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ラリースポーツを名乗るマッスルカー フォード・タウヌス 20M RS 英・独・南アの合作 後編

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ラリースポーツを名乗るマッスルカー フォード・タウヌス 20M RS 英・独・南アの合作 後編

約250台と推測される貴重な20M RS

南アフリカで生産された、P7b型のフォード・タウヌス 20M RS。4速マニュアルのトランスミッションは、ドイツ仕様と変わらない。しかしオーナーのロイ・タウンゼント氏は、より現代的なフォード・タイプ9と呼ばれる5速MTへ換装している。

【画像】南ア生まれのマッスルカー タウヌス 20M RS MST Mk1と1969年の240Z、ルーチェも 全95枚

このクルマの前オーナーは、トランスミッションの取り付けで作業が滞っていたという。熱心なフォード・ファンの彼は、その問題を見事解決したのだった。

タウンゼントは、このオレンジ色の他に右ハンドルのタウヌスを数台と、フォード・コルチナナ XR6も所有する。英国タウヌス・クラブの幹部も務めている。南アフリカ製のタウヌス 20M RSは欧州に2台存在すると考えられているが、彼が両車のオーナーだ。

南アフリカで何台タウヌス 20M RSが生産されたのか、正式な数はわかっていない。彼の推測では、1969年から1972年までの間に約250台だったのではないか、ということだ。

オレンジ色の20M RSは、コレクションの上位にランクインするほど気に入っているという。2020年7月にアメリカ・フロリダ州で売りに出される以前から、6年ほど気にかけていたクルマだった。

最初のオーナーは購入後に37年も乗り続けており、タウンゼントは3番目のオーナー。乾燥し温暖な気候に恵まれ、インテリアやボディの状態は良好に保たれてきたらしい。

ところが、メカニズムには大々的なリビルドが必要だった。南アフリカや欧州各地から部品をかき集め、1年半近くを費やして完成させている。

ドライなノイズが高めるアメリカンな雰囲気

仕上がったのは、2021年に英国で開催されたクラシックカー・イベントの数日前。見事にAUTOCARの姉妹メディア、クラシック&スポーツカー・クラブ賞の審査員賞を受賞した。

3.0LのV型6気筒エセックス・ユニットはリビルド後に馬力が計測され、カタログ値と同じ146psの最高出力が確認されている。動力性能に不足はなく、5速MTを操れば大きなボディを活発的に走らせられる。

高回転域でパワーをみなぎらせる性格ではない。得意とする回転域は、2500rpmから5000rpmの間。4速MTより1段多いギアのおかげでクルージング時は400rpm低い回転数を保て、トランスミッションとの愛称は良い。

アクセルペダルへの反応は充分に鋭く、低回転域から26.3kg-mの太いトルクが湧き出る。シートに身体が押さえつけられるような加速力は得られないが、充分に楽しめるだけの余力はある。

V6エンジンは、特有のドライなサウンドを豪快に鳴らす。アメリカンなV8エンジンがイメージされて、ボディやインテリアが放つ雰囲気をまとめ上げている。

四角いボンネットの上部で膨らむエアインテークと、ゴロゴロとしたエグゾースト・ノイズ。ひと回り小さい、マッスルカーを運転している気分になる。そう考えると、南アフリカのタウヌス 20M RSはラリースポーツ的ではない。

南アフリカのフォードが生んだポニーカー

メカニズムとしては、通常の20Mと20M RSの間に大きな違いはなかった。若干硬いサスペンション・スプリングとホットなカム、ツインチョークのキャブレター程度だった。

家族で乗るフォードに変わりはなく、実感できた性能差といえば鋭い直線加速だけ。最初にドイツで登場したタウヌス 15M RSも、基本的にはラリースポーツという言葉のイメージで売ったモデルといって過言ではない。

数年後のエスコート RSでは、ボディシェルやエンジン、トランスミッション、サスペンションまで独自仕様だったのとは対照的。とはいえ、フォードが欧州のマスタングと呼んだカプリより、マッスルカーのイメージには近い。

四角くワイルドなスタイリングが広々としたインテリアを包み、トルクの太いV6エンジンが載っている。南アフリカのフォードは、意図せず魅力的なポニーカーを生み出したようだ。

テレビに映し出されるアメリカの暮らしに憧れた欧州や南アフリカの人々は、巨大なフォード・ギャラクシーに乗ろうとは考えなかった。このタウヌスは、市場に適した回答といえた。

ドライビング体験は至ってアメリカン。路上での注目度も低くはない。英国のエンジンにドイツのシャシーを利用し、南アフリカで生産されたフォードは、一味違うハイブリッドを堪能させてくれた。今という時代だからこそ、一層印象深い。

協力:英国タウヌス・クラブ、オールド・タイル・ワークス、バートン・アポン・ハンバー

フォード・タウヌス 20M RS(P7b型/1969~1972年/南アフリカ仕様)のスペック

南アフリカ価格:3442ランド(1969年時)/4万ポンド(約660万円)以下(現在)
販売台数:約250台(予想)
全長:4721mm
全幅:1756mm
全高:1464mm
最高速度:180km/h
0-97km/h加速:9.6秒
燃費:5.3-7.1km/L
CO2排出量:−
車両重量:1150kg
パワートレイン:V型6気筒2994cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:146ps/5200rpm
最大トルク:26.3kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

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