「攻めたパステルカラー」のトレンドに急ブレーキ!?
ドイツの化学メーカーの日本法人BASFジャパンが2024年10月31日、2024-25年版の「自動車カラートレンド予測」を発表。その報道向け説明会が同日、横浜市にあるBASFジャパンの工場にて開かれました。
会場には例年通り多数のカラーサンプルが並べられました。しかし、一見して気付いたのは、あきらかに「暗い色」が増えたことでした。
【1年でこんな変わるの!?】一気に“地味化”した自動車カラートレンド(写真)
カラートレンド予測は、今後3年から5年のあいだに自動車のボディーカラーの傾向へ影響を及ぼす社会的変化や技術の進展などを分析し、複数のカラーサンプルとともに発表しています。BASFはこれらをたたき台に、全世界の自動車メーカーへ新車のカラー展開を提案しています。
ここ数年は、「何色とはいえない」「なんだか分かりにくい色」がトレンドカラーとして多く打ちだされていました。2023年はさらに、このような「中間色」かつ、より明るい「パステルカラー」のサンプルが多く並んでいました。
BASFジャパンのカラーデザイナー・松原千春さんは昨年、「自動車市場が成熟し、色の幅も拡がった」「EVの普及で、今まで絶対売れなかったような色が出てきている」などと説明していました。
しかし、2024年のトレンドカラーのなかでもキーカラーとしてピックアップされた色は、打って変わって暗い色ばかりです。
欧州、中東、アフリカ(EMEA)地域のキーカラー「HARBINGER’S INK(ハービンジャーズ インク)」は、クルマの基本色であるブラックを、再生可能な材料、生分解性顔料の組み合わせなどで新たに提案したもの。米州のキーカラー「HOLDING SWAY(ホールディング スウェイ)」は、青みに強く変化する深いパープルだそう。こうした色は、クラシカルなものから未来感のあるものまで、幅広い表現が可能だといいます。
アジア太平洋地域のキーカラー「SCINTILLATION(シンチレーション)」は、人気が低下しているというシルバーやグレーのメタリックを「革新的技術で更新する」という新たなアプローチだそうです。
「EVからハイブリッドに逆戻り」の世相
昨年は、「これが本当にクルマの色になるの?」と思えるほど、見慣れない明るい中間色のサンプルが強く打ちだされていましたが、今年は対称的に、白・黒・グレーといった基本色の新たな提案といえるようなものが目立ちました。
ただ、光の当たり方で、全く別の色に見えるようなカラーサンプルが多いのは昨年と同様で、塗料技術の進歩を感じられるものでした。
「パステルカラーは依然として重要な色域です。でも、その傾向は必ずしも続きません。先が見えない時代になってきました。シルバーなど“やっぱり安心できる”基本色に回帰していく動きもあると考えています」(松原さん)
加えて「多くの自動車メーカーが今年になってEVからハイブリッドに回帰していきましたよね」とも。
つまり、世界的に保守的なムードが覆いつつあるのだそうです。
EVを選ぶ人は「新しいものをチャレンジしたい」という人で、それは色も同じ。しかし、「もっと長く使いたいという動きもある」といいます。BASFとしても“攻めた色”だけでなく、白・黒・グレーといった基本色の表現を拡げていく構えだそうです。
ちなみにパステルカラーは、特に中国で人気だそう。日本でパステルカラーといえば軽自動車や小型車に使われる傾向ですが、中国では日本円で600万円クラスのSUVで展開されるのだとか。
他にも、たとえばイタリアのフィアット「500」のEV版「500e」など、伝統的な車種に新しさを表現する手法としてもパステルカラーが使われているそうです。
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