初代フェアレディZはレースやラリーなどのモータースポーツで活躍した名車だ。国際ラリーではサファリラリーで優勝するなど多くの実績を持ち、1973年にスタートした世界ラリー選手権(WRC)では初めて優勝した日本車となった。
今回は国内ラリーに参戦したフェアレディZがプラモデルとして発売されたので、このラリー車でナビゲーターを務めた佐久間健氏に紹介してもらおう。
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文/佐久間 健、写真/日産自動車、ハセガワ、佐久間 健
[gallink]
■懐かしい思い出のZがプラモデルに
ハセガワからモデルアップされたフェアレディZ『1973年TACSクローバーラリー優勝車』。本文筆者の佐久間 健氏がナビゲーターとして搭乗していた車両だ
先日知り合いから写真の問い合わせがあり、1973年のTACSクローバーラリーの優勝車のフェアレディZを探しているという。
なんでも(株)ハセガワがラリー車のプラモデルを作るにあたって必要であり、その当時の写真を持っていないかという話であった。しかしこのラリー、ドライバーの横山文一選手のナビゲーターをしていたのがこの私で、撮影できないのだから当然写真をもっているわけがない。
ハセガワ ニッサン フェアレディ Z “1973 TACS クローバーラリー ウィナー”のキット内容
それに写真といっても今から48年も前のことで、当時の雑誌をみても、ほとんどがモノクロ写真でカラー写真はあまりないのだ。一番困るのは車に張られたステッカーの類で、特にラリーごとにはられるステッカーは主催者に付いたスポンサーのもので、カラー写真でないと当然色がわからないのだ。
なんといっても、この当時ラリー関係の記事を掲載していた雑誌の何誌かは休刊しており、出版社がなくなったケースもある。また雑誌にクレジットが入っていなくてカメラマンがわからなかったり、すでに故人だったりで、写真集めは困難だったという。しかし横山選手ほかの人たちの協力で何とか形になったようだ。
■こんなにかっこいい車でラリーを戦っていたのかと感慨もひとしお
今回モデル化されたフェアレディZの実車写真。残されている写真のほとんどがモノクロで不鮮明なものも多く、資料集めには苦労したようだ
発売されたプラモデルの箱を見ると、当時自分がこの車に乗って走った時の事が断片的に思い出される。何といっても50年近くも昔の話、改めてフェアレディZって車はかっこいい。自分が20代の頃にこんな車でラリーをやっていたことが思い出される。
また横山選手のドライビングだが、ギアチェンジの時に短いシフトレバーを手首で巧みにシフトする様が、横から見ていてとにかくかっこ良かった。
当時のラリーは、今のラリーと違って、SS(競技区間)方式ではなくアベレージラリーだ。そのため勝負所の峠道はなかなか守れないアベレージが与えられ、事実上現在のSSラリーの様だったのをおぼえている。
土煙をあげながら走るフェアレディZ。日本車として初めてWRCで優勝したZは当然国内ラリーでも人気のクルマだった
このZで何戦走ったかは、覚えていないが、サファリイン京都、PMCSラリークリサンティーモといったラリーに出場してそれなりの成績をあげていた。
このZがプラモデルになった経緯だが、まずZのラリー車としてモンテカルロ仕様がキット化され、続いてサファリ仕様が作られた。そして今回国内ラリーで当時一番成績の良かった横山Zが選ばれたということだ。
私もこのZに乗って優勝したのは当時光栄な事だと思ったが、今こういう形でプラモデルになったことも、あらためて光栄な事だと思う。
●解説●
完成品を手にする横山文一選手
現在のラリーはSS(Special Stage)と呼ばれる競技区間をいかに速く走るかを競うが、1970年代当時の国内ラリーはアベレージラリーと呼ばれる方式が採用されていた。これはコース図に指定の速度が書かれており、これを守っていかに正確に走るかを競うものだ。
そのためナビゲーターの役割は重要で、距離計をにらみ、タイヤの空転などを計算しながらドライバーに指示を出さなければならない。当時は車載コンピューターなどなく、ナビは計算尺などを駆使して計算を行っていた。
指定速度を守れないと減点され、もっとも減点の少ないチームが優勝となる。しかし勝負の分かれ目となる難所には守るのが厳しい速度が指定され、一番速く走ったラリー車の減点が少なくなるので、事実上のSS方式のラリーとなっていた。
* * *
佐久間 健/大学生のときに、初めてラリーに参加する。最初はドライバーだったが、のちにナビゲーターとなり篠塚建次郎、岩下良雄、高岡祥郎、横山文一、平林武らとコンビをくみ1986年には綾部美津雄とレオーネで全日本ラリー選手権のチャンピオンになる。
ラリーは1974年に初めてWRCのツールドコルスを取材。その後年に何回かWRCを取材し、1990年代にはWRC全戦を取材するようになる。全戦取材は2004年まで続いた。その他アジアパシフィック選手権、ダカールラリー、パイクスピークヒルクライムなどの取材も行う。
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