2020年7月のタイでの発売に続いて、この2021年9月から日本のSUV市場にもカローラクロスが投入された。
その名のとおり、トヨタ カローラの派生モデルとして開発されたSUVだが、同じGA-Cプラットフォームを使っているC-HRと比べて、圧倒的にリーズナブルで価格は199.9万円から。この安さに驚いた人は多いだろう。
コロナ禍が終息したら日本でも発売!? カローラクロスGR SPORTはなぜ台湾専売なのか?
1.8Lエンジンを搭載して、先進安全装備もほとんど標準装備しての破格プライスは驚異的としか言えないものだ。どうして、ここまで安くできたのか、その理由を探っていくことにしよう。
文/高根英幸、写真/TOYOTA
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「内装の共通化」で大幅コストダウンを実現
写真はカローラスポーツ「GX」の内装。シートはカローラクロスの「GX」にも共用され、コストパフォーマンス向上に寄与しているという
カローラクロスのエクステリアは、カローラらしい中庸さを感じさせるもので、カローラやカローラスポーツ、カローラツーリングのほうがむしろエキセントリックで個性的な印象。そんな差別化が図られたエクステリアとは対照的に、インテリアは上手くこれまでのモデルのパーツを組み合せて構成されている。
ダッシュボードはカローラシリーズ共通のモノを採用し、表面を化粧直しすることで印象を若干変化させている。シートは基本的にはホールド性の良さそうなスポーツシートが与えられているが、エントリーグレードの「GX」に与えられているのは、ごく普通のシート(トヨタではノーマルシートと呼んでいる)だ。
このノーマルシートは、他のカローラシリーズでも「GX」グレードに採用しているものだ。つまり、カローラクロス以前から展開しているグレードであり、ほぼ同等の装備を誇るカローラスポーツやツーリングが存在する。
しかしカローラスポーツやカローラツーリングの「GX」グレードの価格は201万円~、1.2Lターボエンジンを搭載したカローラスポーツでは213万円~となっている。
専用ボディでタイヤホイールも大きいSUVのカローラクロスが200万円を切っているのは、どう考えても安過ぎるのだ。これには足回りの簡素化によるコストダウンが大きく貢献していそうだ。
開発当初は想定していなかったリアサスペンションの秘密
カローラクロスFF車のTBA(左)とE-Fourのダブルウィッシュボーンリアサスペンション(右)。TBAの採用で、コストの最適化や車両価格の抑制を達成
現行のプリウスやC-HR、カローラスポーツやツーリングなどGA-Cプラットフォームを採用しているこれまでのモデルは、リアサスペンションにマルチリンク(トヨタはダブルウィッシュボーンと呼んでいる)を採用している。
このリアサスの秀逸な出来が、これまで燃費一本槍だったプリウスのハンドリングを激変させて、C-HRやカローラスポーツと、走りの楽しい派生モデルを誕生させてきた。
ところがカローラクロスの場合、ハイブリッドの4WDモデルは従来通りのマルチリンクサスだが、ガソリン車もハイブリッドもFF車はリアサスをTBA(トーションビームアクスル)へと変更しているのだ。
CAE(コンピュータによる数値化解析)などによって設計の最適化が進んで近年、TBAが見直されている傾向にあることはご存じだろう。
マツダがアクセラからマツダ3へとモデルチェンジした際、リアサスをマルチリンクからTBAへと変更し、乗り味を犠牲にすることなくコストの最適化や車両価格の抑制に貢献させている。しかし同一車種でリアサスが異なるというものではない。
これまで4WD車だけリアサスに独立懸架を採用してきた例は多いが、そういった構造的な問題ではなく、コストを優先してFF車のリアを作り直しているのだ。これは国産車では初めてのアプローチと言えるだろう。
VWがゴルフの廉価版と高性能版ではTBAとマルチリンクを使いわけているのと、まったく同じ手法と言えるが、GA-Cの開発当初には、このリアサスのTBA化は想定していなかったはずだ。
まず最高のプラットフォームを作って、それを様々なバリエーションモデルに展開していくのがTNGAの思想だったからだ。
フロント同様、リアサス回りもサブフレームを介してマウントされていることから、サブフレームを新設計すれば物理的には可能だが、足回りの形状がまったく異なるだけに支持剛性の確保と、理想的なホイールストロークの軌跡を実現するのは簡単ではない。
さらにC-HRはダンパーに独ザックス製を奢って、スポーティな乗り味を追求しているが、カローラクロスでは国産のKYB製とすることで部品調達コストも低減している。
KYB製ダンパーでもハンドリングを追求できることはカローラスポーツで実証済みだが、カローラクロスはしっかりしたハンドリング性能は確保しても乗り心地をマイルドにすることを優先しているようだ。
なお4WDモデルのリアサスについても、マルチリンクの各アームのピボット位置をSUV用に最適化しているという。これはC-HRでは実施されていなかったことで、最低地上高の少ないカローラクロスでわざわざ採用していたことを考えると、今後ビッグマイナーチェンジやモデルチェンジで、このジオメトリーをSUV系に採用していく可能性は高い。
TBAに関しても、他のカローラシリーズやGA-Cプラットフォームを採用している車種の低価格帯グレードには採用していくことになるだろう。今後電動化を進めるうえで、車体の開発コストはこれまで以上に圧縮されることになるはずだ。
そして現在のTNGAプラットフォームの完成度が高いことからも、大きな変更を避けて熟成されていく方向性になる可能性は高い。
こうした後の展開まで考えて、カローラクロスの開発には力を入れられていると見るのが正しいだろう。199.9万円という戦略的なプライスは市場に打って出るためのインパクトを与えるものだが、採算を度外視しているわけではなく、このクルマだけで開発コストを回収するつもりではないからこそ実現した構造であり、車両価格なのだ。
カローラという大きなスケールメリット
カローラのブランドイメージに沿って、万人受けしやすい仕様で設計されている。カローラシリーズの乗り心地、車内の快適性は同社コンパクトSUVより有利な位置にいる
乗り心地やスタイリングなど、C-HRより万人受けする仕様に仕上げているのはカローラというブランドイメージに沿ったもので、セダン離れが進む現在、これからのカローラを支える稼ぎ頭となるべく仕立てられている。
つまり販売台数も多く見込めることから、1台あたりの利益を減らしても数を売って稼ごうという戦略が成り立つ。ここにも価格を下げられる源泉があるのだ。
トヨタには、よりボディサイズの小さいSUVモデルとしてヤリスクロスやライズがあるが、ボディサイズや排気量は違っても、安全装備などを考慮すれば価格差は10万円を切ってしまう。
カローラクロスの「GX」とヤリスクロスの「X」では、後者のほうが装備が充実している部分もあるが、車格の違いや快適性を考えればカローラクロスが圧倒的に有利だ。
つまりカローラクロスの商品力は、ともすれば自社のコンパクトSUVともバッティングしそうな勢いなのだ。実際、すでに年内納車の生産分は完売という状態で、ハイブリッドは半年待ちになっているほど。
「G」以下の低価格グレードは、「小さいSUVではなく手頃なSUVが欲しい」と思っているヒトには魅力的に映るだろう。こうした問題についてのトヨタ広報部の回答は以下の通りだ。
「ボディサイズの違い(ヤリスクロス:Bセグメント/カローラクロス:Cセグメント)や、それに関連して室内のユーティリティ・取り回しの面でもそれぞれに違いがあることから、お客様に合ったお車を選んでいただけるよう、ラインナップを構成しております」
最安199万円グレードを選ぶユーザーは少なくない
199.9万円の「GX」は、所謂カタログモデルじゃないか、と思っているヒトもいるだろう。しかしシートと若干の装備を省くことで低価格を実現した、このグレードを選んでいるユーザーは決して少なくないようだ。
トヨタによれば、9月時点のグレードごとの販売構成比はガソリン車で、Z:S:G+G“X”=7:1:2というもの。「GX」グレード単独の数字こそ出されていないが最上級グレードの「Z」が圧倒的だ。あと15万円出せばハイブリッドの「G」にも手が届くが、使い方を考えてガソリン車で装備が充実した「Z」を選んでいる人が多いらしい。
ちなみにハイブリッド車ではZ:S:G=9:0.5:0.5という販売構成比となっているらしい。どちらのタイプも「S」は、発売後半年間KINTOのみの扱いとなっているから、KINTOの評判も上々(その他のグレードにもKINTOユーザーはいるので)のようだ。
充実した仕様を選んで総額300万円以上のカローラクロスをオーダーしているユーザーも多いが、それはリーズナブルな価格をフックにして集客をしている効果も大きい。開発から販売まで実に綿密な戦略で、このカローラクロスは作り上げられていることが窺い知れるのだ。
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みんなのコメント
最下位モデルはほぼプラスチック。
まるで営業車のような内装の質感。
ちゃんと最上位モデルを買うように価格設定してるはず。
あとは好みのデザインかどうか。