英国を超えた自動車産業への偉大な貢献
フォード・モデルTがアメリカを自動車大国へ成長させたように、オースチン・セブンは英国の自動車産業へ偉大な貢献を果たした。生産を終えていた第二次大戦後も、景気回復を裏方で支えたといっていい。
【画像】クルマ産業へ偉大な貢献 オースチン・セブン 同年代のモデルと比較 ヒーレー100も 全127枚
今から100年ほど前、英国の自動車メーカーは手頃な価格のモデルを提供するため、熱心に開発へ取り組んでいた。しかし、走行が不安定だったり、安全性に問題を抱える例も少なくなかった。
そんななか、1922年にオースチンは小さな本物の自動車を生み出した。スチールとアルミニウムを組み合わせた構造を備え、家族4名が乗れるまともなボディを載せていた。4本のタイヤにはしっかりブレーキが与えられ、しなやかに動くサスペンションが支えた。
エンジンは現在でも主流といえる直列4気筒。夜道に備えて、電球によるヘッドライトも装備されていた。オースチン・セブンは、現代的な乗用車の基本形を完成させていた。
生誕から100年後、改めて対面してみると驚くほどボディは小さい。だが、当時の英国人は小柄な人が多かった。今以上に密な状況にも慣れていたから、全長2621mm、全幅1170mmというサイズでも批判が出ることはなかった。
もっとも、これから購入を考える場合は、自分がちゃんと乗れるか確かめた方がいいだろう。必要なら、同乗する予定の家族も。
現在のクルマで一般化した操作系を備える
小さなセブンは過去にない販売台数を記録し、オースチンを大きな自動車メーカーへ成長させた。その評判は世界中へ広まり、ドイツではBMW、フランスではローゼンガルト、アメリカではバンタムが、ライセンス生産を行っている。
ジャガーの前身といえるスワローも、セブンのシャシーに独自ボディを載せたモデルを提供していた。自動車黎明期にあった日本へも、積極的に輸入されている。
セブンで注目に値するのが、現在のクルマの運転で一般化している操作系を備えていたこと。前席の間にシフトレバーが配置され、ペダルは右からアクセル、ブレーキ、クラッチという順で足元に並んでいた。当時は、必ずしもこれが当たり前とは限らなかった。
とはいえ、運転には充分な練習が必要。クラッチは突然つながり、トランスミッションの変速には癖があり、ブレーキの制動力は充分とはいえない。可能なら、できるだけ生産後期のオースチン・セブンを選んだ方が賢明だろう。運転の難しさが大きく違う。
人気に後押しされ、ボディスタイルは多岐に及ぶ。4シーターのツアラーとサルーン、2シーターのスポーツとクーペのほか、カブリオレには2シーターと4シーターの両方があった。2シーターのバンもあり、英国には様々なセブンが生き残っている。
構造が単純だったため、毎年改良も重ねられた。オリジナルに拘るなら、リンゼイ・ミルズ氏著のオリジナル・オースチン・セブンという本を一読する価値はある。
すべてを完璧に整備・調整することが大切
現在までの1世紀に渡って、ボロボロのセブンをベースにオーナーが独自の改造を加えた、スペシャル・モデルも製作されてきた。英国のクラシックカー市場には、それらも多く流通している。オリジナルに忠実な例は、むしろかなり珍しい。
セブンを快適に運転するポイントは、すべてを完璧に整備・調整すること。エンジンとブレーキ、ステアリングホイール、サスペンション、トランスミッションなどの摩耗や不調は、近年に作られたモデル以上に明確な影響を及ぼす。
すべてが整えば、オースチン・セブンの運転は非常に楽しい。部品もまだ簡単に入手できる。英国人だけでなく英国車好きにとっても、重要な意味を持つクラシックカーだといえるだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
状態の良いネイビーブルーのオースチン・セブンは、トラクター・コレクターのポール・ベイカー氏がオーナーだ。「このセブンを最初に目にしたのは、20年ほど前に開かれた農業用機械のオークションでした」。と購入の経緯を振り返る。
「同時はお金がなくて諦めましたが、友人が落札し、15年前に譲ってくれました。ナンバーには偶然にもPBという2文字が含まれていますが、これは自分のイニシャル。しかも整備手帳を確認したら、クルマが登録された日付が誕生日と同じだったんですよ」
「30年ほど前にレストアを受けていて、今でも運転はとても楽しい。どこへ走っても、多くの人が笑顔で見てくれます。息子の結婚式では、ウェディングカーとしても活躍しました。大人4名を乗せて、坂の上の教会まで登りきりました」
「1933年1月の登録で、電気系統の電圧は6V。全体的にオリジナル状態が保てている方です。今度、トランスミッション内のベアリング交換を考えています」
英国で掘り出し物を発見
オースチン・セブン・スペシャル(英国仕様)
登録:1936年 走行:1605km 価格:3万9950ユーロ(約591万円)
セブン・スペシャルの典型例。スポーティなセブンとして、ルビー仕様からコンバージョンされている。ボディは過去にドイツでレストアされており、膨大な写真とともに過程が記録されている。
仕上がりは美しく、シャシー・コンデイションも良さそうだ。電装系の電圧は12Vに変更され、多くのアップグレードも加えられているものの、クラシカルな雰囲気を残しているのが美点。
エンジンルームも良好で、すぐに乗れる状態にある。クラシックカー・イベントへ参加した回数の多さを、貼られたステッカーが物語る。
オースチン・セブン・ニッピー(英国仕様)
登録:1936年 走行:− 価格:2万1500ポンド(約356万円)
スポーツ・セブンとして魅力的な1台は、自動車部品の販売を手掛ける人物がオーナーだった。彼は可能な限りオリジナル状態へ戻すべく、19インチのホイールを履かせ、クロスレシオのトランスミッションとエンジン・ヘッド、マニフォールドを交換している。
エンジン自体も近年にリビルド済み。高性能なクランクと、ハイリフト・カムが組まれれている。フロント・サスペンションは、1950年代に独立懸架式へ交換されている。前オーナーは、50年間維持してきたという。
中古車購入時の注意点などは後編にて。
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みんなのコメント
1933年の自動車取締令改定による、長さ2.8m以下、幅1.2m以下、高さ1.8m以下、4サイクルエンジンでは排気量750cc以下という、小型自動車の規格にも影響を与えていると思われる。
キドニーグリルも、この車のシャーシに被せたスポーツタイプのオリジナルボディが初採用。