■クルマが水に浸かってしまった…どうすれば?
台風やゲリラ豪雨により、各地で被害が出ていますが、場所によっては道路への冠水が発生しています。
ある映像で確認したところ、道路上に20~30cmほどの冠水が発生した地域があり、その道では多くのクルマがかなりのスピードで往来していました。
「他のクルマも走っているし、急ぎの用事があるから…」という心理で走行してしまうことが多いと思いますが、実は水の中を走るという行為は非常に危険だということを理解しておく必要があります。
一般的に、「タイヤ半分以上が水に浸かった状態は危険域」だと言われています。
では、クルマが水に浸かった状態でどんなことが起きるのでしょうか。
【画像】「えっ…!」 これで「走行不能」に! 水かさの恐ろしさを見る!(26枚)
クルマは多くの人が「重い」という概念を持っていると思いますが、水位がタイヤの半分を超え始めると車体に浮力が発生しはじめ、徐々に路面から浮き始めることになります。
結果、タイヤのトラクションが発揮しなくなり、走行、制御が不能となります。
かつて筆者は、オフロード4WDで渡河をしている最中に深みにはまり、2t以上ある車体が簡単に浮いてしまい、流されかけた経験があります。
こういう状態で何が怖いかというと、クルマの制御不能はもちろんのこと、ドアに水圧がかかって開閉ができなくなります。
JAFのテストでは、水深60cmでセダンのドアがまったく開かなくなるという結果が出ています。
その時は幸いにも運転席の窓を開けたまま走行していたため、そこから脱出することができましたが、雨が降っている場合は窓を閉め切っていることがほとんど。
しかも、最近のクルマはほとんどが電気式のパワーウインドウなので、水に浸かった場合は故障する恐れが非常に高くなると思います。
JAFの調査によれば、水が車体のフロアを越えると電気系統が損傷し、電動スライドドアやパワーウインドウが動作しなくなると言います。
昨今のミニバンは、一部の車種の除いて最低地上高を低く設計しているので、こうしたトラブルが道路冠水時は高くなるといいます。
ちなみに、高電圧のバッテリーを積んだBEVやHVの場合は、冠水や浸水で乗員が感電してしまうことはありません。ただし、電気系統にトラブルが発生する可能性はエンジン車と同様にあります。
加えて、水の中を走行した場合、エアクリーナーなどの空気導入口からエンジン内に水が浸入して、それが原因で走行不能になることがあります。
ディーゼル車は構造が理由で水に強いと言われていますが、一方でエンジン内に高い圧力がかかっているため、内部に一度水が入るとそれが要因となって“ウォーターハンマー現象”が発生。
気づかずに走行を続けると、爆発のような現象が起きることがあり、非常に危険です。
前述のJAFのテストによれば、水深が30cmほどでもクルマの形状や速度によってはエンジンルーム内に水が入ることが分かっています。
SUVのようにロードクリアランスを多く持ったクルマでも速い速度で走行すると、エンジン内に水を吸い込む危険性は高くなります。
冠水した道路を走るリスクは、走行中のことだけではありません。停車後にも危険が潜んでいます。
クルマの取扱説明書や自動車メーカーのHPなどを見ると、冠水した道路を走った後は、バッテリーの配線を外しておくことが推奨されています。これは、火災のリスクがあるからです。
冠水した道路には、泥やゴミなどが浮遊していることが多いのですが、これがエンジンルーム内に侵入し、バッテリーのターミナルなどに付着する場合があります。
そしてそれらが乾燥し始めた頃に、通電が要因となって発火するケースがあるといいます。
もし、愛車で水の中を走った場合は、取扱説明書などを確認しながらバッテリーの配線を外しておくことがリスクヘッジになります。
なおいすゞは、「被水・冠水した恐れのある車両の取り扱いについて」以下のように呼びかけています。
「(被水・冠水した恐れがある車両について)キースイッチをONにしたりエンジンを始動することは絶対に行わないでください。以下の応急処置を行ってください。
1キースイッチをOFFにしてください。
2バッテリー端子のマイナス(-)側を取り外してください。
作業時には、プラス(+)側端子を布などで覆うなどして絶縁し、感電にご注意ください」
※ ※ ※
ちなみにBEVやHVの場合は高電圧がかかっていて危険なため、自動車販売店や整備工場などにできるだけ早く持っていくことをメーカーは勧めています。
クルマが安全に走れる水深は10cm程度と言われていますが、それ以下でも水の影響をうけるため操舵やブレーキの利きが低下します。
また冠水しそうな場所からクルマを移動することや、道路に冠水がある場合はクルマで出かけないというのが基本。
もしドライブ中にそういう状況になった場合は、アンダーパスには絶対に入らない、運転に自信がない場合は車両を路肩に寄せてカギを付けたまま駐車して徒歩で帰るということが肝要です。
また、いざという時のために、窓を割るためのライフハンマーを積んでおくことも大切です。
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