2020年7月20日、NISMO CARSは改良版となるリーフNISMO 20MY(2020年モデル)の発売開始を発表した。
2018年に登場したリーフNISMOは、空力性能を追求したスタイリッシュでスポーティなエアロパーツを備え、18インチの大径タイヤや専用サスペンションチューニングによって「人馬一体」でクルマをコントロールするハンドリング性能を持つ。
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さらに、専用VCM(ビークルコントロールモジュール)によって胸のすく加速感も味わえる、EVスポーツセダンだ。
今回、新たな性能向上パーツを追加し、より一層商品力を磨いた20MY型のリーフNISMOのハンドルを握ることができた。
本記事では、18MY(2018年モデル)に対してどのような点が進化したのかをご紹介しつつ、このクルマの企画開発責任者たちが、このクルマに込めたNISMOの想いにも触れていく。
文:吉川賢一/写真:池之平昌信
【画像ギャラリー】改良された2020年型リーフNISMOのスタイルと装備をチェック!
■2018年モデルからの進化ポイントは?
2020年7月20日より発売となったリーフNISMOの2020年モデル。2018年にデビューしたリーフNISMOの改良型だ
リーフNISMOが一番に訴求するのは、ダイナミックパフォーマンスだ。
発進の力強さやレスポンス、それを生かしたコーナーからの立ち上がり、強いブレーキングにも即座に反応する制動力、それでいてフラットな乗り心地も確保する。
NISMOの一貫性を持った「走り」の性能を実現するクルマだ。20MYでは、18MYで欲しいと感じていたところへ、見事に手を入れていただいていた。
そのひとつが、新世代デザインとなるRECARO製のフロントシートがオプションで用意されたことだ。デザインを一新し、新世代RECAROのシャープなシルエットをNISMOらしいレッドで強調し、サポート性の高さを表している。
2018年型と2020年モデルの外観の変更はわずかだが、走りは大きく進化した
これまでのリーフNISMOには、標準車リーフのフロントシートしかなく、ジュークNISMOやマーチNISMOにもついていたNISMO製のスポーツシートですら設定がなかった。
そのため、コーナリング中に身体が左右に振られるようなシーンでは、心もとなく感じたもの。
だが、この新型RECAROシートは背中が張り付くような抜群のホールド性であり、強めの横加速度を発生させても、身体が流されるようなことはなかった。
それでいて、身体が窮屈な感じもしない。肩甲骨を面で支えるよう内側へラインを寄せており、GT-R NISMOのシート形状にも近いという。サイドサポートは、サポート性を確保しつつも、乗り降りのしやすさを考えた高さで、邪魔にならない。
2020年型からオプション設定されたレカロシート。快適性を損なうことなく、しっかりと体をホールドしてくれる。2脚で37万2000円
オプション価格は、前席シート2脚で税込37万2000円、一脚あたり18万円弱と安くはないが、このシートがあってこそ、リーフNISMOは生きると断言できる。なお、シートヒーターも標準設定される。
そしてふたつ目は、ステアリングをクイックに変更したことだ。具体的にはステアリングのギア比を18.3から14.7へ、約20%も操舵角を減らした(※最小回転半径は5.4mを維持)。
この差は、ステアリングを切れば即座に気が付くほどの大きな違いだ。開発担当エンジニアへ聞くと、欧州向けのリーフに採用していたステアリングギアだという。
インテリアに赤い差し色を加えることで、NISMOモデルらしいスポーティさを演出。2018年モデルよりもクイックなステアリングレシオに変更された
車速を上げていけば、程よい重さにチューニングされた操舵力も相まって、軽快なハンドリング性能を発揮する。スイスイと連続コーナーを抜ける身のこなしに進化したことを体感できたとき、この改良は大成功だと感じた。
また、速度が上がってくると、ボディモーションは大きくなるものだが、クイックなギア比に合わせてバランスを取り直した専用サスチューニングが効いてくる。
フロントのバネ常数は14%、リアは25%、それぞれUPし、ダンパーの減衰力もバランスを取り直し、特にリアの伸び側減衰力を増加、さらに、リアのバンプラバーは、ウレタン製に変更したそう(ノーマルはゴム製)。
そのため、強めの旋回時には、ロールやピッチは発生するものの、リアがしっかりと車両の傾きを抑えるので、車体が浮き上がるモーションが起きにくく、安心感のあるコーナリングとなる。
強化スプリングを採用し、それに合わせてダンパーの減衰力をチューニングすることで、さらに軽快なハンドリングが与えられた
まるで運転が上手くなったような錯覚を覚えるのだ。
シフトポジションをDレンジからアクセル操作のレスポンスがさらに高まるBレンジに変更すると、いい意味でやんちゃな動きになることで連続コーナーでは思わず笑みがこぼれるほど面白い。
レーンチェンジなどで回頭モーメントを制御するインテリジェントトレースコントロール(IDM)もギア比に合わせて再適合、ロールダンピング(揺り返しでロールがぐらぐらと収まらない現象)を低減。
VDC(ビークルダイナミクスコントロール)も再チューニングし、コーナー出口で早めにTCS(トラクションコントロール)をカットするように変更をし、限界走行シーンでの性能が向上させたそうだ。
■リーフNISMOは「唯一無二の国産EVスポーツカー」だ
リーフよりも優れたアクセルレスポンスと加速性能を与えられたリーフNISMO。2020年モデルではブレーキ性能を向上。トラクションコントロールのセッティングもよりスポーティになった
リーフNISMO 20MYの車両本体価格は税込429万4400円、ベースになるリーフ X(税込381万9200円)に対し、約50万円高いという価格設定だ。
おすすめオプションとなるRECARO社製専用シートを加えると税込466万6400円にもなる。しかし、その価格に見合う価値は見出せる、と筆者は断言する。
リーフNISMOは、一般道のワインディングでも十分楽しめるが、もっと楽しむためには、限界に近い速度で走ることができる場が欲しくなる。
モーターの出力に変更はないが、VDC(ビークルダイナミクスコントロール)やIDM(インテリジェントトレースコントロール)のセッティングを変更しより楽しい走りを実現
そこで、恐れ多くも、NISMO CARSのCVE(チーフビークルエンジニア)長谷川氏へ質問をしてみた。
「リーフNISMOの走りをサーキットで楽しめるよう、購入してくれたお客様には、走行会の体験チケットなどを配るのはどうでしょうか」。
長谷川氏は、ニコリとした後、こう回答してくれた。
「NISMOでは、これからサーキットデビューをしたいというユーザーのため、有料のドライビングアカデミーを開催している。もちろんリーフNISMOも対象車種であり、同一車種で走ることができる場も用意していく」
2020年モデルでは、ホイールの開口面積を小さくすることで、ホイール表面を流れる空気の抵抗を軽減した
2020年後半、日産からは多くの新型車が登場する予定だ。そうした新型車にも、続々とNISMOバージョンを出す計画だという。
「e-4ORCEのアリアNISMOは出ますか?」の質問に対しては、「ノーコメント」だったが、どことなく「なくはない」という雰囲気を出していたのは見逃さなかった。
EVスポーツの先陣を切ったリーフNISMOは、「唯一無二の国産EVスポーツカー」だ。ロングツーリングやワインディング、サーキット走行と、ぜひお楽しみいただきたい一台だ。
2020年7月15日に発表した新世代クロスオーバーEVの日産アリア。果たしてNISMOバージョンは登場するか?
日産リーフNISMO主要緒元
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