いまや水冷エンジンが主流だが……
バイクのエンジンは、シリンダー(燃焼室)の中でガソリンと空気を混ぜた混合ガスをギュッと圧縮し、点火プラグで燃焼・爆発させてパワーを生み出しています。そのためエンジンは非常に高温になりますが、それを冷却する方法として「空冷式」と「水冷式」があります(他に「油冷式」もアリ)。
「こんなのセローじゃない!」 復活を遂げたヤマハ「セロー250」の敵は「セロー」だった
現在、日本メーカーが生産する国内販売モデルは水冷エンジンが主流で、空冷エンジンはごく一部のレトロなスタイルのバイクや小排気量のスクーターのみになっています。とはいえ1980年代に入るまでは圧倒的に空冷エンジンが多く、水冷エンジンが増加したのはその後。いったいナニが起こったのでしょうか?
パワーにも乗り味にも影響する「ピストンクリアランス」
ルックス的には、空冷エンジンはシリンダーやシリンダーヘッドにエンジンを冷やすための冷却フィンが刻まれています。対する水冷エンジンは表面がツルっとして突起が無くシンプルですが、冷却水を冷やすためのラジエターを装備しています。しかし空冷と水冷は見た目だけでなく、エンジンの中にも違いがあります。
ピストンやシリンダーは熱によって膨張するため、エンジンが温まった状態で適正な隙間になるように、ピストンクリアランスが設定されています。そのため温度を管理しやすい水冷はピストンクリアランスが狭く(熱膨張時にキッチリ合わせた設計が可能)、温度管理しにくい空冷は広く設定する必要があります(熱膨張に対して余裕を持たせる)。
あくまで参考値ですが、水冷のピストンクリアランスは3/100mm程度で、空冷は5~7/100mm程度と言われています(市販車やレーサー、ピストンやシリンダーの材質などによっても異なる)。
ほんのわずかな違いですが、クリアランスが大きいとスロットルを開けた瞬間のレスポンスが鈍くなり(爆発した燃焼ガスが隙間からクランクケース方向に抜ける量が多い。これを「ブローバイ」と呼ぶ)、パワーも出しにくくなります。
しかしレスポンスの鈍さを良い方向に解釈をすれば「穏やかな特性」とも言えます。そのため、空冷エンジンはスロットルを開けやすく神経質にならずに乗れるから楽しい、味がある、と評価されるワケです。
エンジンレイアウトや排気量が同一で冷却方式だけが異なる、というバイクが存在しないので単純に比較することはできませんが、たとえばホンダの単気筒エンジンで比べると、空冷の「GB350」は水冷の「CB250R」より排気量が99ccも多いですが、最高出力は7馬力低いです。
カワサキの並列2気筒では、空冷の「メグロK3」(773cc:52馬力)と水冷の「Z650RS」(649cc:68馬力)も、似たような対比になります。スペックを競うなら、水冷エンジンの方が断然に有利です。
環境性能でも不利な空冷エンジン
とはいえライダーにも様々なタイプや好みがあるのだから、スペック重視の水冷だけでなく、空冷エンジン車のラインナップも増やせば良いのに……とも感じますが、そうはいかない事情があります。
じつはピストンクリアランスが広いと、前述した「ブローバイ」が増えてしまいます。またクリアランスの狭い水冷よりエンジンオイルが燃焼しやすいため排気ガスが汚れ、排気ガスを浄化する触媒(キャタライザー)も傷めやすくなり、昨今厳しさを増している排出ガス規制に対して非常に不利です。
近年の電子制御式燃料噴射(FI)システムは優秀なので排出ガス規制に対応するセッティングも可能ですが、それを行なうと出力やトルクが大幅に低下するため、スポーツバイクとしての商品性が下ってしまいます。
また水冷エンジンはシリンダーのウォータージャケットが「防音壁」の役割も果たすので、騒音問題でも有利です。反対に空冷の冷却フィンはエンジンの爆発に共振したり、ともすれば増幅するため音量的にも不利な部分があります。
このような理由で、空冷エンジンは動力性能だけでなく環境性能でも厳しい面が多く、ラインナップを増やすどころか、各種規制に対応できずに姿を消すパターンが少なくありません。
とはいえ空冷の灯(火?)は消えず
現在、日本メーカーの空冷エンジン車は極めて少数派になっています。国内販売モデル(生産中で、レース用車両除く)だと、ホンダは「GB350/S」と「スーパーカブ」シリーズ、「ダックス」や「モンキー」などの「125」シリーズが空冷です。
ヤマハはゼロ。スズキは「ジクサー150」が空冷で、原付1種/2種のスクーターは強制空冷方式です。そしてカワサキは「W800」と「メグロK3」が空冷エンジン車です。
とくにスポーツバイクでは空冷エンジン車はかなり寂しい状況と言えます……が、新型がまったくラインナップされないワケではありません。
記憶に新しいところでは、2023年10~11月に開催された『ジャパンモビリティショー』および2024年春の『モーターサイクルショー』で、カワサキが展示した「KLX230」、「W230」、「メグロS1」の3機種は空冷単気筒エンジンを採用しており、カワサキは国内導入予定と発表しています。
スペック重視のスポーツモデルでは難しいかもしれませんが、趣味の乗り物としてのバイクであれば、空冷エンジンの需要はまだまだ尽きないのではないでしょうか。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
全長4.3m! トヨタの斬新「スライドドアSUV」登場に期待の声! 超タフな「ゴツゴツ」デザイン採用した「小型ミニバン」が超カッコいい! “悪路走破性”も備えた「TJクルーザー」とは
「ヘッドライトが眩しいクルマ」なぜ増えた? 信号待ちで「ライト消さない人」が多数派になった理由とは? ヘッドライトの“新常識”ってどんなもの?
メリットなかった!? トヨタもホンダも「アイドリングストップ機能」廃止へ! 「使いにくい」の声も! どんな反響があった?
石破内閣不支持急増、斉藤国交相後任もまた公明党の中野氏起用へ[新聞ウォッチ]
日産が「新型セレナ」をまもなく発売! 超スゴい「高性能4WD」&地上高アップの「イーフォース」追加! 待望の「性能向上モデル」に販売店でも反響あり
レクサスの悩みは頂点「L」を冠した高額モデル4台の売れ行き低迷。期待の新型車はいつ発売?
約150万円! マツダの新型「5ドア・軽SUV」に注目! “鼓動”感じる「ターボエンジン」搭載&「大径ホイール」採用! 期待の「タフ顔モデル」フレアクロスオーバーとは!
直4・V6・V8……3気筒以外はほぼ偶数! クルマのエンジン気筒数の謎
マツダ「“軽”RX-7!?」に反響多数! まさかの「スズキ製」エンジンに驚きの声も! 上野美装「エフディーノ」まもなく登場
“100万円”以下で買える! スズキ「“7人乗り”ミニバン」に大反響! 「FRで5速MTは楽しそう」「レトロ感イイね」の声! “全長3.7m”で人気なインドの「イーコ」に熱視線!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント