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N-BOXの7年連続軽新車王座獲得で考える「ホンダが作る軽のよさ」とは?

掲載 更新 48
N-BOXの7年連続軽新車王座獲得で考える「ホンダが作る軽のよさ」とは?

 軽四輪通称名別新車販売で7年連続1位に輝いたN-BOX。2021年には18万8940台を売り上げ、2位のスペーシアに約6万台の差をつけて王者の貫禄を見せつけている。さらに、N-WGNは5万728台で11位、N-ONEは2万930台で15位、N-VAN は2万6147台とNシリーズ全体の売れゆきも好調だ。

 スーパーハイトワゴン、ハイトワゴン、2ボックス、軽バンと4タイプで展開し、全タイプで注目を集めているNシリーズの人気の秘訣はどこにあり、他社の軽自動車と何が違うのか。ホンダの営業現場に従事していた筆者が、「ホンダが作る軽のよさ」について解説していく。

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文/木村俊之、写真/西尾タクト、平野 学、ホンダ

■Nシリーズが大ヒットの理由は「ホンダらしさ」にあった!

 7年連続1位に輝いたN-BOXが、他社の軽自動車と具体的にどう違うのか。高級感や価格帯、走行性能や燃費、装備においては大きな差はないと思う。むしろ燃費ではスペーシアやタントのほうがN-BOXよりも優位だ。

 初代N-BOX発売当初、低燃費であることが軽自動車に求められていた。そのなかで、燃費性能で不利なN-BOXの人気が爆発した理由のひとつに、「エンジンのホンダ」と言われるホンダの実力があったと筆者は考える。

2011年に登場した初代N-BOX。プラットフォームやエンジンを新開発しセンタータンクレイアウト採用で空間効率を最大限に追求している

2021年12月に初のマイナーチェンジを受けたスペーシアギア。初代スペーシアはパレットの後継車として2013年に登場し、スペーシアギアは2018年12月に追加される

2019年7月にフルモデルチェンジした現行型タント。初代は2003年に登場し、軽スーパーハイトワゴンというジャンルを開拓した

 軽自動車を作るほとんどのメーカーは、燃費を0.1km/L上げるためにパワーを上げられずにいた。そのため、高速走行ではパワーが足りず、エンジンが大きくうなってしまう。ユーザーのストレスは大きい。

 ホンダは燃費競争から身を引き、F1エンジンを開発したエンジニアをチームに引き入れ、パワーのある走りと低燃費の共存に磨きをかけていった。

 こうして完成したN-BOXのNAエンジンは、最高出力58ps、最大トルク6.6kgm、数字が小さいほど加速がいいとされている、パワーウェイトレシオ(空車時)16.03kg/psと軽自動車がストレスなく走るには充分な数値となっている。

 タントは最高出力52ps、最大トルク6.1kgm、パワーウェイトレシオ(空車時)17.69kg /psとなり、N-BOXがすべての数値で大きく上回っていることがわかる。

 N-BOXは充分なパワーを発揮し、他社モデルとの差別化を図ることに成功した。軽自動車に対するユーザーの潜在的なニーズを掘り起こしたことで、今日まで続く爆発的な人気を生んだのだ。

■「あったらいいな」を形にしたNシリーズ

 筆者の営業マン時代、ホンダのクルマに乗るユーザーから「ホンダのクルマはよく走る」、「ハンドリングがよく扱いやすい」と好評の声をもらっていた。さすがはエンジンのホンダ、スポーツカーやF1で活躍し、こうした技術を普通車や軽自動車に取り入れられるのは、ホンダの強みである。走行性能にこだわりのあるユーザーから高い評価が得られていた。

 しかし、そのいっぽうで「走りはいいけれど高級感がほしい。」「機能性はすごくいいけれど、もう少し内装がよかったら……」という声もあり、「見た目」については、評価がいまひとつの部分もあった。

 ホンダのクルマは、外装も他社と比べてツヤが少なく感じる。だからデザインがよくても重厚感がない。内装は単調なデザインでおもちゃのように感じる部分もあり、ユーザーはいいクルマに乗っているという優越感が持てないのである。他社のクルマには高級感のある外観や、豪華な内装を持つラインナップが増えており、ホンダが一歩遅れているように筆者は感じていた。

 しかし、Nシリーズはどうだろうか? スタイリッシュなデザインにツヤのある塗装、さらに高級感ある落ち着いたインテリアで、所有していることがステータスになる存在だ。

2017年にフルモデルチェンジした2代目の現行型N-BOXは大幅に質感を向上した。また2021年12月の一部改良でクルーズコントロールが全車速追従型になりますます魅力的になった

シックな色合いでまとめた内装色のブラウン×アイボリー。他にもカスタムに採用するブラックを基調とした上品な雰囲気の内装色がある

 現行型では価格を引き上げてまで質感にまでこだわり、ユーザーの声を反映することができた。N-BOXで、ホンダはクルマ作りの原点に帰ることができたと思う。N360が登場した当時からホンダの想いは、多くの人々の「あったらいいな」を形にする、人が中心のクルマづくりだ。

 軽という存在を超え、ユーザーが本当に喜ぶものに寄り添った結果が、Nシリーズが高いブランド力を与え、今日の成長を生み出したのだろう。

■走りだけじゃないNシリーズ! 他社の軽にはない絶対的な強みとは

 すべてのNシリーズに採用されているホンダの特許技術、センタータンクレイアウトは他社との差別化に大きく貢献している。一般的には、後部座席の下部にある燃料タンクを、前席の下に収めることで他社には真似できないホンダだけの室内空間が生まれたのだ。

 こうしてできたリアシート下の空間により、後部座席をダイブダウンしてフラットな空間を作ることができる。これを見たユーザーからは「これなら普通車でなくても車中泊ができる。ほかの軽自動車では凹凸があり、とても泊まるなんて考えもできなかった」という声が聞こえた。

「センタータンクレイアウト」により、使える空間が劇的に拡大。その恩恵により室内高140cmを確保し子供が立って着替えることも可能

 小さな子供がいるファミリー層が、購入前から車内キャンプができるとワクワクしているのだ。売り手としても顔がほころぶ。

 また、センタータンクレイアウトの恩恵はこれだけではない。座面を持ち上げることで、荷室以外でも大型の荷物を置くことが可能だ。また、そのスペースで子供が車内で立って着替えることが可能だと知ったユーザーが「子供と海に行くことが楽しみになった。このスペースを使うために出かけたい」と、商談中に営業マンと楽しそうに話す姿も多かった。

 N-BOXの魅力が、大人でも後部座席で足が伸ばせるほど広く、軽でもストレスなく走る走行性能というだけでは、今ほどヒットしていなかったと思う。それだけでは、ライバルたちがその性能に追いついた時に人気は衰退しているはずだ。

 そうならないのは、Nシリーズほど走る乗り物としてだけではなく、室内空間を見ただけで「このスペースは、こうやって使おう!」「家族で○○に行きたい」とワクワクできるクルマは少ないからであろう。

 Nシリーズに乗るすべてのユーザーはクルマを買うのではなく、ワクワクする未来を買っているのだと筆者は思う。そう考えると、他社の軽自動車との1番の違いは、Nシリーズに乗ると「どんなワクワクな未来が待っているのか」が、はっきりと見えることなのかもしれない。 

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みんなのコメント

48件
  • 軽自動車のホンダになってしまいましたね。
  • ホンダ自滅の原因。
    他の普通車を全て軽にしてしまい結果収益性まで悪化させた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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