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奇抜なコンセプトカーへ試乗 感動するほど普通に走るシトロエン・オリ 未来への姿勢を表現

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奇抜なコンセプトカーへ試乗 感動するほど普通に走るシトロエン・オリ 未来への姿勢を表現

感動するほど至って普通に運転できる

シトロエンのCEO、ヴァンサン・コベ氏と真剣に意見を交わした結果、計画は臨機応変に変更される可能性があると知った。事前にサインした書面上では、オリは運転できないことになっている。しかし、今回の試乗レポートへ至ったのだから。

【画像】未来への姿勢を表現 シトロエン・オリ 量産版のアミ メルセデスとVWのコンセプトカーも 全125枚

完全なワンオフ・モデルとして作られたオリは、約100万ポンド(約1億6100万円)といわれる、巨大なコストを投じて作られている。各ディーラーで展示され、顧客のイメージアップを目的に渡英している。

筆者がサインした書面は、最終的にはコベが承認することになる。彼がOKというのだから、基本的に逆らうスタッフはいない。にわかに試乗の準備が整えられていく。AUTOCARのためだけに。

わたしたちがいるのは、グレートブリテン島の中部、バーミンガムにあるコンベンションセンターの展示ホール。一般道での印象は掴めないが、こんな機会は滅多にない。シトロエンのCEOは、オリの能力に自身を持っているようだ。

意外と長いドアを開き、運転席へ腰を下ろす。助手席にはコベが座っている。彼を意識しないわけにはいかない。

勢いよく発進させ、展示ホールの柱を避けるように曲がり、止まってみる。至って普通に運転できることへ感動してしまった。

スタイリングは挑戦的。インテリアも既存の枠を越えようとしている。しかし、完成度の高い電動パワートレインにより、走りには不自然な部分がまったくない。

手頃さと持続可能性に対する姿勢を表現

運転席からの視界は良い。シートも座り心地が良い。シンプルで大胆なデザインのインテリアは、オリのコンセプトをストレートに反映している。

もちろん、このまま量産化されるわけではない。だが、次期型のC3 エアクロスを皮切りに、このエッセンスが量産モデルへ展開されていくのだろう。

加速力も不足を感じない。ステアリングホイールの操作へ、フロントノーズが機敏に反応する。ショーカーらしくタイヤは巨大だが、展示ホールのフロアは平滑だから、乗り心地も静か。

広い場所で急旋回を試みる。「好きなだけ回っていいですよ。ドーナツターンしてもらっても構いません」。コベが笑顔で話す。楽しさで筆者も笑顔になる。完成度の高さには、感嘆せざるを得ない。

ドーナツターンまではしなかったが、もうしばらく積極的に運転してみた。すごく良いじゃないか。もしこれが未来なら、かなり楽しみだ。

シトロエン・オリは、英国価格2万3000ポンド(約370万円)前後を想定した、バッテリーEV(BEV)のビジョンを体現したもの。手頃さと持続可能性に対する取り組みをカタチにしたコンセプトカーで、今後の量産車へ展開される技術が盛り込まれている。

C3 エアクロスに似たアウトドア志向のコンパクト・クロスオーバーとして、ブランド哲学を具現化したものでもある。公道走行できるほどの高い完成度には驚かされる。

楽しくてエキサイティングな明るい未来

デザインを率いたピエール・ルクレール氏は、「明るい未来」を表現したと話す。「知的で手頃なモノを生み出しても、残念な結果になるとは限りません。楽しくてエキサイティングにもなるんです」

車重は1t前後が想定され、航続距離は400kmが想定されている。搭載する駆動用バッテリーは比較的小さい40kWhで、駆動用モーターを1基積む。電費効率は10km/kWhが目指されており、現在のBEVの2倍近い数字といえる。

とはいえ、量産車へ最も影響が及ぶのはデザイン的な部分だろう。オリを構成する部品の50%がリサイクル素材でできている。そして、すべてがリサイクル可能となっている。いくつか特徴をご紹介しよう。

前後で同一部品のバンパーとガラス

バンパーとフェンダー

シトロエンのマイクロカー、アミと同じく、前後のバンパーは同じカタチで必要な金型は1つで済む。製造や修理のコストを削減し、環境への負荷も低減できる。前後のフェンダーは、一般家庭にある工具で脱着可能。擦り傷が付いても、簡単に交換できる。

フロントガラス

BEVの航続距離を伸ばすには、空力特性が重要となる。しかし、オリの特徴といえるのが、垂直に切り立ったフロントガラスだ。従来の枠を超えるという挑戦的な意味もあったが、コストの大幅な削減にもつながったという。

ヘッドライトとボンネット部分に開けられたエアダクトで、走行中の空気はフロントガラスへ導かれ、空気抵抗を減らすらしい。リアガラスもフロントと同一部品になる。

ルーフとボンネット

パルプ素材でできており、ダンボールに近い。ドイツの化学メーカー、BASF社がハニカム構造を用いたパネルを成形し、必要な強度を得ている。コーティングすることで、雨や紫外線に対する耐性も備える。

タイヤとホイール

ホイールは20インチで、オリの専用デザイン。アルミとスチールを組み合わせ重量を抑えつつ、通常のアルミホイールより安価。タイヤは、50万kmも走れる超高耐久のグッドイヤー・イーグル・ゴーという試作品を履く。トレッド面は2回巻き直せるそうだ。

ボールで角度が変わるシート 新ブランドロゴ

駆動用バッテリー

コストや重さ、環境負荷を考慮し容量は40kWhと小さく、それに基づいてオリが設計されている。最高速度は110km/hに制限される。0-100km/h加速も、速さを求めず技術者は仕事を進めたという。

インフォテインメント・システム

インフォテインメント機能のインターフェイスは、ユーザーのスマートフォンが担う。ダッシュボード上にはワイドなモニターが備わり、スマホを接続して用いる。

車載コンピューターを削減でき、使用する半導体を減らし、環境負荷の軽減につながる。エアコンの操作には実際に押せるハードボタンが用意され、移動中でも扱いやすい。

シート

背もたれは3Dプリンターで出力されたもの。パイプのフレームで躯体が構成され、カバーは取り外し可能。掃除や模様替えも簡単にできる。

コスト削減のために、シートの調整域は限定的。シートの付け根部分にスポンジ状のボールが組み込まれ、ドライバーが座ると体重に応じて座面が沈み、自然な角度が得られる仕組み。路面からの入力も多少は吸収するという。

ロゴマーク

1919年の創業当時のものを現代風にアレンジした、新ブランドロゴがオリには用いられている。近未来のシトロエンのフロントマスクへ、大きな影響を与えるだろう。

現在のC3やC5 Xは、フロントグリルと一体でダブルシェブロンが構成されているが、オリは楕円形で独立している。このロゴを持ち上げると、充電ポートが姿を表す。

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