サンバーナディノから1時間の航空博物館、プレーンズ・オブ・フェイム本館を訪ねて
広大なアメリカを東西2347マイル(3755km)にわたって結ぶ旧国道「ルート66」をこれまで5回往復した経験をもつ筆者が、ルート66の魅力を紹介しながらバーチャル・トリップへご案内。シカゴから西に向かい、ついにカリフォルニア州に突入。今回は、日本人におなじみ「零戦」をはじめ貴重な航空機の数々を見られる航空博物館「プレーンズ・オブ・フェイム」の本館を紹介します。
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オリジナルの栄エンジンを搭載した世界唯一の零戦は飛行可能!
本連載の39回目で紹介したアリゾナの航空博物館、「プレーンズ・オブ・フェイム」を覚えているだろうか。残念ながらコロナ禍の影響で閉館してしまったが、その本館はカリフォルニア州チノで今も営業中だ。ルート66を走りサンバーナディノから1時間、チノという街を代表する観光スポットでもある。
日本の航空ファンにとっては改めて説明するまでもないが、ここは世界で唯一となるオリジナルの栄エンジンを搭載した、「零戦」こと「零式艦上戦闘機」が飛行できる状態で保存されている場所として有名。他にも世界各国の旧型機やレアな実験機を保有しており、それらを飛ばすイベントを毎月のように開催しているのだ。私も何度かそのタイミングに合わせて渡米し、撮影に加え貴重な体験をさせてもらっている。
一番の思い出はやはり、栄エンジンの零戦、52型61-120号機が飛ぶ姿を拝めたことだろう。太平洋戦争の最中にサイパンで鹵獲(ろかく)されアメリカに移送、さまざまなテストに使われてから民間へ払い下げられた。プレーンズ・オブ・フェイムにて1970年代から修復を開始し、日本でも3回にわたって「里帰り」しての展示が行われている。1978年には地元の仙台空港へ飛来し父親と見に行ったそうだが、当時は4歳だっただけにまったく記憶に残っていないのが残念だ。
そんな零戦も老朽化が進み、栄エンジンの寿命はそう長くない、なんて話を聞きなんとかスケジュールを調整し会いに行ったのが2016年。アメリカ在住の邦人や日本からの団体ツアーが見守るなか、大空を飛びまわる姿を脳裏にしっかり焼き付けることができた。当日に別の零戦を所有する方のグループと知り合い、コクピットに座らせてもらえたのも貴重な思い出だ。
B-25ミッチェル爆撃機も健在
もうひとつは約1万機が生産された「B-25ミッチェル」。第二次世界大戦のアメリカを始めとする連合国で活躍した爆撃機であり、日本に対し初の本格的な反撃と言われる「ドーリットル空襲」を行ったのがB-25で、飛ばすイベントもドーリットル空襲が実行された4月18日に近い週末だった。
なおプレーンズ・オブ・フェイムが保有するB-25はエアショーでもよく見かけ、ネバダ州のネリス空軍基地では岩山をバックに激しい機動飛行を撮影できている。
ノースロップの全翼機N9MBは悲しい結末に…
ちょっと悲しい結末を迎えてしまったが、ステルス爆撃機「B-2」の開発にも貢献した、ノースロップの全翼機「N9MB」も見に行った。垂直尾翼どころか胴体もなく機体すべてが翼という実験機で、初飛行はまだ第二次世界大戦の真っ最中だった1942年。デザインから想像できるとおり操縦は難しく、また機械的な問題も色々と抱えていたようで、フライング・ウイングと呼ばれた計画は中止、N9MBも最後の1機を除き破棄されたという。
紆余曲折を経て1982年にプレーンズ・オブ・フェイムが入手し、1993年からエアショーなどを舞台にデモフライトが始まった。私が飛ぶ姿を撮影できたのは2017年11月4日のイベントで、機体そのものは格納庫で何度も撮影しているにもかかわらず、UFOを思わせる平べったいN9MBが大空を舞うシーンは圧巻。知らない人がこんなのを見たらUFOと勘違いしても不思議じゃなく、呆気に取られながらシャッターを切ったのを昨日のことのように思い出す。
もう一度どこかで撮影したかったN9MBだが2019年4月22日、プレーンズ・オブ・フェイムを離陸した直後に墜落し、機体は大破しパイロットも亡くなってしまう。
なおチノにはもうひとつの航空博物館「ヤンクス・エアミュージアム」があり、サンバーディから少し南に下れば「マーチフィールド・エアミュージアム」もある。どちらもルート66にほど近いロケーションなので、最後の寄り道スポットに次回で紹介してみたい。
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みんなのコメント
戦中とはいえ先人の方々はよく作ったと思う