現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 後編

ここから本文です

ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 後編

掲載
ウッドボディ+ハードトップ クライスラー・タウン&カントリー 当時はクラス最長で最高額 後編

車重やコストが重視される前のアメリカ車

今回ご登場願ったクライスラー・タウン&カントリーは、1950年式。ロングホイールベース版は698台が生産されたが、残存する80台の貴重な1台で、走行距離は8万7000kmほど。ドイツの博物館が輸入し、現在は英国でナンバー登録されている。

【画像】2ドア・ハードトップのクライスラー・T&C 米英のウッディ 1960年代のフルサイズも 全129枚

2ドア・ハードトップのタウン&カントリーは鮮やかなボディカラーで注文されることが多かったが、この例ではブラック。ルーフもペールカラーではなく、ブラックに塗られている。

ステータスを主張するように、クロームメッキの巨大なフロントグリルは存在感が強い。ルーフラインは滑らかに弧を描き、ピラーレスのサイドガラスと相まって、サイドビューはクリーンだ。

ワニの口のように巨大なボンネットを持ち上げると、深い位置に細長いエンジンが収まっている。鋳鉄製の排気マニフォールドが鈍く光り、その上にキャブレターが伸びている。

重たいトランクリッドを開くと、巨大な荷室が現れる。ちょっとした引っ越しなら、これ1台で済ませられるかもしれない。

テールライトが両サイドで申し訳程度に光る。リアバンパーのオーバーライドは巨大。渋滞時に追突されても、びくともしないだろう。観察し始めると、必要以上に頑丈なことがわかる。車重や製造コストへ、強く意識が払われる前のアメリカ車らしい。

そのかわり、ドアは重厚でドアハンドルは滑らかに動く。サイドウインドウの格納式ワインダーなど、ディティールも見事だ。

ミッドセンチュリー・デザインの栄光

ボディは73年前の塗装を保っている。トリム類もオリジナルだという。クッションの厚いシートは、中央がナイロン・クロスで、サイド部分はブラックのレザー。リアシートには、保護のビニールがかけられている。

ボディサイズから想像するほど、車内空間は広くない。それでも、相当ゆったり座れることは間違いない。

ミッドセンチュリー・デザインの栄光を感じさせるのが、ソフトパッドの入ったダッシュボード。クロームメッキの帯が左右いっぱいに伸びてる。ラジオデッキや、ライトとワイパー用のスイッチ類など、すべてがスタイリッシュに仕上げてある。

巨大で堅牢そうなステアリングホイールの奥には、半円を形どったメーターパネル。時速110マイル(177km/h)まで刻まれたスピードメーターを囲むように、燃料計などの補助メーターが並ぶ。

アメリカのパトカーに装備されていそうなスポットライトは、タウン&カントリーに標準装備だったようだ。ダッシュボードの下から展開される、食事用のトレイも。衝突時の安全性は考えない方がいい。

じんわり溶け出すようにパワーが展開

タウン&カントリーの巨大さを目の当たりにすると、英国の一般道では慎重に運転せざるを得ない。走り出しても、ボディが小さく感じることはない。サスペンションは柔らかく、ボディは重く、不慣れな左ハンドルでもある。

5.3Lの直列8気筒エンジンは、ささやくようなノイズを放ち、じんわりと溶け出すようにパワーを展開する。最高出力は137psしかない。滑らかに、37.2kg-mの太いトルクが湧き出る。

ブレーキは、前後ともにディスクが奢られているため、不満なく効く。ただし、フローティング・キャリバーではなく、回転するケーシングの内側へ押し付けるように、2枚に別れたディスクが動くタイプ。知らなければ、ドラムブレーキにも見える。

トランスミッションは、フルードドライブを採用した3速セミ・オートマティック。1950年式のタウン&カントリーでは、これが標準だった。加速中にアクセルペダルを緩めると、次のギアが選ばれる。

筆者は、1速と3速をコラム・マニュアルのように扱った。発進後は、ゆったり加速するシングルギアのオートマティックのように、3速のまま速度を問わず走れる。

ステアリングホイールにはパワーアシストが備わらないが、ロックトゥロックは5回転近くあるため軽い。反応は終始曖昧で、速度域の低いタイトコーナーでは、急いで腕を切り返す必要がある。

速くシンプルなモデルを時代は求めていた

戦前のウッディワゴンでもなく、テールフィンがそびえる1950年代のフルサイズでもなく、スポーティなマッスルカーでもない、タウン&カントリー。この時代のクライスラーならではの、非常に個性的な2ドア・ハードトップだ。

この容姿を眺めていると、ロックミュージックを生み出したチャック・ベリー氏やアイク・ターナー氏が求めたクライスラーではなかったように思う。より以前の、ビング・クロスビー氏のイメージへ近いだろう。

その頃のアメリカは、既にジェットエイジへ向かっていた。より速くシンプルなタウン&カントリーを、時代は求めていたはずだ。

協力:ゲートウェイ・オークションズ

クライスラー・タウン&カントリー・ニューポート(1949~1950年/北米仕様)のスペック

北米価格:4000ドル(新車時)/4万ポンド(約644万円)以下(現在)
販売台数:698台(1949~1950年のみ)
全長:5613mm
全幅:1905mm
全高:1626mm
最高速度:136km/h
0-97km/h加速:23.0秒
燃費:4.2-5.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1720kg
パワートレイン:直列8気筒5302cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:137ps/3400rpm
最大トルク:37.2kg-m/1600rpm
ギアボックス:3速セミ・オートマティック

こんな記事も読まれています

パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった
パンク知らずで空気圧チェックも不要! ブリヂストンの夢のタイヤ「AirFree」に乗ったらアリだった
WEB CARTOP
【オープントップ ランクル】ピックアップトラックにも転換可能!トヨタ、SEMAでオープントップ ランドクルーザー コンセプトを初披露!
【オープントップ ランクル】ピックアップトラックにも転換可能!トヨタ、SEMAでオープントップ ランドクルーザー コンセプトを初披露!
AutoBild Japan
「日本一大きい交差点」立体化完成いよいよ“秒読み段階”へ!? 「合計40車線」で“大渋滞エリア”の仙台バイパスに悲願の高架道路
「日本一大きい交差点」立体化完成いよいよ“秒読み段階”へ!? 「合計40車線」で“大渋滞エリア”の仙台バイパスに悲願の高架道路
くるまのニュース
トヨタ『カローラツーリング』などリコール…後方カメラが映らなくなるおそれ
トヨタ『カローラツーリング』などリコール…後方カメラが映らなくなるおそれ
レスポンス
【新車価格情報】国産車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年11月20日時点
【新車価格情報】国産車 デビュー&改良情報(ダイジェスト)※2024年11月20日時点
カー・アンド・ドライバー
トライアンフの大排気量バイク「ロケット3」に“伝説のスタントマン”に敬意を込めた特別仕様車が誕生! 日本限定15台の超貴重モデルです
トライアンフの大排気量バイク「ロケット3」に“伝説のスタントマン”に敬意を込めた特別仕様車が誕生! 日本限定15台の超貴重モデルです
VAGUE
DSの新型電動SUVクーペ、年内デビューへ…ボディに描かれた「750」の意味
DSの新型電動SUVクーペ、年内デビューへ…ボディに描かれた「750」の意味
レスポンス
いま路線バスのサバイバルが始まっている! 電動バス・小型バス・二階建てバスで細かなニーズに対応することが鍵か
いま路線バスのサバイバルが始まっている! 電動バス・小型バス・二階建てバスで細かなニーズに対応することが鍵か
WEB CARTOP
トヨタ新型「ハイラックス“ミカン”」公開! タフ顔&オシャベージュ幌の「チャンプ」! 大注目の「新モデル」日本導入ありそう!?
トヨタ新型「ハイラックス“ミカン”」公開! タフ顔&オシャベージュ幌の「チャンプ」! 大注目の「新モデル」日本導入ありそう!?
くるまのニュース
大人の遊び心をくすぐるクラシックデザイン!「CRONOS」と「YADEA」がコラボ車両を発売
大人の遊び心をくすぐるクラシックデザイン!「CRONOS」と「YADEA」がコラボ車両を発売
バイクのニュース
アウディ Q7/SQ7【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
アウディ Q7/SQ7【1分で読める輸入車解説/2024年最新版】
Webモーターマガジン
ROTARY-EVも設定するマツダMX-30が商品改良。特別仕様車Retro Sports Editionも新登場
ROTARY-EVも設定するマツダMX-30が商品改良。特別仕様車Retro Sports Editionも新登場
カー・アンド・ドライバー
新車で買える「“4人乗り”軽トラ」が存在! 斬新すぎる「個性派トラック」が凄い! 悪路に強く「仕事×アウトドア×日常用」まで毎日使えるダイハツ「商用モデル」に注目あり!
新車で買える「“4人乗り”軽トラ」が存在! 斬新すぎる「個性派トラック」が凄い! 悪路に強く「仕事×アウトドア×日常用」まで毎日使えるダイハツ「商用モデル」に注目あり!
くるまのニュース
トヨタ最強「6m超え×9人乗り」バンに大反響! 「MT欲しい」「ハイエースよりオシャレ」「アルファードより好き」の声も! ラインナップ豊富な欧州「プロエース」に熱視線!
トヨタ最強「6m超え×9人乗り」バンに大反響! 「MT欲しい」「ハイエースよりオシャレ」「アルファードより好き」の声も! ラインナップ豊富な欧州「プロエース」に熱視線!
くるまのニュース
「なんで“鳴らした”!?」 後続車の「クラクション」に“イラ”っと! 一度は感じる「ブレーキ問題」! 見直すべき“ブレーキ技術”とは
「なんで“鳴らした”!?」 後続車の「クラクション」に“イラ”っと! 一度は感じる「ブレーキ問題」! 見直すべき“ブレーキ技術”とは
くるまのニュース
BMW「G 310 GS」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
BMW「G 310 GS」【いま新車で買える! 冒険バイク図鑑】
webオートバイ
軽だけど広い! フラットスペースが魅力のスズキ エブリイがベースの軽キャンパー
軽だけど広い! フラットスペースが魅力のスズキ エブリイがベースの軽キャンパー
月刊自家用車WEB
えぇ!? 攻めたワゴンの高級車!? 懐かしきホンダ[アヴァンシア]
えぇ!? 攻めたワゴンの高級車!? 懐かしきホンダ[アヴァンシア]
ベストカーWeb

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村