人気を誇るN-BOXだ。1カ月平均の届け出台数は、現行型が発売された2017年が1万8207台、2018年は2万156台、2019年は2万1125台となる。
2018年より2019年のほうが、売れ行きが上回った。発売から時間が経過するほど、売れ行きが伸びているのだ。
かつてワゴンRが軽自動車の販売1位だった時代も、同様の売れ方をした。新型の発売直後の届け出台数がいまひとつだから、「外観が変わり映えしないため、さすがに飽きられてきた」などといわれたが、数年後には軽自動車の販売1位になっていた。
王者N-BOXは2020年中にマイナーチェンジすると予想されている。電動パーキングブレーキの採用ほか、またまた魅力アップでライバルに差をつける
ライバルに対して存在感が薄れている!?
このような軽自動車の売れ方を考えると、現時点ではルークスの本当の人気を判断しにくいが、2020年7/8月における軽自動車の販売順位が6位に甘んじたのは気になる。
届け出台数も6月が9431台、7月は7958台と下がった。8月も6208台と低いが、お盆休みも入るので判断しにくい。
全高が1700mmを超えるスライドドアを備えた軽自動車は、各車種にメカニズムの特徴はあるが、外観が似通っていて違いもわかりにくい。
共同開発された日産ルークスの姉妹車に当たるのが三菱eKスペース&eKクロススペース。個性派だが、販売面では苦戦が続いている
最近は好調な売れ行きと相まって、N-BOX、スペーシア、タントの存在感が強く、ルークスの印象が薄れていることも考えられる。
スーパーハイトワゴンは外観や価格が似通ったクルマの集合だから、売り方や宣伝の仕方によっては埋没しやすい。
今はルークスハイウェイスターがエアロパーツを装着してスポーティに仕上げ、姉妹車のeKクロススペースは、SUV風のテイストにしている。
この設定は日産と三菱のブランドイメージに合っているが、今後はルークスにもスペーシアギアのようなSUV風の派生車種が必要かも知れない。
商品力を考えると、ルークスはもう少し売れていい商品だ。
スペーシアはSUVテイストのスペーシアギアを追加して販売絶好調。ルークスはエアロタイプのハイウェイスターをラインナップしているが、SUVタイプも欲しい
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