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DS3クロスバックがSUVになってカムバック!?

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DS3クロスバックがSUVになってカムバック!?

クルマの世界でプレミアムと呼ばれるカテゴリーはドイツメーカーの牙城で、当初のレクサスやひと昔前のボルボ辺りも、ドイツ勢のルールブックにかなり従ってしまっていた面はある。ところがフランス発で、数年前にシトロエンのハイエンドラインから派生して独立ブランドとなった「DS」は、そうした定石にまず背を向けるところから始まった。昨夏のDS 7クロスバックに続いて、今年上陸するDS 3クロスバックに南仏で試乗し、DSブランドの輪郭がよりはっきりしてきた。

DS 3クロスバックは、車格的に欧州BセグメントのプレミアムSUVクロスオーバーで、全長4118××全幅1791×全高1534mmと、日本の立体駐車場にもすんなり収まるサイズだ。競合として相まみえる「アウディQ2」や「ミニ カントリーマン(日本導入車名:クロスオーバー)」よりもコンパクトで、プレミアムでこそないが少し下の価格帯にはVW Tクロスも控える。駆動方式はFFのみ、日本仕様で当面のメインとなるパワーユニットはガソリンの3気筒1.2ℓターボで、130ps・230Nmと155ps・240Nmがあるうち、まず日本に導入されるのは前者の仕様。アイシンAWの8速ATと組み合わされるものの、SUVとはいえ4WDの用意もなければ、スペック的にはプレミアムカーとしてはいかにも物足りなく映るかもしれない。

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だがしかし、DS 3クロスバックは、スペックで優劣を競わせるようなクルマ選びを、最初から拒絶したところに成立している。もっといえば、パワーやトルクや0→100m加速などなど、満艦飾のスペックなどの数値を主張したり、やたら攻撃的なデザインの大きく重いボディをまとうことでプレミアムカーであると主張する、そういうレシピでは全然ない。

実車に近づく前に、まず引きめに遠目から眺めて欲しい。すると目に飛び込んでくるのは、690mmというBセグとしてはありえない大きな外径のタイヤを履いたプロポーション。215/55R18のミシュラン プライマシー4という、ふた回りほど大きなサルーンが装着していてもおかしくない銘柄のタイヤを履いている。いわば、踏ん張りが効いたままボディの肩下が分厚いという、独特の佇まいを醸し出している。しかもサイズ感がコンパクトであることも手伝って、写真で見るより実車にリアルにあたってみる方が断然カッコいいという、グッドサプライズだ。

キーを携えて近づくと、ドアパネル上とツライチで埋まっていたドアハンドルがシュっと自動的に持ち上がってアンロックされる仕掛けも、ガジェットじみているとはいえ「おっ!」と思わせる。「テスラ」や「レンジローバー ヴェラール」で見たことはあっても、このクラスで採用してきたか、というサプライズ感もある。もうひとつエクステリアで記しておくべきは、DS 3から受け継いだBピラー上のシャークフィンと一緒に、ウィンドウを下げた時に外側の水滴やホコリをこそげ落とすゴム製スクレイパーだろう。ガラスとドアパネルの間を仕切るゴム製スクレイパーがドアパネル内に隠されていることで、遠目にガラスとメタルのグラフィックと質感がすっきり、まるでコンセプトカーやクーペのようにクリーンなサイドビューを実現したのだ。

しかしDS 3クロスバックの最たる魅力は、コンパクトSUVでありながら上位機種であるDS 7クロスバック同様の世界観を受け継いだ、ミニマムリッチなインテリアだろう。「アウディQ2」の水平基調とも、「ミニ カントリーマン」の丸モチーフとも一線を画す、ダイヤモンドを思わせる菱形をあしらった個性的なデザイン、というだけではない。ステアリングやシフトノブをはじめ人間の関節の動きが届きやすいコクピットで、エルゴノミーもよく練られている。そしてこれまたBセグの標準値を(いい意味で)大きく外れた圧倒的な内装の静的質感だ。加えて、試乗車のトリムはオペラ(濃いグレー内装)、展示車はラ・プルミエール(ワインレッド内装)という初期限定版だったが、シート同様のナッパレザーがダッシュボードやドアパネルに張り巡らされ、ベルルッティの短靴よろしくパティ―ヌ加工のニュアンスが目に柔らかで心地よい。またシートクッションを構成する高密度ウレタンの柔らかさを部位ごとに最適化することで、包み込むようなタッチと確実な身体サポートを両立させつつ、経年変化によるヤレをも抑えているという。高級車慣れした大人でも、落ち着いて長い時間を過ごせるコンフォート性を備えた内装は、このクラスではそれこそ珍しい。

クランク軸周りやクランクケースなど、腰下を中心に従来のピュアテックから大幅に進化させたという直列3気筒ターボをスタートさせ、まずはモナコの市街地に繰り出す。なるほど、エンジンのメカニカルノイズは抑えられているし、3気筒とは思えないほど振動も少なく、トルクの下支えも安定しており、エキゾーストノートの音質がガサツでなく、いい。そもそも、フロア周りやドアの繋ぎ目から侵入してくる振動やノイズが恐ろしく少ない。

DS 3クロスバックに採用されるアーキテクチャーは、今回がPSAグループ内でも初出となるCMP(コモンモジュラープラットフォーム)。プジョー308以来のEMP2よりも小さなセグメントを受け持つプラットフォームで、プジョー2008や208、シトロエンC3でお馴染みの超ロングラン・コンポーネント、プラットフォーム1とは静粛性でも動的質感の点でも、隔世の感がある。同セグメント内でベンチマークとしたのは、VWグループのMQBプラットフォームを採用したアウディQ2で、Q2より静かな走りは最初から狙っていたと、開発仕様書の作成を担当したアラン・ジョゼフ氏はいう。

コンパクトなボディに大径ホイールを履く分、ホイールコントロールは容易ではないはずだが、豊かなストロークを確保したサスペンションは上下動には鷹揚である一方、水平方向の動きは適切なしなりを伴いつつ、俊敏に反応する。ようはフランス車らしく、路面の凹凸は大きくゆっくりと低周波の乗り心地でいなしてくれるが、1300kgに満たない軽さと低重心のおかげだろう、コーナリングではめっぽう粘ってくれるので、ワインディングでは気づいたらけっこう飛ばしてしまっていた。内輪ブレーキでつまむタイプのベクタリングといった制御技術ではなく、夾雑物のない素直なロードホールディングが印象的、かつ痛快でさえあるのだ。アドレナリンを分泌させるというより、ドーパミン分泌が途切れない心地よさと落ち着き、とそういうタイプといえる。

このコンパクトSUV離れした「ドーパミンライド」に、さらに拍車をかけて快適にしてくれるのが、レベル2として危なげないADAS機能の使い勝手と、オプション設定のフォーカルエレクトラのオーディオシステムだ。車格がコンパクトな分、クルーズ時は車線内でピンボール現象を起こしやすいはずだが、「レーンポジショニングキープ」という、ACCオンにした時の車線内自車位置を保とうとする機能が備わるので、余分な修正舵を効かせるような場面がほとんどない。

惜しむらくは、サルーンのようなタイヤの恩恵は高速道路や空いた国道といった状況では卓越した快適性となって堪能できるのだが、大径タイヤゆえに最小回転半径は5.3m強と、連続ヘアピンのような山道ではややコツが要った。とはいえ、メンタル的にも平静を保ちやすい静かな車内で、エレクトラシステムの奏でてくれるクリアでリッチな音に身を任せていると、DS 3クロスバックがまったくもってクラスレスな1台であると気づかされる。

高級車としての駆動方式にこだわる人は、ハイパワーFRや4WD以外を認めたがらずFFを排除する傾向はある。が、そもそもDSの祖先は1955年登場のオリジナルの「シトロエンDS」で、シトロエンは「トラクションアヴァン」でFFの市販車を初めてモノにした自動車メーカー。この歴史的事実を鑑みれば、パワーでなく効率に拠る高級車造りという今日のDSの方向性には、一定以上の正統性がある。いずれ「フランスの小さな高級車」という、久しく見なかった野心作といえる1台といえる。

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