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三菱逆襲の行方を左右!! 新型アウトランダーPHEVの超進化と復活への課題

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三菱逆襲の行方を左右!!  新型アウトランダーPHEVの超進化と復活への課題

 今はSUVが売れ筋カテゴリーとされ、新車として売られる小型/普通車の約25%を占める。15年ほど前は10%弱だったから、SUVの人気は急上昇した。

 SUVはもともと悪路を走破できるクルマとして生まれ、大径タイヤを装着するなど外観に強い存在感が伴う。ボディの基本スタイルはワゴンだから、居住性や積載性も優れている。つまりカッコ良さと実用性を両立させてSUVは人気を得た。

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 そしてSUVの得意なメーカーが三菱だ。1953年にジープの生産を開始して、1982年には初代パジェロをヒットさせた。2005年には前輪駆動ベースの新しいプラットフォームを使うアウトランダーを加えている。三菱は定期的に注目度の高い新型車を投入して、SUVの世界を進化させてきた。

 そこで、本稿では新型アウトランダーPHEV進化のすごさと三菱復活の課題について解説する。

文/渡辺陽一郎、写真/MITSUBISHI、池之平昌信

[gallink]

新型アウトランダーはPHEVモデル専用モデルに

2021年12月16日から発売される新型アウトランダーPHEV。先代から設定されたPHEVモデルは、世界累計29万台を販売

 三菱SUV開発の勢いは今も変わらず、2021年10月にはアウトランダーを3代目にフルモデルチェンジした。今の三菱は日産/ルノーと業務提携を結び、新型アウトランダーのプラットフォームは、次期日産エクストレイルと共通だ。

 いっぽうで新型アウトランダーの日本仕様が搭載するパワーユニットは、直列4気筒2.4Lエンジンを使うPHEV(プラグインハイブリッドEV)のみになる。従来型はノーマルエンジンも用意したが、新型はPHEVに絞り込んだ。先代型と同様、モーターを前後輪に搭載して、独自の4WDを成立させている。

 新型アウトランダーをPHEV専用にした理由を開発者にたずねると、次のように返答した。「三菱の技術的な特徴は、電動化と4輪制御にある。アウトランダーPHEVには、その技術が結集されている。国内で販売された先代アウトランダーの70%がPHEVだった事情もあり、新型はそこに特化した」。

 このほか新型アウトランダーでは、PHEVのみを搭載しながら、3列目のシートを装着する7人乗りも用意する。PHEVでは後部にモーターと制御機能を搭載するため、先代PHEVでは、3列シートの7人乗りを用意できなかった。そこを新型では改めている。

 開発者は「先代型ではPHEVの7人乗りを希望するお客様も多く、新型はそこに対応した」と述べた。果たして新型アウトランダーは好調に売れるのか? 

フロントマスクでもっと大胆なファミリーカーへ進化

三菱の共通デザインアイデンティティであるダイナミックシールドを新世代化させ、存在感のあるフロントデザインに

 まず外観は、ダイナミックシールドとよばれるフロントマスクに特徴がある。左右のフェンダーがフロントマスクまで回り込むフルフェイス・ヘルメットのようなデザインで、その左右にLEDヘッドランプを縦方向に並べた。

 ボディの側面は水平基調で、視界は前後左右ともに優れた部類に入る。ボディの四隅も分かりやすい。ボディサイズは全長が4710mm、全幅は1860mmだから少しワイドで、最小回転半径も5.5mになる。小回りの利きは良くないが、視界は優れているので比較的運転しやすい。

インストルメントパネルを貫く水平基調のデザインを採用したインテリア

 内装は上質だ。特に最上級グレード「P」は装飾も凝っている。水平基調のインパネは、標準装着されるスマートフォン連携ナビの9インチWVGAディスプレイを含めて視認性が良い。ATレバーやエアコンのスイッチも操作しやすい。

 居住性は3列シートの7人乗りで確認した。1列目は快適だ。背もたれから大腿部付近をしっかりと造り込み、乗員の着座姿勢が安定する。

 7人乗りの2列目には、220mmのスライド機能を装着した。後端に寄せると、身長170cmの大人4名が乗車したとき、後席に座る乗員の膝先空間は握りコブシ2つ分になる。ミドルサイズのSUVとしては、あまり広くないが、2列目に座る乗員の足が1列目の下側に収まりやすい。そのために長身の同乗者が2列目に座っても窮屈には感じない。

 3列目は荷室に装着された補助席だ。床と座面の間隔が不足しているので、3列目に大人が座ると、膝も大きく持ち上がる。そして2列目を後端までスライドさせた状態では、3列目は足元空間が狭すぎて大人は座れない。2列目を前側へ大きくスライドさせると、どうにか3列目に座れるが、2列目の乗員の膝は1列目の背面に触れてしまう。3列目の乗員も同様で、膝が2列目の背面に触れる。

 従って大人が多人数で移動できるのは、片道15分程度の距離だ。それでも自宅から最寄駅までの送迎など、3列目シートを活用できる機会は多い。3列目を格納すると、床面積の広い荷室に変更できるので、ファミリーカーとして使いやすい。

先代モデルよりもパワフルかつ長距離移動も快適に

フロントモーターが82馬力から116馬力に。リアモーターは95馬力から136馬力に向上

 次は運転感覚だ。アウトランダーのプラグインハイブリッドシステムは、高速道路の巡航時を除くと、駆動は前後に搭載されたモーターが行う。そのために加速は滑らかで、モーターは反応が素早いから、アクセル操作に対して速度を忠実に増減させる。

 エンジンは発電のために使われるから、必ずしも回転数をアクセル操作や速度の増減に合わせる必要はないが、ズレが生じるとドライバーが違和感を抱く。そこでアウトランダーでは、アクセルペダルを深く踏むと、加速力の向上に合わせてエンジン回転も高まる設定にした。その効果により自然な感覚で運転できる。

 動力性能をガソリンのノーマルエンジン車に置き換えると、排気量は2.8~3Lに匹敵する印象だ。先代型よりもパワフルで、高速道路や峠道を使った長距離の移動も快適に楽しめる。

 乗り心地にも注目したい。サスペンションが柔軟に伸縮して、SUVらしいリラックスできる乗車感覚を味わえる。

 新型アウトランダーの走りで、特に注目されるのが操舵に対する反応だ。車両重量が2トンを超えて、全高も1745mm(GとP)に達する高重心のSUVなのに、車両の動きに鈍さがない。よく曲がり、峠道を走っても旋回軌跡を拡大させにくい。

 そのかわりカーブを積極的に曲がると、ボディの傾き方が拡大する。このときに危険を避けるためにアクセルペダルを戻したりすると、後輪の横滑りが大きめに生じて、横滑り/横転防止装置が強く作動しやすい面もある。全般的にドライバーの運転技量を高く見積ったセッティングだ。

 もっとも、そこがアウトランダーらしさともいえるだろう。今のクルマは後輪の接地性を重視する安定指向の設定が多い。アウトランダーも先代型は同様の性格だったが、新型は十分な安定性を確保した上で、初代アウトランダーに見られた機敏に曲がる性格も併せ持つ。この運転感覚は、かつてランサーエボリューションなどを用意した三菱のブランドイメージにも合う。三菱の本質を見直した原点回帰ともいえる運転感覚だ。

 新型アウトランダーは、プラグインハイブリッドの機能も先進的だ。駆動用リチウムイオン電池の総電力量は20kWhと大きく、WLTCモードにより、充電された電気を使って85kmを走行できる(GとP)。

 ちなみにRAV4・PHVは、総電力量が18.1kWhで、95kmを走行できる。これに比べると新型アウトランダーの距離は少し短いが、85kmを走れると、買い物などの日常的な短距離移動ではエンジンを作動させる必要はない。午前中の外出から戻って充電すれば、午後もモーター駆動だけで済む。充電の所要時間は、リチウムイオン電池を使い切った状態でも、家庭用の200V/15Aの充電によって約7時間半だ。一晩で充電は完了する。

 装備では安全面を充実させた。衝突被害軽減ブレーキ、ペダルの踏み間違いによる誤発進を抑制する機能、ドライバーの死角に入る後方の並走車両を検知して知らせる機能などは全グレードに標準装着される。車間距離を自動調節できる運転支援機能も全車に装着した。

オススメグレードは「G」!! 今後の三菱の課題は?

 グレードは、ベーシックなM(5人乗りのみ)、中級のG(5人乗りと7人乗り)、最上級のPという構成だ。装備と価格のバランスを見ると、上級グレードほど、装備が充実する割に価格の上乗せが少ない。つまり買い得になっていく。

 具体的には、GはMに通信機能や20インチアルミホイールなど40万円相当の装備を加えながら、価格の上乗せは28万3800円に抑えた。PはGに本革シート、BOSEプレミアムサウンドシステム、ヘッドアップディスプレイなど50万円相当の装備を加えて、価格上昇は32万4500円だ。

 この点を踏まえると、最も推奨度の高いグレードはG(5人乗り:490万4900円・7人乗り:499万6200円)になる。7人乗りの価格は5人乗りに比べて9万1300円高いが、妥当な価格差だ。

 注意したいのは、Gに本革シートなどのセットオプション(25万3000円)と、BOSEプレミアムサウンドシステム(10万4500円)やヘッドアップディスプレイ(7万7000円)を加える時だ。この時は必ずPに上級化する。なぜならオプション価格の合計が33万円以上になり、PとGの価格差(32万4500円)を飛び越えるからだ。

 Pの車両価格が割安で、Gに設定されるオプション価格は割高だから、Gのオプション装着を増やすと同じ装備を標準装着するPの価格を上まわってしまう。このような価格設定は良心的とはいえず、選ぶ時には充分な注意が必要だ。

 それでも新型アウトランダーは機能が全般的に優れ、堅調に売られるだろう。販売店によると納期は約3か月だから、最近の新型車では短い部類に入る。

 今後の三菱の課題は、需要の多い200~300万円の価格帯を充実させることだ。今の三菱の売れ筋車種は、小型/普通車は新型アウトランダー(462万1100円以上)とデリカD:5(391万3800円以上)になる。そのほかは150~190万円が売れ筋の軽自動車だ。エクリプスクロスの最廉価グレードは253万1000円だが、200~300万円の車種がきわめて少ない。

 そこで新型アウトランダーを堅調に販売しながら、売れ筋カテゴリーとなるコンパクトSUVのRVRをフルモデルチェンジしたり、その後継車種を投入する必要がある。これを成し遂げた時、三菱は本当に復活するわけだ。

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みんなのコメント

18件
  • RAV4涙目w
    アウトランダーの勝ち
  • 三菱はPHEVしか突破口ないからね。
    現行実施してる毎週50万プレゼント企画とかやって買いやすくしないと補助金は来年だし地域格差もある。200~300万クラスは強豪が多いので三菱単体で張り合うにはまだ早いかも。
    逆にPHEVはその技術を集約してるから出来は買って間違い無しって出来じゃないのかな。試乗してみたら良く判るはず
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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