■大井松田のコーナーでもハンズオフで走行可能
2019年9月にマイナーチェンジした日産「スカイライン」は、世界初の先進運転支援技術「プロパイロット 2.0」の搭載が話題となりましたが、当初の月販200台目標を大きく上回り、2カ月で4000台以上の販売をマークしました。
セダンが不人気である日本国内において、スカイラインは大健闘しているといっていいでしょう。そこでどうしてスカイラインにいま注目が集まっているのか、「スカイラインGT Type SPハイブリッド」を実際に高速道路やワインディングロードで試乗して考察してみました。
日産が脱オッサンセダンに成功!? スカイライン史上最強「400R」なぜ若者に人気なのか
スカイラインに往年のスポーツセダンの幻影を求めている男性にとって、2019年のマイナーチェンジにおけるフロントとリアのデザイン変更は、諸手を挙げて歓迎されたようです。とくにテールライトが丸目4灯に戻ったことが大きかったようです。
フロント部は「Vモーション」と呼ばれるフロントグリルに変更されましたが、これが「GT-R」を彷彿とさせるデザインで、非常に好評です。さらに、フロントグリルその他の「INFINITY」のバッヂが「NISSAN」に変更されました。
いうなれば、スカイラインがスカイラインらしさを取り戻したことで、ふたたびカスタマーの心を掴んだといっていいでしょう。なかでも「400R」は、9代目スカイライン(R33型)GT-Rでニスモが限定車として販売した「400R」と同ネーミングであり、実際にスカイライン400Rも予想以上にオーダーが入っているようです。
ミニバンやSUVに人気が集まっている昨今、かつてのスタンダードであったセダンがむしろ趣向性の高いクルマとなりました。つまり、求められるのは「ストーリー」です。現行モデルで13代目となるスカイラインは、60年以上のブランドストーリーを持っています。最新モデルでは、そうしたスカイラインのストーリーが、アピアランスに見事に反映されているでのす。
運転席に乗り込む前から、これだけ語りかけるセダンは久しぶりです。試乗するスカイラインは、ハイブリッドのGT Type SPです。さっそく、みなとみらいから首都高速横羽線に合流し、箱根を目指します。
●ハンズオフは必要なのか? プロパイロット2.0を体験
横浜町田ICで東名高速に合流し、タイミングを見計らってプロパイロット2.0を試してみることにしました。
これまで、先行車の速度に応じて車間距離をキープする機能は、数多くの欧州車を試乗した際に日常的に利用した経験があります。メーカーによっては、ステアリングホイールから手を離すと、警告して知らせる機能があったりします。車間やレーンをキープする機能は、ドライバーの疲労を軽減してくれるため、長距離ドライブでは積極的に使いたい機能です。
しかし個人的には、高速道路を運転中にステアリングから完全に手を離す必要があるのか、疑問でした。
プロパイロット2.0は、車両に搭載したカメラ、レーダー、ソナー、GPS、3D高精細度地図データ(HDマップ)を組み合わせることで、走行中の車両の周囲360度の情報と、道路上の正確な位置を把握することで、ハンズオフを実現のものにしています。
ならば、居眠り運転しても確実に目的地へ運んでくれるのではないか、と短絡してしまいそうですが、それはできません。車内にはドライバーモニターカメラが装備されていて、ドライバーが前方を注視しているか常にモニタリングしているからです。
目を閉じていたり、横を向いたりすると、警告音で知らせてくれ、ドライバーが反応しない場合は、プロパイロット緊急停止時SOSコールが作動し、ハザードランプを点灯しながら車両は減速、停止します。
プロパイロット2.0は、レーダーやカメラを使っている関係上、激しい降雨時などでは利用することができません。試乗当日は小雨が降っていましたが、その程度では機能が制限されることはありませんでした。ただし、ワイパーは間欠で作動させているときは、ハンズオフが可能となります。
厚木を通過して、なだらかなカーブ、そして直線路で、プロパイロット2.0を作動してみました。メーターパネル中央のディスプレイ表示がグリーンのときは、ハンズオンでの車線内走行が可能です。
先行車の速度に応じて車間距離をキープするマナーは、ガソリン車やディーゼル車などよりもはるかに自然な感覚で、ドライバーに恐怖心を与えることはありません。先行車に追従しているときの加減速のマナーは、その特性上、ハイブリッドやEVの方が断然洗練されています。
スカイラインへの信頼度が上がってきたところで、ディスプレイ表示がブルーへと変わりました。ハンズオフでの車線内走行ができるようになった合図です。
おそるおそる、ステアリングから両手を離してみます。はじめてディストロニック・プラスで走行したとき抱いたのと同じ、不思議な感覚がわき起こってきます。まるで薄氷の上に立たされたような心もとなさと一緒に。
東名高速の大井松田ICと御殿場間ICは、きつめのコーナーが連続する区間ですが、そのままプロパイロット2.0を作動させたまま走行しました。高速道路を走り慣れていないサンデードライバーのなかには、車速を一定に保ったまま走行することが難しい人もいる区間です。
そもそもこの区間で、ディスプレイ表示がハンズオフが可能であるブルーに変化するのかに注目していると、大井松田IC先の分岐を越えてしばらくして、ブルーへと変わったのです。
いつでもステアリングを握ることができる用意をしつつ、いざハンズオフ! きつめのコーナーでもなんの問題もなくスカイランが車線内をキープして走行してくれました。
これまで、前輪タイヤからのロードインフォメーションをステアリングから感じ取りつつ、微妙にアクセルワークしながら車速を一定にキープしていました。しかし、スカイラインが自動で、コーナーをひとつ、またひとつとクリアしていくさまを、運転席で、しかもハンズオフ状態で体験するのは、ちょっとした感動でした。
■まるでバーチャルゲームのようなフラットな感覚
御殿場ICで東名高速をおりると、国道138号線で箱根方面へと向かいました。スカイラインという名がつく限り、カスタマーが求めるものは、操る愉しさ、ファン・トゥ・ドライブです。
最初にプロパイロットスイッチを押して、プロパイロット2.0を完全にオフにします。一般道でも車間・車速制御が作動するからです。
スカイライン GT Type SPに搭載されるエンジンは、3.5リッターV型6気筒で、最高出力306馬力/6800rpm、最大トルク350Nm/5000rpmを発揮します。モーターは、最高出力68馬力、最大トルク290Nmです。
これに電子制御の7速ATが組み合わされています。ハイブリッドには4WDと2WDがラインナップされていますが、試乗したのは後輪駆動の2WDモデルです。
最初に印象に残ったのは、操縦安定性の高さでした。わだちのある荒れた路面でも、挙動が実にフラットな印象なのです。また、コーナリングでも鼻先軽く、スッと入っていくイメージです。さらに付け加えると、常にニュートラルをキープしているなんとも不思議な感じ。
車検証上での車両総重量は2135kgなのですが、スッキリとした乗り味とハンドリングは、「オジサマのセダン」などではなく、正真正銘の「スポーツセダン」です。
実はこれには理由がありました。「ダイレクトアダプティブステアリング」の恩恵によって、荒れた路面のワインディングでも、実に好印象となったのです。
ダイレクトアダプティブステアリングでは、路面反力や路面不整による力を打ち消すようにステアリングアングルアクチュエーターを作動させて、タイヤを操舵します。これによってタイヤがわだちに取られるようなことがなくなったというわけです。
さらに400Rに標準、V型6気筒ターボモデルの「GT Type SP」にはメーカーオプションとして、「インテリジェント・ダイナミックサスペンション」も用意されています。
これは、タイヤ回転速度、操舵角、ヨーレート、横Gなどの情報を瞬時に集約させ、およそ100分の1秒の速さで4輪それぞれの減衰力を制御して、クルマの挙動を最適化するものです。
路面の凹凸の大きさに合わせて減衰力を制御するので、上下動の少ないフラットな乗り心地を実現し、コーナリングの際はロールを抑制する働きがあります。今回の試乗では試すことができませんでしたが、さらにスカイラインに走りの要素を求める人には、インテリジェント・ダイナミックサスペンションを装備したスカイラインがオススメです。
車外の景色は見慣れた箱根の風景なのですが、ドライビングはバーチャルに近い感覚です。ダイレクトアダプティブステアリングだけでなくインテリジェント・ダイナミックサスペンションを装備した400Rは、20代から40代の購買層が約3割とのことですが、若い世代にスカイラインのドライビング感覚が受け入れられるのも、よく分かる気がします。
仙石原から箱根湯本までは、ドライブモードセレクターを「スタンダード」から「スポーツ」モードへと切り替えてみました。エンジンやトランスミッションなどのレスポンスがクイックになり、ステアリングフィールが重厚な手応えに変化するばかりか、アクティブ・サウンド・コントロールによってエンジンサウンドの音質も高まり、気分も高揚します。
走りのステージに合わせて車両を最適化するだけでなく、サウンドでドライバーの気分を盛り上げるという演出も、新しいドライビングプレジャーのひとつの要素となっていくのかもしれません。
※ ※ ※
スカイラインは、2019年のマイナーチェンジを経て、そのストーリーも含めて新たな世代のプレミアム・スポーツセダンへと進化していました。
最後に、実際にはプロパイロット2.0でハンズオフして高速道路を走行する人は数少ないでしょう。ハンズオフできる状態でもステアリングを握っている方が、現段階では安心していられます。
しかし、大井松田と御殿場間のコーナーを、ハンズオフして走行できるだけのハイレベルな運転支援技術が備わっているという事実は、ドライバーにとっては大きなアドバンテージとなります。
いまやセダンは、趣向性の高いクルマとなりました。そしてプレミアムなクルマに求められるのは、いざというときのためのバッファです。
心から信頼できる運転支援技術だからこそ、運転しているドライバーの心に余裕が生まれ、スカイラインをドライブしている時間が、贅沢な時間と体験へと昇華されます。スカイラインは、いままでにない極上のドライビングプレジャーを与えてくれるセダンなのです。
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みんなのコメント
ただ、この日産のやり方!
車にあまり詳しくない人が、
さも今人気で売れているような錯覚をするような数字の表現はやめて欲しい。
去年だか一昨年だかのデータでNo.1とかね。
ここまで落ちぶれちゃったのかと悲しくなる・・・。