BMW史上最速のロードカー
text:Richard Bremner(リチャード・ブレンナー)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)BMW史上最速のロードカーが登場した。5シリーズよりやや大きい美しい2ドアクーペは、BMWとしては最も高価なモデルでもある。プラットフォームは5シリーズや7シリーズと共有する。
エンジンとトランスミッションは基本的にM5と同じもの。624psという最高出力も同じだし、サスペンション構造も基本的には共有している。M8の動的性能で大きなアドバンテージとなっているのが、200mmほど短いホイールベース。設定は独自のものが与えられ、機敏性を高めている。
すべてのメカニズムは1885kgの車体が625psを完璧に発揮でき、操縦できるように設計。4輪駆動システムに電子制御される機械式LSD(リミテッド・スリップデフ)、トラクションコントロールなどがM8の走りを支える。タイヤは20インチのミシュラン製で、リアの方がやや太い。
M5と同様に、ドライビングモードによって後輪へ伝わるトルクを大きく振り分けられるだけでなく、完全にFR状態とすることも可能。かなりスリリングな、究極のドライビングを味わわせてくれるはず。
英国へ導入されるM8はコンペティション・グレードに限られる。コーナリングをさらに機敏にする強化エンジンマウントも採用され、重たいパワートレインはボディと一体に向きを変えることになる。またV8エンジンのサウンドも一層鮮明となるわけだ。
まずはポルトガル南部のアルガルヴェ・サーキットでの試乗。とても快適な車内へ座り、いざ走りはじめようと思ったが、ドライブモードの設定の分かりにくさに気付いてしまった。
楽しく鮮烈に感じられるコーナリング
ステアリングホイールのスポークにはボタンがぎっしり並んでおり、その上に赤くペイントされた「M1」と「M2」と書かれたレバーが生えている。最近のMらしい装備で、気分を高揚させてくれる。
センターコンソールにも「Mモード」と「セットアップ」と記されたものと、マフラーのアイコンが記されたボタンが配される。マフラーの絵のものはまだ意味がつかみやすいが、残りの2つはどんな機能なのだろう。その奥には斬新なシフトポジションの配置がされた、シフトノブが付いている。
インテリアの雰囲気はBMWらしく親しみやすくもあり、M8の太いマフラーの迫力通りに期待も高まる。金属製のアクセルペダルへ力を込めれば、圧倒的な勢いで静止状態から離脱していく。
M8クーペを始めにサーキットでドライブしたなら、恐らく大きな感銘を受けるだろう。4.4LのV8エンジンが生む624psと76.3kg-mというエネルギーと、1885kgという質量でコーナーへ突っ込むという、難しそうな課題を心配する必要もない。
紛れもなく直線スピードも速いが、M8クーペをより楽しく鮮烈に感じられるのはコーナリング。カーブのきつさを問わず、特に高速コーナーが連続するような場面では、極めて鋭く走り抜ける。落ち着いた身のこなしと不安感のないグリップ力に、もっと速く走れただろうと振り返るほど。
マッスルカーのように大胆なMダイナミック
ブレーキとタイヤの性能を測るようなタイトコーナーでも、コンパクトで軽量なスポーツカーほどではないにしろ、乱れず確実に向きを変えていく。4輪駆動状態では近年の大型Mモデルと同様に、質量と速度とのコントロールは素晴らしいの一言。
Mダイナミック・モードは、後輪駆動となりセーフティネットがオフになる設定。ドイツ製大型クーペは、アメリカン・マッスルカーのような性格を見せる。1960年代のマッスルカーほどじゃじゃ馬ではないが、ドライバーの理性を解き放てば、M8はタイヤはスキール音を上げ、スモークを立ち上げ、あっという間にすり減る。
後ろのタイヤだけに送り込まれるふんだんなトルクによって、手に負えない自体に陥る可能性もある。だが少なくともある程度までは、抑え込まれたボディロールと極めて正確なステアリングフィールによって、予測可能な挙動の中に留まっていられる。
0-100km/hを3.2秒でこなすが、数字ほど荒々しさは感じられない。このスピードでコーナリングできるライバルは少ないが、タイヤがグリップ力を失った際の振動は殆ど伝わってこない。この感触は、ウェットコンディションのサーキットならさらに難しく感じさせるかもしれない。
バイワイヤで機能するブレーキは強烈な制動力を発揮するが、過去に体験した最高のブレーキほど、ロック直前の感触は優れていない。カーボンセラミック・ディスクはオプションとなる。
英国の道が難敵となり得るサスペンション
シャシーエンジニアのスベン・エシュが約束した通り、軽くないM8はとてつもなく速いが、驚くほどに運転が難しくない。限界領域に達するとテールは上品さを持ってスライドを始めるが、コントロールはしやすい。4輪駆動モードの場合なら、フロントタイヤがテールスライドから引っ張り出す感覚を得られるはず。
反面、一般道で感じるM8は、それほど上質に整えられたものではないだろう。アルガルヴェ・サーキットは滑らかな路面が続くが、時折大きな振動を突然感じることはあった。小さな起伏や舗装の継ぎ目、波打ちなど、すべての凹凸でサスペンションは充分に処理しきれず、垂直方向の振動を車内に伝える。その後の収束は素早いけれど。
英国のような状態の悪い舗装が続く道では、選択したドライビングモードに関係なく、M8のサスペンションにとっては難敵となりそうだ。乗り心地の快適性だけでなく、高性能なクルマを楽しめる世界を限定してしまうという意味でも少し心配ではある。
オーナーなら、エンジンやサスペンションなどの設定の組み合わせを、好みで選択することはできる。自身好みのM8の設定をM1かM2のボタンに登録しておけば、ずっと穏やかなクルマとして扱うことができるだろう。
気張らずに走らせている限り、豪奢なインテリアを思う存分楽しむこともできる。キルティング加工が施されたレザーが贅沢に用いられ、スタイリッシュなダッシュボードには、21世紀を象徴するデジタル機能も不足はない。
M5以上の性能でもライバルがチラつく
ちなみにヘッドアップディスプレイとワイド画面のインフォテインメント・システム、車載AIによるパーソナルアシスタントなどは標準装備。エンジン、トランスミッションだけでなく、ブレーキの効き具合も設定が可能となる。
かなり高めの価格が付いているが、額面の割には若干ゴージャス感は物足りないかもしれない。またボディサイズとは裏腹に、リアシートの空間も比較的タイト。事実上、定員は2名と考えた方が良いだろう。
仮に2シーターとして見た場合、同じ価格でアウディやメルセデス・ベンツのライバルモデルだけでなく、マクラーレン540Cも圏内となってくる。さらに定員5名で4ドアのBMW M5コンペティションなら、英国では遥かに安く手に入る。
突き詰めればM5はM8ほどの正確性や操縦性を備えてはいない。しかし、よほど限界領域まで踏み込まなければ、その違いは感じられないレベルにある。
BMW M8クーペのスペック
価格:12万3435ポンド(1641万円)
全長:4851mm(標準8シリーズ・クーペ)
全幅:1902mm(標準8シリーズ・クーペ)
全高:1346mm(標準8シリーズ・クーペ)
最高速度:249km/h(リミッター)/305km/h(リミッター解除時)
0-100km/h加速:3.2秒
燃費:8.9km/L
CO2排出量:242g/km(WLTP)
乾燥重量:1885kg
パワートレイン:V型8気筒4395ccターボチャージャー+
使用燃料:ガソリン
最高出力:624ps/6000rpm
最大トルク:76.3kg-m/1800-5800rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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