トヨタは賛否もあるにせよ、古くは初代サニーに対する初代カローラ、初代ローレルに対する初代マークIIなど「先発のライバル車をよく研究した」、悪く言えば後出しジャンケンで先発のライバル車を叩きのめしたモデルも少なくなく、ここではそんなトヨタ車たちをピックアップしてみた。
文/永田恵一、写真/トヨタ、日産、ホンダ、ベストカー編集部
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■90系マークII三兄弟はツアラーV設定でR33スカイラインをも撃破!!
1992年に登場した90系マークII ツアラーV。「ツアラーV」の呼称は2.5Lツインターボの1JZ-GTEエンジンを搭載したクルマにつけられた
●90系マークII三兄弟ツアラーV
1989年登場のR32型スカイラインはGT-Rの復活をはじめ、2L直6ターボを搭載するGTS-tタイプMがトップグレードだったFRの基準車も高いスポーツ性を持つ、実にスカイラインらしいモデルだった。
トヨタは1992年登場の90系マークII三兄弟の開発においてR32型スカイラインも強く意識しており、その象徴となったのが2.5L直6ツインターボを搭載したツアラーVである。90系マークII三兄弟のツアラーVは90系からボディ剛性を高め、サスペンション形式も四輪ダブルウィッシュボーンとなったプラットフォームのポテンシャルを生かし、マークII三兄弟とは思えないくらいスポーティなモデルに進化。さらに5速MT車を設定したことも、人気に拍車をかけた。
90系マークII三兄弟のツアラーVに対し、翌1993年にR33型にフルモデルチェンジされたスカイラインはボディサイズの拡大以上にツアラーVに相当する2.5L直6ターボがリニアチャージコンセプトを採用し、「扱いやすいけど、パンチに欠ける」という性格だったことなどを原因にツアラーVに惨敗。この結果はトヨタが本気でスカイラインに挑んだだけでなく、スカイラインが自滅に近い状態だったのも大きかった。
■初代ノア&ヴォクシーはステップワゴンを徹底的に研究して誕生!!
ステップワゴンを徹底的に研究して2001年に登場した初代ノア。FRだったタウンエースノアの後継車としてFFに刷新、両側スライドドア採用などでステップワゴンを打ち負かした
●初代ノア&ヴォクシー
1996年に乗用車ベースのBOX型ミニバンとして登場した初代ステップワゴンは乗用車に近い運転感覚や価格の安さを理由に、トヨタで初代ステップワゴンのライバルだった商用バンベースでFR構造だったタウンエースノア&ライトエースノアを苦しめた。
その後継車として2001年に2代目ステップワゴンから若干遅れて登場した初代ノア&ヴォクシーは、初代ステップワゴンを徹底的に研究したモデルだった。また、2代目ステップワゴンは初代モデル同様にスライドドアが左側だけだったのだが、初代ノア&ヴォクシーは両側スライドドアだった点も大きなアドバンテージとなり、初代ノア&ヴォクシーはステップワゴンとの立場が逆転するほどの成功を収めた。
■好調だったエルグランドを叩きのめした初代アルファード
グランビアの後継として2002年に登場した初代アルファード。FF化による低フロアと高級感ある外観と内装で2代目エルグランドに圧勝した
●初代アルファード
日本における最初の大型高級ミニバンは1995年登場のトヨタグランビアだった。しかし、日本人好みの押し出しの強いフロントマスクやラグジュアリーなインテリアなどを持つ初代エルグランドが1997年に登場すると、グランビアは兄弟車のグランドハイエースと5ナンバーサイズとなるハイエースレジアスを追加するなどの対策を行ってもあまり効果がないほど、初代エルグランドにやられてしまった。
こうした背景もあり、グランビアの後継車として2002年に登場した初代アルファードは初代エルグランドに負けない押し出しあるフロントマスクやラグジュアリーなインテリアだけでなく、2代目モデルまでFRだったエルグランドに対し、FFとしたことにより広いキャビンを備えていた。
さらに初代アルファードは2代目エルグランドの初期モデルにはなかった2.4L直4エンジン搭載車を設定し、2代目エルグランドに対して価格面でもアドバンテージを持っていた(2代目エルグランドも2004年に2.5LV6を追加)。
その結果、初代アルファードは2代目エルグランドに圧勝し、グランビアの雪辱を果たしただけでなく、エルグランドの3代目モデルへのフルモデルチェンジが遅れたこともあり、近年のラージミニバン業界はアルファードのひとり勝ち状態が続いている。
■完成度の高いストリームに2代続けて勝利したウィッシュ
ストリームの刺客として、トヨタが同じコンセプトで2003年に送りだした初代ウィッシュ。ホンダとの闘いには勝利したが時代の流れには勝てず2017年に絶版となった
●初代ウィッシュ
7代目シビックをベースとした乗用車型のミドルミニバンとして2000年に登場した初代ストリームは、実用的に使える3列目シートを備えるなど、実によくできたクルマだったこともあり、大ヒット車となった。
初代ストリームを見たトヨタは、初代プレミオ&アリオンベースで初代ストリームとまったく同じコンセプトとなる初代ウィッシュを2003年に投入した。初代ウィッシュは初代サニーに対する初代カローラのように、後発という点を生かし、ほとんどの要素が初代ウィッシュを少しずつ上回っていたことを大きな理由に初代ストリームの牙城を完全に崩した。
なお、2006年に登場したストリームの2代目モデルは2009年登場の2代目ウィッシュすら上回る完成度の高いモデルだったのだが、初代ウィッシュ登場以降の流れはあまり変わらなかった。しかし、最終的には両車は現在直接的な後継車もなく絶版となっており、この2台、このジャンルは「長続きしたブーム」とも言えなくもない。
■2代目インサイトを絶版に追いやった3代目プリウス
2009年5月に登場した3代目プリウス。同年2月に登場した2代目インサイトは、性能・質感ともにワンランク上の3代目プリウスがデビューすると瞬く間に追い落とされた
●3代目プリウス
リーマンショックによる不景気が始まった直後の2009年2月、ホンダはフィットをベースにした5ナンバーサイズの5ドアセダンで、ハイブリッド専用車となる2代目インサイトをリリースした。2代目インサイトはIMAと呼ばれるシンプルなハイブリッドシステムの搭載などにより、189万円からという低価格を実現し、同年4月には月間販売台数トップに躍り出た。
このことはトヨタを強く刺激し、2代目インサイトの3カ月後に登場した3代目プリウスは2代目インサイトより上の車格かつ1.8L2モーターハイブリッドを搭載しながら、価格は205万円からと激安なものとした。さらに3代目プリウスの登場時には政府による景気刺激策となる「エコカー減税」などが始まったことも追い風となり、3代目プリウスは登場から1カ月で約18万台を受注し、空前の大ヒット車となった。
対する2代目インサイトは3代目プリウスが登場すると、3代目プリウスに比べれば商品力が劣ることを理由に販売が急降下し、2014年には絶版に追い込まれてしまった。
■まとめ
冒頭に書いたようにトヨタの後出しジャンケン作戦に対する意見はいろいろあるにせよ、トヨタの「ライバル車をよく研究する」、「グランビアの失敗を成功の元にし、初代アルファードを成功させる」といった動きは、何事にも通じる見習うべき姿勢と言えるのではないだろうか。
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