名機なくして名車なし。今回は多感な時代に多くの若者がお世話になった名機トヨタの4A-GE型にフォーカス。AE86レビン/トレノを皮切りにさまざまな車種に搭載された「ツインカム16」は、アイドリングからレブリミットの7700rpmまでわずか0.78秒で到達するシャープな吹け上がりで絶大な支持を得たスポーツユニットの傑作だ。
旧世代DOHCエンジンを置き去りにした新世代の名機
1.6LのDOHCと言えば、名機2T-G型以来トヨタのお家芸。4A-GE型はその後継機として、AE86型レビン/トレノに搭載されて1983年5月に登場した。
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トヨタDOHCの常として、ここでもベースになったエンジンが存在する。それが、当時大衆車クラス用の次世代エンジンとしてデビューしたばかりのA型シリーズだ。その中の1.6L版4A-E型のSOHC2バルブヘッドをお得意のボルトオンツインカムの手法で4バルブDOHC化したのが4A-GE型(縦置きは4A-GEU型と呼ばれた)である。
トヨタがさらなるDOHCの普及を目指した4A-GE型は、その期待通り大変な反響を呼んだ。当時はまだ4バルブはおろかDOHCというだけで大きな付加価値があった時代。そこに、車両価格150万円台という低価格で本格的な4バルブDOHCエンジンを搭載したレビン/トレノが登場したのだから、それだけでも当時の若者は飛び上がらんばかりに喜んだ。
ただ安いだけではなかった。4A-GE型はその性能も本格的で、最高出力130ps/6600rpm(グロス表示)は、先代の2T-GEU型に比べ15psもパワーアップしていた。しかも、アイドリングからわずか0.98秒でレブリミットに到達する圧倒的なレスポンスとシャープな吹け上がりは、当時はまだ少なくなかった旧世代の2バルブDOHCでは味わえないものだった。
シリンダーヘッドはアルミ合金製で、燃焼室はペントルーフ型だ。ロッカーアームを介さず、カムシャフトが直接バルブを駆動するが、シムがバルブリフターの上にあるため、カムシャフトを外さずにクリアランス調節が可能で、さらに10万km無交換を謳う白金プラグを採用してメンテナンスの容易さをアピール。重量も大幅に低減されていた。81×77mmというショートストロークのシリンダー、バルブ挟み角50度のコンパクトな4バルブヘッドにより容積も抑えられており、可変吸気デバイスのT-VISを装備しても、2T-GEU型より25kgも軽い整備重量123kgを誇っていた。
トヨタはこの量産性に優れ軽量なDOHCの普及を進めるべく、4A-GE型をAE86レビン/トレノだけでなく、モデルライフ後半に入っていたセリカ/カリーナそしてコロナなど上のクラスにも2T-GEUに代わり相次いで搭載(1983年5~10月発売)。さらに1984年には横置き(4A-GELU型)にして日本初の量産ミッドシップスポーツMR2(6月発売)に搭載した。同年には、新開発のFFスポーツハッチであるカローラFXやすでにFF化されていたカローラ/スプリンターのセダンにも搭載車を設定するなど、その拡散に努める。
1987年5月にカローラ/スプリンターがフルモデルチェンジするとともに、シリーズで最後のFR車だったレビン/トレノもついにFFとなり、車両型式もAE92となる。このタイミングでNA版のエンジン呼称は4A-GE型に統一され、同時に初の改良が加えられてネット表示で最高出力120ps/6600rpm、最大トルク14.5kgm/5200rpmとなった。さらに1989年5月(平成元年)には圧縮比アップやT-VISの廃止など吸排気系のリファインを受けてネット表示で140psにパワーアップしている。
1991年6月にレビン/トレノはフルモデルチェンジしてAE101型となり、4A-GE型はついに20バルブ化。NAながら160ps/7400rpm、16.5kgm/5200rpmを発生するに至り、当時クラス最強を誇ったホンダのB16A型とパワーで肩を並べ、トルクでは1.0kgm上回ることに成功した。さらに1995年5月のフルモデルチェンジで登場したAE111型レビン/トレノでは、エンジン本体と吸排気系の改良で165ps/7800rpm、16.5kgm/5600rpmへと進化していく。
パワーよりもレスポンスにこだわってスーパーチャージャーを選ぶ
激化するパワー競争に対しても積極的な対応を見せた。スポーツエンジンではダイレクトな加速感を重視すべきと考えたトヨタは、4A-GE型の過給仕様を追加するにあたってターボではなくスーパーチャージャー(以下、S/C)を選んだ。それが1986年8月に初代MR2(AW11型)のマイナーチェンジで追加された4A-GZE型である。NAの4A-GE型の圧縮比を8.0まで下げ、トヨタ内製のSC12型スーパーチャージャー(ルーツタイプ)を装着したもの。インタークーラーも装備され、当時の1.6Lクラス最強の最高出力145ps/6400rpm、最大トルク19.0kgm/4400rpmを達成した。
ターボラグのないダイレクトな加速感は、運動性に優れるミッドシップのMR2にベストマッチ。ターボ車とは一線を画し、通好みの走りが味わえた。ただし、低速~中速域ではダイレクトで力強いトルク感を味わわせてくれたものの、S/Cの特性から6000rpmを超えたあたりから過給が追いつかずパワーが頭打ちになるという課題もあった。このエンジンは1987年5月にFFとなって登場したAE92型レビン/トレノの最上級グレードGT-Zにも搭載された。なおフルモデルチェンジに際して、ハイオク仕様となったほか数々の改良が施されて、最高出力165ps/6400rpm、最大トルク21.0kgm/4400rpmまでアップしている。
若者のカーライフに寄り添いつつも、時代の変化に巧に対応してきた4A-GE型。最後に搭載されたAE111型レビン/トレノでは1995年5月のマイナーチェンジで、ついに165ps/7800rpmの最高出力を獲得するに至った。
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みんなのコメント
世の中では、頭文字Dから人気がなどと言われたりするが、土屋圭一がフレッシュマンやCARBOY誌でドラフトやり出してから
何気に4A-Gは回さないで大人しく乗っていれば、12〜13km/L走る、当時の若者の懐に優しいエンジンだった